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「居場所支援」という言葉への違和感

クラスのはみ出し者だった自分が辿りついた場所

千葉県市川市にあるコミュニティスペース・地域の学び舎プラットで子ども・若者の「居場所」づくりをしている、アウトリーチ事業部マネージャーのさとゆーこと佐藤です。

現在拠点の内外で、子ども・若者たちに学校や家以外の頼り先が一つでも増えるように活動をしています。そんな私自身の10代は、まさに学校に居場所を感じることができない時間でした。

例えば中学校ではとにかくクラスメイトと話が合わず孤立。私にとって大切で大好きな音楽について、好きな音楽性もバンドも誰とも分かち合えないのは、特に大きなことでした。クラス外でも、部活動は「先輩・後輩」の関係性が苦手でやめてしまいました。集団に馴染めず、自分はどこか異質な存在なのだという感覚が消えないまま、高校もクラスメイトに話しかけることに恐怖すら感じ、結局また孤立…。

そんな私がようやく気を許せる友達を見つけたのは、ライブハウスでした。同じように学校に馴染めなかった高校生たちが集まるその場所では、私の好きなものをみんなも知っていて、話が通じ合う。

こんな感動を経験したのは、後にも先にもこの時だけです。そこから私は、しばらくの間ライブハウスに入り浸り、ゆっくり人とのコミュニケーションの方法を身につけていきます。

高校生と音楽で交流しているときの佐藤

「居場所」という言葉への違和感

何の話をしたいかというと、「居場所」の話をしたいのです。当時の私は家庭の事情もあって、心から安心して自分のことを語り、考えられるような場所が学校にも家庭にもありませんでした。そんな私にとっては間違いなく、あのライブハウスが「居場所」だったなと、心から思うわけです。例え、イリーガルな雰囲気がすぐそばに渦巻いていたとしても。

さて、いま、こうやって福祉に携わる仕事をしていると、ちょくちょく「居場所支援」という言葉を見かけることがあります。私も、自分の拠点である「地域の学び舎 プラット」を説明するときにこの言葉を使うことがあります。なぜかというと、何故かそれでなんとなくやっていることが伝わるからです。なんとなく。

でも、同時にこんな思いを抱えています。
「居場所っていうのは、支援される・用意されるものなんだろうか?」

ここに対する違和感がなかなかどうしても拭えなくて、私はいつも人にそうやってプラットのことを説明しながら、同時にモヤモヤした気持ちも抱え続けています。

オレの居場所を、お前が決めるなよ

そういうものではない気がするのです。「居場所」というのは。
それは自分がそう思えて初めて「居場所」になるものであって、他人が定義できるものではないんじゃないかと。乱暴に言えば、「オレの居場所を、お前が決めるなよ」みたいな気持ちを抱いてしまうわけです。ひょっとしたら、そんな若者の気持ちが「トー横」や「ドン横」、「グリ下」を生む一つの要因にもなっているのではないでしょうか(千葉では、「トブ横」というのがあるそうです)。

当時自分がいたライブハウスが、仮に「居場所支援」みたいなものを謳っていたとしたら、多分私はそこに入り浸ることはなかったと思います。
この言葉が、ある種の大人に向けての分かりやすい説明として用いられているうちはまだいいのですが、この言葉を子どもに向けてしまうような大人を見ると、少し困った気持ちになります。「この居場所、私たちが用意したんだよ。心地いい?」なんて。いやいや違う違う、居場所かどうかを決めるのはあくまでその子なんじゃないでしょうか。

そこにいることを決めるのは、じぶん

居場所に関してキーポイントになるのは、「本人の意思がそこにあるのか?」ではないかと思うんです。なんでもそうで、押し付けられるものではなく、自分で選ぶことができるものであること。自己決定権、子どもの場合は「意思表明権」などと言われます。

支援者と呼ばれる人たちは、自覚がなくてもその「押しつけ」をしてしまう可能性があることに、自覚的であるべきだと思っています。

「居場所支援」という言葉を聞き、使うたびに、「そういうことじゃないのでは?」と思ってしまう自分。一方で、それ以上にしっくりくる言葉を提示できない自分。歯がゆいものです。

少なくとも、子どもや若者と関わる時、自分が「何かの支援をしている人」みたいなスタンスは取りたくない。ただの人、でいたい。そんなことを思いながら、今ももがいています。

そんな中、ある若者に携わっている方が、ご自身の肩書を「場づくり師」としていたのは、なんかいいなあと思いました。場を作って、それが何かはその人自身が決めてしまえばそれでいいわけです。うーん、場づくり師、名乗ろうかな…。


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ダイバーシティ工房は、どんなライフステージにあってもだれもがふと相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。
アウトリーチ事業のほか、発達障害があるお子さんを対象にした学習教室、こども主体・保護者に寄り添う保育園、コミュニティカフェ、食料支援、自立援助ホーム、SNS相談の運営など地域の0歳~20歳の子ども・若者とその家族を主な対象に活動を行っています。

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