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443 障がい者いじめ

はじめに

耳を疑う様なニュースが飛び込んできました。それが、今回コラムとして話したい障がい者いじめに関するお話です。
最初に、ニュースの概要を簡単にお話しておきます。この事件は、京都市のとあるクリーニング店で起きました。ここに勤務する男性従業員2名が同僚の男性を負傷させたというものです。

事件の経緯

犯人の2名の男性は既に逮捕されていますが、この事件は、人権団体や障がい者を支援する様々な団体や関係機関に大きな波紋を呼んでいます。
加害者の2名は、「お前くさいねん。洗濯機入れや」といった罵声を浴びせ、実際に店舗にあった大型洗濯機に入れてふたを閉め、洗濯機を回しました。その結果、被害者は全治2週間の全身打撲という大けがを負い、事件のショックでこの会社を退職しています。
被害者の男性は、知的障害があり、この障がいを理由に職場ではいじめが起きていたとみられています。これこそまさに、近年問題視されている職場における障害者いじめそのものなのです。

社会のゆがんだ仕組み

近年問題視されていると言いましたが、障がい者いじめは様々な職場で起きています。この背景に一定規模以上の事業主には障害者を雇用する義務があり、従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならないと定められています。
障がいがあっても社会とかかわる機会を得られるようにという趣旨で行われているものですが、現場では悲惨な状況が繰り返されています。もちろんすべての職場がそうということはなく、従業員が互いを尊重し、支え合い運営されているところも少なくないわけです。
大きな声で命令したり、叱ったり、暴力を振るったりといった行為、これが障がい者だからという理由で行われていたとしても、そうでなかったとしても、私たちの社会においては人権を踏みにじる行為であるということを私たちはわからなければならないのです。労働条件や賃金の面でも差別があることについても問題ですが、できないことを上げ連ね指摘するといった行為がこうも多くの職場で起きていることに私は怒りを感じてしまいます。

障がい者への差別の実態

厚生労働省の調査によれば、2020年度に使用者による障がい者への虐待が認められた障がい者数は、656人に及びます。2017年度の時点では、1308人でしたから、減少してきてはいますが、これだけ社会全体がハラスメントや人権について敏感になってきているにもかかわらず、これだけの数の人が被害を受けていると考えるとやるせない気もちになります。
ブラック企業対策や働き方改革で、労働条件が良くなったと言われていますが、やはり人気のない仕事や危険な仕事では人手を確保するのが苦しく、一人ひとりの仕事量が増えています。また、様々な職場で労働力不足が深刻で、生産性の議論が日々行われ、一人一人が焦りや不満を持っています。そんな状況の中で障がい者に対して生産性が低い人間という差別的な視点を生み出してしまう人が増えているのでしょう。

64万人だけにとどまらない問題

現在日本では、民間企業で働く障がい者の数は約64万人と言われています。身体に障がいがある人が約36万人、知的な障がいがある人が約15万人、精神障がい者が約13万人になります。
障害者法定雇用率という決まりが定められているから雇用するのではなく、本来は、社会の一員として障がいの有無にかかわらず共に働き、共に成長していく社会を目指すべきなのです。
国は、障害者法定雇用率を達成できない企業に対して、不足分を障がい者一人につき月額5万円の納付を求め、雇用状況の改善を要求するという取り組みをしています。私はこうしたやり方も一つの方法だと思う一方で少し虚しい方法だと感じてしまいます。
両者が対等な関係でお互いの利益になるような雇用環境が整うようにしていくことや障がいがある無しに関わらず、働く人自体が主人公になれるような企業が誕生してほしいと思うのです。
無理やり雇用するような意識や作業量を生産性というような偏った観点だけで人間を評価し、ましてやいじめるような社会と一日も早く決別できる日を私は望みたいと思います。
障がいがあることを気にせず、一人一人の持っている力がそのまま価値になるような仕事場が作れたらと改めて強く思う出来事でした。開業して2年目をむかえているわが社にはまだ無理かもしれませんが、ダイバーシティの具現化に私なりに何かを成しえていきたいと強く思います。

改めて、日本がこれまで優生思想に基づいて行ってきた国づくりの影の部分を反省し、新たな時代へと向かう姿勢を法律や行政、教育の面からも指し示す必要があることを指摘しておきたいと思います。

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