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LINE相談開始から1年、全国2000件の「生きづらさ」とつながりました

NPO法人ダイバーシティ工房が運営する無料LINE相談「むすびめ」は2021年8月で開設から1周年を迎えました。生活の中で感じる困りごと、自分だけではどうしたらよいかわからないことを何でも、どこからでも、誰でも相談できる場所として開設しました。

この1年、最年少は9歳、大人は50代まであらゆる世代から1000名を超える登録があり、2000件以上の相談・メッセージを受け取りました(2020年8月~2021年8月)。

相談者として最も多いのは10代~20代の若者と子育て中の女性で、ダイバーシティ工房が日頃の活動で対面する層と重なりながら、実際には地理的にも機会としてもネットでなければつながることができなかったであろう人たちです。

ダイバーシティ工房はこれまでに発達の特性に合わせた学習塾、医療的ケアが必要な子も過ごせる保育園、コミュニティスペース、シェルター/自立援助ホーム等々10の拠点を立ち上げ運営してきました。地域の中でリアルな拠点として存在することで、本来は頼みであるはずの制度の狭間に落ちてしまうような状況に対し働きかけてきました。

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コロナ禍で浮き彫りになったのは、物理的な「場」の意義は変わらなくとも、これまで通り運営してきた拠点からでは必要な支援が届かない人々があまりにも多いということです。

拠点型であるがゆえに届かないのであれば、空間をネット上に置き、どこからでもつながり話を聞けるようにしよう。そう始めたのがLINE相談「むすびめ」です。悩みや困りごとが取り返しのつかない形で深刻化してしまう前に、場を閉めずにいられる窓口が必要だと考えました。

SNSだからできること

とはいえ人に相談をするということ自体、中々難しいものです。

内閣府の調査によると、13~29歳の若者の中で、悩みや心配事があったとき誰にも相談しない日本の若者の割合はおよそ5人に1人と、他7か国(韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)では概ね10人に1人の割合で前後するという結果に大きな差をつけています。

どんな相談でもいい、という「むすびめ」の特徴の珍しさもあってか、1通目のメッセージで、「本当に何を相談してもいいんですか?」と聞かれることもあります。

LINE相談のやりとりを通して、若者に限らずあらゆる世代の人たちが、「自分が相談なんてしていいのだろうか」と感じていたのであろうことを痛感します。


困ってはいるのだけれど、具体的に何を相談したいのかはわからない。

聞いてほしいことはあるけど、自分の話や悩みで人に迷惑をかけたくない。

しばらく家から出られておらず、役所の窓口なんて行けるわけない。


そういった状況の中でも、ネットさえつながれば匿名で姿を現さずに利用できるLINE相談は、比較的、第一声を上げるまでの壁が低いと言えます。

困りごとが言葉にならないとき、自分にも他人にも状況の説明がつかないとき、死にたいほどではないけどとても辛いとき、自分に使う「資格」のある相談窓口はないように感じるかもしれません。

だからこそ「むすびめ」は、SNSで気軽に相談に来られるという特徴に加え、困りごとの種類に制限を設けず、文字通りどんな悩みにも窓口を開いています。

まずは話しに来てもらう。そこから一緒に状況や困りごとの整理を行います。状況に応じて、各地域の行政や関係機関につなげる、ダイバーシティ工房の食料郵送や運営拠点につなげるといった、相談の先にある支援に展開させていきます。

食料郵送


「生きづらい」とは何なのか

「なぜ死んではいけないのですか?」という問いを投げかけられることがあります。

生きていたくない、死にたい、生きづらい、そういった言葉を伝えてくれる人たちの中には、壮絶な家庭環境や困窮の中にいる人もいれば、なぜかはよくわからないけれど小さい頃からずっと死にたいんです、と言う人もいます。

原因がわかっていてもいなくても、こんなにも辛い思いをしてまでなぜ生きなければならないのか。私たちはその答えを持っているわけもなく、一緒になって頭を悩ませてしまいます。

生きていればきっと良いことがある、ではなく、本当にどうしていいかわからないよね、と、励ますでも諭すでもなく黙って最後まで話を聞ける人・場所が足りていない。そのこと自体が、そもそも生きづらい状況をもっと過酷にしているのかもしれません。とはいえ、仕事、育児、家事、介護、家族・友人関係、各々が自分の生活に忙しい中で、人の話を穏やかに聞けないこともまた仕方のないことかもしれません。

だから、秘密や安全が守られ、誰からも評価されずに話ができる場所をSNSに空けておく。そうすることで、どこにも行き場がない、誰に相談してよいかわからないと思っている人たちがひとまず行き着ける先であれたらと思っています。

相談の中から浮かび上がる各々が抱える「生きづらさ」の中身はあまりにも複雑で多様です。生きづらいという一言には収められない感情や状況がそれぞれにあります。

そのわからなさを、問い詰めるのではなく丁寧に取り出してみる。言葉にし、体内・脳内にあったときには見えなかった角度から捉えてみる。そのような試みによって、つらさがどこから来るものなのか、解明はできなくとも一緒に探ることはできるかもしれません。


★11/9(火)トークイベントを行います★

対談③Facebookイベントカバー

若者からの進路・就職、コロナ禍での困窮の相談を受け付ける「ユキサキチャット」を運営する認定NPO法人DxPの今井さん、親の離婚や家庭環境における悩みを受け付けるLINE相談を行っているNPO法人ウィーズの光本さんを特別ゲストに迎え、若者たち・様々な人たちが抱える生きづらさと、これからのSNS相談を考えます。
▶イベント詳細・お申込みはこちらから!
http://ptix.at/sznywT



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