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「大麻大全」まとめと感想

 大麻大全、3行にまとめます。

  •  THCは酩酊・陶酔感などの急性効果、呼吸器系への悪影響などの慢性効果がある。大麻の依存は精神的依存が中心とされるが、THCは1か月以上体内に残存するため身体的依存は見えにくい。

  •  大麻の医療目的での利用を認めた国が増えつつある。患者数が多く治療薬がない疾患に対して使えれば意義は大きいが、カンナビノイド製剤が日本で使われるようになったとしても、それを絶対必要とする患者はそれほど多くないと思われる。

  •  嗜好用大麻を非罰化した国や地域では、高い経済効果、ドラッグ依存患者の増加が止まるなどの効果がある一方で、幼児が誤食するなどの被害も出ている。 

 以上です。大麻大全という名前のとおり、基礎知識から現状まで幅広く書かれ、さらに「規制派」「解禁派」それぞれの主張に是々非々で著者の意見が添えられており、大麻について議論の足掛かりにするには大変ありがたい本でした。
 また、これまで紹介してきた本では多く書かれなかった「嗜好用大麻」について、外国の対応と現状が書かれており大変参考になりました。
 嗜好用大麻の合法化、非罰化については、どの国も将来的には使用を減らしたいけれど、現状使用者が多すぎて厳罰では社会に与える害の方が大きいことから非罰化などの判断に至っている、ということのようです。そして政府が管理することで得られた税収は依存ケアなどに振り向けていると。
 同じ考えで日本を見たとき、大麻経験率が非常に低い日本では、厳罰継続による害と、非罰化で発生する害と、どちらが大きいのでしょうか。このまま検挙数が増えていけば、前科者とレッテルを貼られ社会復帰が難しくなる人が増えていくわけですし、非罰化すれば、酒・タバコよりマシとはいうものの、交通事故や誤食や受動喫煙など、新たな害の発生がゼロというわけにはいかないでしょう。慎重な議論が必要と思います。
 ただ、現状有識者で嗜好用大麻の全面的な解禁を訴えている人は少数と思いまし、嗜好用ドラッグとしてはアルコールが定着しており規制も緩い日本ですので(それもどうかとは思いますが)、当面嗜好用大麻の規制緩和は可能性が低そうです。ただ、アメリカの連邦法の動向は影響があるかもしれませんし、嗜好用大麻が使えるようになった国の状況は今後も追っていきたいと思います。

本の紹介トップページはこちらから

「大麻大全」要約リンク
要約① 大麻の基礎知識
要約② 大麻の薬理、医療目的利用
要約③ 嗜好用大麻の使用が認められた国の現状

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