ちくわ@大麻の話をしよう

大麻/マリファナ。海外で規制緩和や合法化が進む一方、日本での議論は広がっていない。医療…

ちくわ@大麻の話をしよう

大麻/マリファナ。海外で規制緩和や合法化が進む一方、日本での議論は広がっていない。医療、経済にも大きくかかわる論点であり広く議論されるべきだが、情報に偏りがある気もする。そこで、できるだけ中立に大麻に関する情報を集め、発信したい。そろそろわたしたちも大麻の話をしよう。

マガジン

  • 大麻取締法の改正

    2023年12月に成立した大麻取締法の改正についてまとめています。

  • 大麻関連本の紹介

    議論に必要な知識を得るため、大麻関連本をまとめています。興味がありましたらぜひ手に取っていただければと思います。一緒に学びましょう。

最近の記事

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はじめに

2024年5月、アメリカのバイデン大統領は、大麻/マリファナを連邦法に基づく「スケジュール1」の薬物から「スケジュール3」の薬物に取り扱いを変更する方針だ、と発表しました。(2024.5.17バイデン大統領のXより) スケジュール1では、大麻を所持していれば逮捕収監されるが、「そのアプローチは間違いだった」、そしてこれは「記念碑的」変更だと。 このニュースは日本でも報道されましたが、わたしには正直ピンときませんでした。日本では「ダメ。ゼッタイ。」な大麻、どうやら海外では議

    • 大麻関係データ:令和5年の薬物情勢公表

       7月23日、厚生労働省から令和5年の薬物情勢(「第六次薬物乱用防止五か年戦略」フォローアップ)が公表されました。  内容は薬物事犯の検挙数などですが、大麻に関するトピックスが多く掲載されていましたので概要を紹介したいと思います。 令和5年の大麻事犯の検挙人員は6,703人で過去最多を更新、初めて覚せい剤事犯の検挙人員を上回った。(前年比20.9%増、平成26年の1,813人からは3倍以上。薬物事犯全体では13,815人で大麻は約半数を占める) 大麻事犯の検挙人員の72.

      • 大麻取締法改正 経過の振り返り①

         法改正の内容はだいたいわかりました。残っている疑問点として、厳罰化は妥当なのか、残留THCの濃度基準は妥当なのか、があります。このあたりが改正案の検討段階でどう議論されたのか、されていないのか、確認していきたいと思います。  法改正の方向性は「大麻等の薬物対策のあり方検討会報告書」を基に決められました。ですので、厚生労働省ウェブサイトの議事録などから、この検討会での議論を見ていきたいと思います。 【検討会開催要綱 2021年1月13日】  リンク先が「食べ残しの持ち帰りに

        • 大麻取締法改正への反応②

          続きです。 【GREEN ZONE JAPAN 代表理事 正高 佑志氏】  医療大麻についての正しい知識の普及のため活動している医師を中心とした団体です。政令改正(パブコメ)に対して意見を発信されています。  CBD製品中のTHCの濃度基準について、きわめて厳格であり「CBD原料」についての濃度基準が示されていないことを問題視しています。原料の濃度基準は「その他0.0001%」が適用されると思われますが、これだと現在輸入されている多くのCBD原料が通関しないことになるようで

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        • 大麻取締法の改正
          6本
        • 大麻関連本の紹介
          20本

        記事

          大麻取締法改正への反応①

           大麻取締法の改正について、専門家や関係団体がどう反応したか、メモ的にまとめてみます。ネット上で何らかの反応をあげているものを集めてみましたが、思ったより少ないですね。まだまだ反応しづらいトピックだということかもしれません。 【日本てんかん協会】  てんかんに対する社会的理解の促進、てんかん患者への社会援護活動を行っている団体です。  法改正によって抗てんかん薬「エピディオレックスⓇ」が使えるようになったことについて、「難治てんかん治療の、また一つバリアを取り除きました!」

          大麻取締法改正への反応①

          大麻取締法の改正を噛み砕いてみる③政令

           新たな大麻栽培法の中で、細かい基準などは「政令で定める」とされています。この「政令」について、どう改正されるのか見ていきたいと思います。  なお、これを書いている2024年7月11日現在、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令はまだ公布されていません(7月上旬公布予定だったのですが)。  ですので、厚生労働省ウェブページにある、関係政令改正案への意見募集(パブリックコメント)に掲載されている内容を見ていきたいと思います。 【①麻薬及び

          大麻取締法の改正を噛み砕いてみる③政令

          大麻取締法の改正を嚙み砕いてみる②麻向法

           続いて麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)の一部改正で、大麻がどう規定されたかを見ていきたいと思います。 【定義と規制対象】  「麻薬」の中に大麻が加えられるとともに、麻薬成分としてTHCが規定されました。また、容易にTHCに変化する成分として、大麻草に含まれるTHCAも政令により規制の対象となるようです。  譲渡し、譲受け、所持等については、大麻栽培法には規定がなくなり、麻向法での規制に移っています。 【施用規制】※いわゆる使用罪  大麻の使用について、ほかの麻薬と同様に

          大麻取締法の改正を嚙み砕いてみる②麻向法

          大麻取締法の改正を噛み砕いてみる①大麻栽培法

           本を読んである程度の知識は得られたので、次は現在の日本の動きを調べていきたいと思います。  というのも、大麻取締法、2023年12月に改正法が成立していて、1年以内に施行されるのでした。本を読んでいる途中で知りましたが、これが結構な大改正。  そんなわけで自分の勉強を兼ねて、改正内容を噛み砕いて理解していきたいと思います。まずは新旧の法律を見比べて、変更点をチェックしていきます。 【法律名称の変更】  第一に、法律の名前が変わりました。  大麻取締法は、「大麻草の栽培の規

          大麻取締法の改正を噛み砕いてみる①大麻栽培法

          「大麻大全」まとめと感想

           大麻大全、3行にまとめます。  THCは酩酊・陶酔感などの急性効果、呼吸器系への悪影響などの慢性効果がある。大麻の依存は精神的依存が中心とされるが、THCは1か月以上体内に残存するため身体的依存は見えにくい。  大麻の医療目的での利用を認めた国が増えつつある。患者数が多く治療薬がない疾患に対して使えれば意義は大きいが、カンナビノイド製剤が日本で使われるようになったとしても、それを絶対必要とする患者はそれほど多くないと思われる。  嗜好用大麻を非罰化した国や地域では、高

          「大麻大全」まとめと感想

          「大麻大全」要約③

          【第6章 マリファナ使用が認められた諸外国の現状から学ぶ】 日本の大麻事犯検挙人員は増加の一途をたどっており、薬物乱用防止対策が功を奏したとは評価できない。 アメリカ アメリカでは、(発刊時)現在30州と首都ワシントンD.C.で医療用大麻法が成立している(連邦法では違法)。これは、大麻そのものを認めたというより、患者が必要とする医療を受ける権利を保護するという考え方から、医療用大麻が条件付きで自由化されたとみなすことができる。 しかし、購入のための医師の推薦書が簡単に

          「大麻大全」要約②

          【第4章 大麻の基礎知識PART3 主に薬理、ヒトへの影響】 嗜好目的で大麻を喫煙した場合の効果(用量、年齢、体調等で異なる) 急性効果:身体的には目の充血、血圧低下などの血管拡張作用、口渇、食欲増進(マンチと呼ばれる)など。精神的には酩酊・陶酔感、鎮静、鎮痛、感覚の異常(色や音に敏感になる)、体が重く感じる、意欲・集中力・記憶力の低下など。 慢性効果:身体的には呼吸器系への悪影響、ホルモンの分泌低下、免疫力の低下、精神的には無気力状態、大麻関連障害などがあるが、これら

          「大麻大全」要約①

           4冊目は、「大麻大全ー由来からその功罪までー」(阿部和穂著、2018)です。著者は薬学部の先生です。  この本を選んだのは、前書きに著者の考えとして「大麻の自由な使用を認めるべきではない」とあったからです。これまでの3冊はどちらかと言えば大麻の有効活用や量刑の見直しの立場で書かれていたので、反対の考えを持つ方が書かれた本を探していました。  内容は中立に記述しているともありますが、どのようにして現在の考えに至ったのか、大麻の功罪とは何か、読んでいきたいと思います。 【第1

          「カンナビノイドの科学」まとめと感想

          3冊目、「カンナビノイドの科学」読了。今回も3行にしてみます。 大麻には104種類の「植物性カンナビノイド」が含まれており、痛みの緩和や抗てんかんなど様々な効果がある。 治療目的でカンナビノイドを用いたとき、生命にかかわるような重篤な有害事象はほとんどなく、有害な副作用も少ない。他の医薬品と比べてもリスクの低い優秀な化学物質といえるが、青少年の大麻使用は、依存など悪影響が出る可能性がある。 カンナビノイドに関する情報は、患者と医療従事者に広く伝わっていない。そして、合法

          「カンナビノイドの科学」まとめと感想

          「カンナビノイドの科学」要約④

          【第9章 カンナビノイドと法律の壁】※2015年の状況です 大麻取締法には大麻の医薬品の施用禁止が盛り込まれている。これは、当時流通していた印度大麻草を規制するためで、大麻から作られた医薬品が有害かどうかという視点はなかった。国際条約である「麻薬に関する単一条約」では医療利用は禁止されておらず、リスク評価の点でも大麻とヘロインが同等とされていることは科学的根拠に乏しいため方針転換に向けた議論が進んでいる。 大麻草が国内で薬機法上の医薬品として使えるようになるには、日本薬局

          「カンナビノイドの科学」要約④

          「カンナビノイドの科学」要約③

          【第6章 カンナビノイド医薬品の研究開発】 新薬の開発には多額の費用と時間がかかるが、植物性カンナビノイドはすでに化学構造がすべて明らかとなっているため特許が取れず、製薬会社にとっては開発する魅力がない。このことは法規制を除いても大きな問題となっている。 世界で初めてカンナビノイド医薬品を市販したのはイギリスのGW製薬で、2005年にカナダで「サティベックス」が認可された。サティベックスは、「ハイ」にならないようTHCとCBDが同量含まれるよう設計された医薬品で、多発性硬

          「カンナビノイドの科学」要約③

          「カンナビノイドの科学」要約②

          【第3章 麻は太古からの薬草】 大麻は、世界最古の医学書「神農本草経」に、現在の健康食品や保健薬に相当する、無毒で長期間服用可能な「上品」として掲載された。薬効は、疲労回復、リラックスなどで、多く摂れば魂が見え神がかりになるともあるが、有害とはみなされていない。漢方薬としては全草が薬になるが、特に種子(麻の実)を便秘薬として用いる。 日本での医療利用についてまとまった文献はないが、1886年に公布された医薬品の規格基準書「日本薬局方」には、「印度大麻草」として輸入大麻が掲

          「カンナビノイドの科学」要約②