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226 集団討論


はじめに

集団討論という課題が中学校入試にある場合があります。
学科の試験に加えて、作文、面接に集団討論と来た場合は、まさに入試科目のフルコースとなります。
今日の教育コラムでは、不安を抱える人もいる「集団討論」について少しお話してみたいと思います。

個人面接と集団討論の違い

中学校受験では、通常の個別面接の他に集団討論(グループディスカッション)を行う場合があります。集団討論は、受験生同士で特定のテーマについて議論をさせます。
ここで評価するのは、「コミュニケーション能力」「協調性」「積極性」等となります。具体的に求められる姿は、自分の意見を積極的に発言しながらも、同席した受験生の意見にも耳を傾ける姿です。そして、忘れがちなのが最終的にグループとしての意見をまとめる協調性が求められるということです。
もう少し違いを明確にしてみましょう。個別面接では1人の受験生だけに着目して、可能な範囲(一人15分程度)の時間をかけて話を聞いていきます。ですから細かく質問をすることができます。受験者の性格や志望動機、学校への適性などを測ることができ、個人的な事柄を聞かれます。
それに対して、集団討論では、5人以上10人未満の小集団を設定して、課題を出し、コミュニケーション能力や協調性を図ることを狙っています。
まずは、この点が大きな違いであるということを念頭に置いて受験に臨むことが重要です。

集団討論のやりかた

特別に塾などに行って対策をしていないという人が集団討論と聞いてどんな試験なのか不安に感じるという相談を受けることがあります。
簡単にその受験形態を説明したいと思います。集団討論というくらいですから、1人ではなく通常1グループ5~10人程度で与えられた1つのテーマについてディスカッションをさせる方法がとられます。ディスカッション中に試験官が評価シートなどを使ってチェックしていきます。
ディスカッションの時間は、約20分~50分程度とそれぞれの学校で比重の違いにより差があります。時間が長ければ、他の科目よりも評価の重みが増すと考えてよいでしょう。
ディスカッションのテーマは、時事的な話題であったり、学校周辺の環境や歴史、文化的な取り組み、児童会活動など様々です。
このテーマは事前に通知される場合と、討論直前に知らされる場合があります。事前にテーマが分かる場合は、受験者の多くが関連資料を頭に入れ、討論の進め方をイメージしてきますので、自分も事前に準備をして、同じ土俵に立てるようにしておく必要があります。

集団討論における役割の重要性

この試験、ひとたび始まると受験生に規定時間内のことについては全て任せる形式になります。そして、集団討論は基本的に、役割分担を自分たちで決めるところから始まります。または、決められてから始めます。
役割として重要なものに「進行役」が挙げられます。この「進行役」は、グループの意見を聞きながらスムーズに進めていくことが求められます。
その他にも、「タイムキーパー」や「書記」などが代表的な役割として挙げられます。誤解してはいけないのが、なにかの役割になれたからといって合格できるわけではないということです。言い換えれば、役割をしなくても不合格となるわけではないのです。
進行役は、討論にグループ全員が参加できるような環境を作ることができれば、見事に役割を果たしたことになり、高得点が期待できます。
また、制限時間内に結果を出せるように議論の進め方を時間の経過を伝えることで支援できれば、タイムキーパーとしての役割を全うしたことになります。また、書記は、途中経過で意見があまり出せなくとも、最後に意見をまとめる際に、話し合いの経過や出された意見を整理する際に発言と活躍の瞬間がやってきます。
つまり、一人一人が意見を言えないことがないように互いに配慮しながら、グループとしての意見や問題解決の方法を見出していくわけですから、グループとして導き出した結論や意見は、そのままグループ全体の評価にもつながるわけです。
集団討論は、集団における個の存在と個の集合体としての集団の両方を評価する手法というわけです。これは、我々が主体的で公共性のある存在として、民主主義社会の中でどのように生きていくかに関わる重要な力となるのです。そこで、民主主義の基盤となる選挙をテーマにした集団討論の練習問題を次に紹介します。家族に手伝ってもらって役割を決めて練習してみるとよいかもしれません。


5つのポイント

集団討論の様子を少しお伝え出来たと思います。次に、行う際のポイントと今からでも取り入れることのできる内容を少し整理してみたいと思います。

① メンバーの目を見ながら笑顔で対応
集団討論は、グループのメンバー全員が合格する場合も、不合格になる場合もあります。1グループ何人が合格といったように決めているわけではないのです。つまり、一緒にみんなで合格を目指す様な気もちで臨んでいいのです。相手と目を合わせながら討論を進めていくこと、笑顔で接することで相手が話しやすい空気にすること、こういうことが話し合いの空気をよくしてくれます。話しやすい雰囲気づくりも大切な加点ポイントなのです。

②全員の意見をまとめることを求めている
集団討論では、数名が積極的に発言をして最終的に意見をまとめることが多いです。しかし、求められているのは全員の意見をまとめることです。3~4名の意見をまとめただけのグループに対して、全員不合格という判断をした話も珍しくありません。「全員」ということを意識しましょう。

③傾聴と敬意
勘違いしがちなのですが、自分の意見をいかに納得させることができるのかという点で競い合おうとする受験生がいます。しかし、求められているのは論破力ではありません。メンバー全員の合意形成が求められているのです。
自分の意見だけを何度も繰り返し主張し、相手の意見を取り入れようとしない態度は、最も危険な結果を生み出すことでしょう。
相手の意見に、自分の意見と違う着眼点があった場合には、しっかりとその内容を評価する必要があるのです。
例えば、「私にはなかった視点です。」「その考え方もいいですね。」などと声掛けができれば最高です。
合意形成に向けて、話し方や言葉遣い、態度など見られている点はたくさんあるのです。

④合意形成のために意見を整理する
与えられたテーマについて考え、最初に全員が意見を述べる時間が設けられている場合があります。また、討論の過程でもいろいろな意見が出てくると思います。そうした中で相手の話している内容にわからないことがあったらしっかりと確認するのも大切です。最近では、最初に役割を立てても立てなくてもよい、または、立てないで、と言われることも増えてきました。そうした場合に、自分以外のメンバーが司会役をやってくれている時は、当然、司会の方を立てながら提案するようにすることが大切です。合意形成には短い間であっても人間関係の形成が求められるのです。

⑤論理的に考える
何を聞かれているのか、どんな意見をまとめようとしているのか。そうした目的をいつも意識することを心がけます。つまり論点を外さないようにするということです。
今グループの話し合いが少しずつ、「ずれ」を生じさせ始めているとします。ここで、求められるのは討議の方向性の修正です。グループの意見をまとめる重要な局面で、常に全体の方向性を意識してコントロールできたとするならば、あなたの活躍は評価されるはずです。

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