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397 不注意は人災


はじめに

今日の教育コラムでは、7年前に発生した栃木県の那須町で発生した雪崩事故により8名の犠牲者が出た事件について少しお話してみたいと思います。

事件の姿

この事件は部活動の一環として行われた登山の訓練中に発生した雪崩に巻き込まれ高校生と教員合わせて8名が死亡した事故です。
事故とは言え、原告の訴えは雪崩が予期できるような場所で歩行訓練をしたのであるから、自然災害ではなく人災であるという主張であったと記憶しています。つまり、教育活動の一環として指導に当たるものが危険を予見するに足りる専門性を有していたにもかかわらず、その注意を怠ったわけですから、業務上過失致死傷の罪に問われるべきであるという建付けで検察は訴えているわけです。
この事件の被告人は教諭3名です。適切な謝罪を行わず、問題となっている雪崩の情報集取集や当時の天候不順を考慮した対応をとらなかったことが、遺族の感情を逆なでする基となった経緯を報道番組で見聞きした記憶があります。
今回、こうした遺族の訴えを全面的に認める判決が出されました。宇都宮地方裁判所は、雪崩の危険を予見することは十分に可能で相当に重い不注意であり、「人災」であるという判決を出しました。
これにより、現在の状態では控訴しなければ、3名の教員には禁錮2年の実刑判決がでることとなります。

命の重さに鈍感になる

今回の雪崩事故が起きた場所では、当時、少なくとも30㎝以上の積雪があり、植生もまばらで急斜面だったことが確認されています。
雪国に暮らしたことのある人や雪山登山を経験したことのある人などからしてみれば、雪崩の危険性を予期する状況です。
また、地形図の確認や降雪量の情報入手などといった基本中の基本の安全確保のための情報収集も怠っていたわけです。一般的に見て深雪での歩行訓練には危険があり、ましてや天候があれていればなおさらです。
しかし、この訓練は行われました。そこには、危険な状況であっても、ちょっとした変化なら「日常のこと」として処理してしまう人間心理「正常性バイアス」が影響しているかもしれません。
学校現場では、奇声が上がっていても子どもがふざけているだけと、敏感に反応しにくくなってしまうことがあります。また、非常ベルが鳴っていても、誤報かと思いがちになることもあります。そして、慣例となっているようなこうした訓練などでもいつもやっている場所だから安全だという思い込みがはたらくことがあります。こうした油断や怠慢が重大な事故へとつながるのです。
今回の裁判の判決は、まだ確定していませんが大きな教訓として記憶に残り多くの子どもたちや教員の命を救うものとなるでしょう。
ここまで争ってきた遺族の皆様の努力と被害にあわれた方々の命に感謝し、無駄にしないことを誓いたいと思います。

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