子どもの権利保障と学びの深刻な関係

11月20日は、国連で「子どもの権利条約」が採択された「世界子どもの日」です。

ダイバーシティ工房では、4つの学習支援事業を通して、発達障害・不登校・生活困窮などの背景を持った300名以上のお子さんに学びの支援をしています。

世界子どもの日にちなんで、今回は学習支援の立場から、子どもの権利保障について考えてみたいと思います。

子どもへの体罰禁止が法定化

今年2020年4月、改正児童福祉法が施行されました。
この改正で、親から子どもへの体罰禁止が法定化されたほか、子どもの意見表明権の保障に向けた取り組みについても、明文化されています。

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが2017年に、全国2万人を対象に行った調査によると、子どもに対するしつけのための体罰を容認する人が56.8%
過去に子どものしつけとして子どもをたたいたことがある人は、70.1%という結果でした。

体罰1

体罰2

「そんなに高いのか!」と私は感じましたが、
みなさんはこの数字にどのような感想を持たれますか?


内訳をみると、体罰容認=56.8%のうち、
「積極的にすべきである」と答えた人は1.2%。
残りの55.6%は「必要に応じて」「他に手段がないと思った時にのみ」と回答。

さらに、

・「たたいたり怒鳴ったりせずに子育てしたいし、その方法は知っているが、実践は難しい」=33.4%
・「子育てでたたいたり怒鳴ったりすることがあるが、しない方法があれば知りたい」=27.5%

という結果も出ていることから、体罰を容認する回答をした人の多くが、実際には「体罰をすべきである」と考えているわけではないということがわかり、このテーマが決して他人事ではないと感じさせられます。

また、保護者自身が

「子どもの言動に対してイライラする」

「孤独を感じる」

「育児、家事、仕事の両立が難しいと感じる」

という頻度が高いほど、子どもをたたく/怒鳴る、の頻度が増えやすいということも、この調査から見て取れます。
このことから、法律で禁止するだけではなく同時に、子どもや家庭への実際的なサポートを増やしていく必要があるということがいえるでしょう。

体罰4

体罰3

私も現場で子どもや家庭と日々関わっていますが、人ひとりが育つのは何と大変なことだろうといつも感じさせられます。


子どもの権利保障と学習支援


学習支援の現場では、親子における

親(学校):勉強させないといけない

子ども:勉強させられて辛い

という構図が、ここだけ字を大きくしたいくらい”本当に”よく見られます。


例えばこんなシーンがあります。小学生のHさんの話です。

ある日の夕方、いつも通り宿題とこちらで用意したプリントを終わらせ
iPadでゲームを楽しんでいるHさん。

ところが、迎えにきたお母さんは、
「これ(プリント)もやりなさい。ここでやらないんだったら、帰ってお母さんとやることになるよ」
と厳しい言葉を彼女に投げかけます。

実はこのHさん、色々な経緯があって勉強に対して嫌な気持ちを強く持っているので、頭を抱えて「やりたくないやりたくない」と乱れた様子で騒ぎ始めてしまいました。

近くにいた中学生のK君が、気を利かせて
「昔の自分を見ているようだ。帰ってお母さんとやったら悲惨なことになるから、絶対ここでやっていった方がいいよ」
と声をかけますが、彼のセリフは全く届いていない様子。(ちなみに、こういう子ども同士でのピアな関わりは、高学年〜中学生くらいだと結構見られます)

床に転がり「やりたくない」と主張するHさん…

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ここまでになってしまうと、もう勉強させようとがんばるより何もさせないほうがマシかもしれません。

というのは、こういった状態が悪化すると、

・無気力的になったり
・攻撃的になったり
・体調不良を訴えて動けなくなったり
・小学生でも「死にたい」と頻繁に言うようになったり

といった方向に進んでしまい、実際にそうなってからこちらに来るお子さんを多く見ているからです。

このタイミングで

親(学校):勉強させないといけない
子ども:勉強させられて辛い

という構図に対してどう関わるかということは、その子が学校時代をどう過ごしていけるか、持っている能力を伸ばせる・発揮していけるか、ということに直結していきます。

もちろん背景には色々なことがありますから、本当に難しい場合もあります。
しかし多くのケースが、環境づくりやコミュニケーションの取り方によって、大きく変わっていくことも事実です。
特に関わりの段階が早いほど、変化も起こりやすいです。


次の記事で具体的なポイントを紹介します

さて、ここまでは、子どもの権利保障と学習支援の関わりについて簡単に紹介しました。
次の記事では、ダイバーシティ工房が運営する学習支援の現場で大事にしていることは何か。
「勉強させられて辛い」という状態の子どもについて、どのような関わりをすると変化が起こりやすいか。いくつかのポイントを紹介したいと思います。

後編:「子どもを勉強で追いつめない」3つのポイント


文責:武笠隼士

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学習支援事業部アウトリーチチームマネージャー/社会福祉士
相談員として外部機関に出向後、2017年「地域の学び舎プラット」の立ち上げから関わり、同事業所内で行う『自在塾』『放課後等デイサービスプラット』「無料学習教室プラット』の管理を通しておよそ100名の子ども・家庭の支援を担当。

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