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「勉強が嫌い」気持ちを受け止めたら1分ずつ延びた学習時間

こんにちは。発達障害をはじめ学校生活に特別なニーズがある子どもたちを対象にした学習教室・スタジオplus+で支援員をしている田村です。

スタジオplus+に来るお子さんたちの中には、発達の特性を周囲から理解されづらかったことなどを背景に、失敗体験を多く重ねたことで勉強に対する苦手意識が強く、抵抗感を示しているケースが少なくありません。

今回は、そんな「勉強が嫌い」という子どもたちとどのように関わっているか、スタジオplus+での支援によってどのような変化が見られているかをお話したいと思います。

「なんで俺だけこんなプリントやらされてるんだ」

小学4年生のカンタくん(仮名)は毎週スタジオplus+に来るたびに「めんどい」「なんで勉強しなきゃいけないの」とぼやいています。
とにかく早く勉強の時間を終わらせてiPadで遊びたいようで、どうにかプリントの量を減らしたり、学習内容を変えたりできないかと講師に交渉を持ちかけてきます。

そんなカンタくんがある時こう呟きました。

なんで俺だけこんなプリントやらされてるんだ

その言葉を聞いて、「私もカンタくんがやっているプリントをコピーして、横で一緒にやってみよう」と思いました。

翌週、「今日から先生も同じプリント一緒にやるからね」と言うと、最初のうちは、ふーん勝手にやればという反応をしながらも、段々と本人の様子が変化していったように思います。以前に比べて学習中にぼやくことが減り、「先生より先に終わったよ」と、楽しそうな反応が見られるようになりました。

学習内容や方法についても試行錯誤しました。プリント学習という方法にこだわらず、本人に必要なことは何か、学習を楽しいと思えるきっかけはないかを考えました。

例えば、書くことに苦手さや抵抗感が見られた漢字の学習では、漢字1文字を大きく印刷して、それをパーツごとにバラバラに切り分けたものを提示し、元通りの形になるようにくっつけてもらう、ということを始めました。

カンタくんがパズルが好きということと、パーツごとに注目することで漢字を書く時に細部へ注目がしやすくなるということからこの学習を取り入れました。

授業前に漢字パズルを机に置いておくと、自分から手に取って課題に取り組み始めるようになり、以前と比べてカンタくん自身の学習への意欲が少しずつ高まっているように感じます。また、漢字の書き方が段々と丁寧になっていくこともはっきりと見て取れました。

学習が受け入れられるものになるには


とはいえ、全てのことが方法を変えればすぐに取り組みやすくなるわけではありません。
文章問題では用意したプリントに対して「興味ない」「読みたくない」と特に抵抗感が強かったので無理に取り組むのではなく、パソコンを使って興味のある記事について調べてみる活動を取り入れました。

調べ学習を始めた当初、カンタくんはローマ字が曖昧な状態でした。カンタくんはゲームや料理のことについて興味を持っていたので、パソコンを使ってインターネット検索ができるようになると、新作ゲームの情報や、料理のレシピを自分で探すことができるということを伝えた上で、「ローマ字の練習しない?」という話をしました。すると意外なことに、素直に受け入れてくれたのです。

そんなカンタくんの様子から、「なんのために」この学習をするのか納得できる状態が、本人にとって大切であるということを感じました。インターネットで検索するためには、タイピングが必要、タイピングするためにはローマ字の勉強がいる、といったように目的に向かうための道筋がはっきりとしていたので「ローマ字の練習」がすんなり受け入れられるものだったのだと思います。

現在では、タイピングができるようになり、限られた情報で都道府県の名前を当てるクイズをしています。例えば、講師が「からしレンコンが有名な県はどこでしょう」とクイズを出すと、カンタくんはパソコンを使って「からしレンコン」「有名」「県」と打ち込みます。

最初のうちは、検索の仕方がわからずに「からしレンコン」とだけ検索して、作り方のレシピが出てきてしまうようなこともありました。そういった場面で講師から、調べたいものの対象を絞ること、いくつかのキーワードを打ち込むことをアドバイスしたところ、段々と検索の仕方もうまくなり、必要な情報を得るためにどのように検索したら良いかがわかってきたようです。

学習したことが、どのような場面で日常生活につながっているかを実際に体験してもらうことで「あの時の勉強が役に立ったね」と振り返ることができます。

そうして、少しずつ本人が勉強することの大切さに気づいて、「やりたくないのにやらされてる」という気持ちがなくなっていくといいなと思っています。

「毎週1分ずつなら延ばしてもいい」

カンタくんと一緒に決めた教室(60分の利用)での過ごし方で「前半30分勉強」「後半30分フリータイム」という約束があります。

学習時間がちょっと少なくない?と思われる方もいるかもしれませんが、以前は10分の学習に取り組むことも難しいほどの負担や苦手意識があったことを思うと、安定して毎週30分勉強の時間を確保できているのは、カンタくんにとってはかなり大きな変化です。

ある時、カンタくんのお母さんが「60分のうち、40分くらいは勉強してみたら?」とカンタくんに提案しました。以前のカンタくんだったらきっと「やだ」「めんどい」と返すだろうなと思いますが、この時カンタくんは、

毎週1分ずつ(延ばしていく)ならいい」と答えました。

学習することについて、カンタくん本人からそんな前向きな言葉を聞けるなんて…!と、とても嬉しい気持ちになりました。お母さんも「お!いいじゃん!」と嬉しそうでした。

今回お話したケースでは、本人の勉強への抵抗感をまず受け止めて、色々な方向から学び方にアプローチをし、半年かかって少しずつ気持ちに変化が見られてきました。取り組み方の工夫ももちろん重要なのですが、まずは子どもが抱く学習への抵抗感や負担感を受け止めることから始まると考えています。

スタジオplus+の教室では、学び方の探求を一緒に行っていけるように、本人の「勉強嫌い」という気持ちを受け止めて、本人のペースで学習と向き合えるように関わっていけたらと思っています。

これからも、「楽しく学ぶ」という視点を常に忘れず、なんのための勉強なのかを子ども本人と共有しながら関わっていきたいと思います。


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