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障害者雇用のポイント 聴覚障害編

障害者雇用を進める中で、どんなポイントで配慮すればよいのかわからないというお声をよくいただきます。障害者雇用は障害者と一括りにすると絶対に成功しません。障害の種類はもちろん、部位や特性によって求められる配慮やできる事は違うためです。ただ、どこがどう違うのかと言うのは経験や知識がないと難しいと思います。こちらでは障害の種類や部位によって配慮するポイントや検討ポイントをお伝えしたいと思います。

身体・知的・精神・発達の種類の中で健常者の方が一番イメージしやすいのが身体障害ではないでしょうか。身体障害の中でも様々な障害があります。肢体不自由や視覚・聴覚などの対面してわかりやすい障害の場合もあれば、内部障害と呼ばれる対面しても障害があるとわかりにくい障害もあります。身体障害の強みとして、認知や判断能力には障害が出ないという所です。環境を整えれば業務フローなどは変えずに業務遂行できることが多いです。ただ、疾患によっては重複障害があるので手帳が身体障害者手帳だから絶対ということではありません。

聴覚障害の特徴と就業環境

今回は身体障害の中の聴覚障害についてお伝えしたいと思います。聴覚障害は文字の通り聴覚に障害があるのですが、程度は様々です。また、障害を持ったタイミングによって発話や言葉の理解の程度にも違いがあります。聴覚障害は大きく分けて伝音難聴と感音難聴があります。伝音難聴は音が伝わりづらいので感覚で言うと音が小さく聞こえる感じです。そのため音を大きくしたり補聴器を使用することで対応できる場合が多いです。感音難聴は音が感じにくいので言葉を聞いたときにその通りに音を感じることが出来ないため、音が聞こえていても単語としての認識が難しい場合が多くあります。また、どちらも併せ持った混合軟調と言うケースもありますので、対象の方がどのタイプの障害なのかによってもコミュニケーションの方法が異なります。感音難聴の方も補聴器を使用することで音を感知する力は補う事が可能です。何かしらの音が鳴っていると言う事を気づくことが出来るので使用している方も多くいらっしゃいますが、補聴器をつける事で耳に負担がかかり頭痛の原因となったりすることもあるようなので。補聴器の着用を強制するようなことは避けましょう。

コミュニケーションについて

聴覚障害の方とのコミュニケーションではその方の第一言語が何かと言う事を意識することが重要です。小さな時から障害を持っている方は日本語を聞くと言う事がなく言語を習得しますので、多くの場合は手話が第一言語となります。小さい頃は聞こえていて、日本語を覚えてから聞こえなくなった方は日本語が第一言語の事もあれば手話が第一言語の事もあります。また、聴覚障害を持っているからと言って必ず手話が使えるというわけではありません。日本語が第一言語で筆談がメインのコミュニケーションの方や口話と言って唇の動きを読んで相手の言っていることを理解される方もいます。また、発話を問題なくできる方もいればうまく発音が出来ないけども日本語で相手に伝えられる方もいます。もちろん、発話はできずに手話や筆談で相手に伝える方もおり、一人一人に合わせたコミュニケーションツールを使い分ける事が重要です。また、触れる日本語の単語も少ない為、日本語でもわからない単語があったり、ニュアンスが伝わりづらいと言う事もあります。敬語の様に謙譲語や尊敬語、丁寧語など複雑な文章を作成する事などは苦手な場合が多いですので日本語が第一言語ではない場合もあると言う事を認識をしてコミュニケーションをとるようにしましょう。上記についてしっかりと採用面接の際に確認をしておくことが重要となります。

通勤と通院について

聴覚障害の場合は運動機能には問題がない事が多い為、電車での通勤と言う面で時間がかかったりすることはないと思います。しかし、電車が遅延した場合など電車が遅れていることに気づくことはできますが車内アナウンスが聞こえないため、どれくらい遅延するのかなどわからない事が多いです。そのため、電車遅延が起きた場合は取り急ぎ一報をもらうようにするなどしておくとよいかもしれません。車の運転については聴覚障害があるからと言って免許が取れないというわけではありません。免許を取って運転されている方もたくさんいます。健常者と変わらず運転に自信があるかないかによって業務上で運転をするかどうか決定することが出来ると思います。
通院については症状が固定している場合は定期的な通院はない事が多いと思いますが、補聴器の調整が必要になることもあります。

緊急時の対応

また、雇用時に盲点となりがちなのが緊急時の対応です。地震や火事など災害が起きた場合、どのように非難をするのか、万が一に備えておきましょう。聴覚障害の方の場合は、まず緊急事態が起きていることを察知することが最大の課題です。館内アナウンスやサイレンなどは聞こえないため、緊急時はいち早く周りの方が伝えてあげる必要があります。誰かが伝える、のではなく緊急時にサポートする人を決めておくと安心です。その方と共に避難訓練に参加し、避難経路なども確認しておくことをお勧めします。

業務上の配慮

次に業務上の配慮ですが、情報保障と言う点がとても大切になります。その方が理解できる方法でコミュニケーションを行う事はもちろんですが、それだけでは不十分な場合が多々あります。例えば口話が可能だった場合だとしても100%内容を理解できているかどうか確認をしないとわかりません。筆談で文字で伝えても単語の意味やニュアンスを伝えきれているか確認をする必要があります。できればメールなど文字で伝えたうえで、不明点がないかを確認することが大切です。1対1の場合は時間をかければ問題なく伝えられることが多いです。
 しかし、会議など限られた時間の中で結果を出すために都度都度止める事は難しいかもしれません。可能であれば手話通訳を派遣したり、職場に手話が使える方がいれば手話で通訳をしてらうのが望ましいです。それが叶わない場合、複数人が話している会話を全て文字で伝えるのも限界があります。現在は音声認識のアプリケーションが発達していますのでそういう物を活用することで議論の内容を理解してもらう事はしやすくなりました。しかし、タイムリーに文字化されることが難しい為、聴覚障害の方が発言をしようと思ってもタイミングをつかみきれず結局話せないと言う事が多々あります。そのため、可能であれば議題をあらかじめ伝えておき、そのことに関して気になっている事や伝えたい事があれば事前に聞いておくことで、その内容が話されたタイミングでその方に話を振ると言う事もできるかもしれません。また、会議が終わった後にも内容を理解できているか確認などフォローアップすることも大切です。
 また、前述のとおり文章作成についても課題がある場合があるため、社外などに出すメールについては必要に応じてダブルチェックをしてあげると安心かもしれません。

最後に

今回は聴覚障害の方を雇用する際に検討すべきポイントをまとめてみました。聴覚障害の方は業務上では筆談などでやり取りをするけど、雑談などをする機会がなく孤独を感じている場合もあります。もしその方が手話を第一言語にしている場合は、社内で手話の勉強会の講師をやってもらったりすると仕事以外でも関わりを持てる機会となり、職場のエンゲージを高める事につながるかもしれません。 
 あくまで私のこれまでの経験と知識も範囲で書いているため、これが全てではないと言う事は補足させていただきます。もし、こういう場合どうすればいいの?と言う疑問などあれば弊社の無料メール相談にお送りいただければ回答させて頂きますのでお気軽にお問い合わせください。

障害者ではなく、こういう特性を持った人なんだという視点で考えていただくと企業にとっても障害を持つ方にとってもWinWinな職場、多様性のある職場になると思いますし、一つでもそういう素敵な職場が増える事を目指していきたいと思います。


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