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“日本の「道」という概念はSDGsの大きなヒント” トミタプロデュース株式会社 代表 富田剛史さん

「プロデュース」とは、魅力的なビジョンを示し、実現する仕事。多くの人が「オモシロイ!」と思うことを生み出す。人や地域、企業、お店や各種団体などに、魅力をつくり、ファンつくり、コミュニティを育てるプロ企画者である富田さんにお話を伺いました。

【富田さんプロフィール】
出身地 熊本市生まれ 横浜市育ち
経歴 第二電電(現KDDI)の立ち上げ、第二FM(J-wave/東京、ZIP FM/愛知、Cross FM/福岡など)の創生期などを経て、番組から街イベント、WEBメディアまでコンテンツやメディア企画の実績多数。基本発想がラジオ的であり、弱い者びいきの第二好き。
現在の職業および活動 地域や事業者などの魅力を「コンテンツ」にし、それを何かのメディアで発信することで、お客や住民・旅行者を「ファン」に変えて課題解決を図る手法のコンサルティングやプロデュースを実施中。また、プロデュース型の人材育成にも取り組み、コンテンツプロデュースの方法論やSDGsの実践企画について、セミナー、企業研修、起業塾の運営などにも取組んでいる。

オリジナルを作る企画にこだわる

記者: 富田さんはいま何をされていますか。

富田:いろいろありますけど、自分のメディアを作って発信できる人、オリジナルを作る人を増やす仕事をしています。

記者:オリジナルをつくる人ですか。自分の得意を持っていないと難しそうですね。

富田:答えは千差万別でいいし、オリジナル(自分でつくったもの)を大事にする人が増えていってほしいと思っています。以前から判官贔屓(はんがんびいき:弱い者びいき)で、これはこう決まっているから世の中の長いものに巻かれろと言われるのが嫌で、いまだにムキになって抵抗します。それは小学校の時からほとんど変わってない(笑)。

記者:どんなところがですか?

富田:特に発想ですね。僕はプロの企画者なのですが、一番の敵は、固定観念や既成概念です。これを持たないようにするのが大事で、小学生のような視点で見方をちょっと変えるだけで企画が成り立つことがあります。

記者:固定観念を外して企画するって、できそうでなかなか難しいですよね。

課題解決と未来予測は面白い

富田:そうかもしれません。僕は子どもの頃から未来を予測するのがすごく好きでした。例えば、僕らの世代は、いい大学に入っていい会社に入る。偏差値というのが重視されていて、起業なんてありえない風潮でしたが、そのころから「サラリーマン」という言葉は将来なくなるだろうと思っていました。
当時「遅刻しない、休まない、仕事しない」のがサラリーマンの鉄則と言われていましたが、未来の子供達は、20世紀の日本史のキーワードで「サラリーマン」というのをテスト勉強で覚えて、「そんな働き方があったんだ」と考えるようになると思っていました。

記者:おもしろい発想ですね。

富田:これから先の未来予測を話すと、これから日本にとって大きなことが起こります。
一つは機械翻訳の発展ですね。これまで日本の文化の特殊性を保ってきた日本語の壁が崩壊する日がここ何年の内に必ずやってきます。いま日本に有史以来ないほど外国人が入ってきていますが、その流れと共にテクノロジーが言葉の壁を解決してしまう。その時に、日本文化がどんどん言語化され、ますます世界に流通すると思います。

記者:なるほど。

富田:もう一つは、 AIと機械の発展でなくなる仕事の話しです。「機械には人間のような仕事はできない」という人がいますが、僕はロボットが人の形をしたら何でもできるようになると思っています。アンドロイド、人型ロボットが閾値(しきいち)を超えて安くなった時に、もう企業は絶対に利益を追求していきますから、今までの仕事がなくなっていくのは間違いない。それをノーと言っても話にならないし、その時のことを予想しておかないといけないと思います。

記者:その時に人間は何をするのか、っていうことですね。

富田:ええ。僕は表現活動をする人が増えると思うんです。今もすでにそうなってきていますが、スーパースターではなくても歌手といってもいい、ファンはいるみたいな人がたくさんいる。桁違いに稼げないかもしれないけど、本人の満足感があって、幸せに生きていく人。それは仕事なのか、趣味なのか?と問う人がいますが、それこそが固定観念です。どっちでもなくてもいいと思う。
同じことは「起業」でも言えることで、都会で大成功するよりも、地域に根ざしたビジネスを生んで、その町で幸せに生きることを目指す人を育てることがより重要ではないかと思うんです。いま関わっている「日本ママ起業家大学」で目指していることもそれです。

記者:地域に根ざした仕事ができることは大事ですね。

富田:僕らが教えるのは、お金が山ほど儲かるとか事業拡大で世界を席巻する方法ではなく、自分の商品を欲しいと思ってくれる人が定期的に出てくるにはどうしたらいいか。地域の小さな独立事業家がいかに遠くまで情報発信して、同じ価値観の人に出会うことを想像できるようになるのかを大事にして表現する、それがSDGsにつながります。

記者:SDGsって、たしか国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」ですよね。それにつながる?

幸せの基準を自分で決める

富田:幸せの基準を人に握られているうちは世界中の人が残らずHAPPYになるのは不可能だと思うんです。自分で感じて幸せの基準を自分で決められるようになること。そのためには創造する力が必要で、それができれば、自分に対する自信になりますね。

記者:どうしたらそういう人になれますか。

富田:まずゴールを自分で決めること。いま関わっている日本ママ起業家大学の活動や、地方創生のプロジェクトもSDGsも同じで、何が起こると創生なのか?どういうことが起こると成功なのか?というのを十分議論してから進める必要があります。情報流通の主メディアがインターネットに変わったことで、個人一人ひとりがみんなに広げて発信できるので面白いです。

記者:ネットによって、世の中短期間でガラッと変わってきていますよね。

富田:この先、世の中で一番貴重な資源は何か?という議論になると思います。僕の中では答えが出ていて、石油でも鉱物でもなく、世の中で一番貴重な資源は「人の時間」だと思う。
インターネットが主要メディアになって、広告の枠が無限になったと言われているけれど、僕はそう思っていません。実は、世の中のメディアの総量は受け取り手の時間の総和です。今はみんながメディア化して、誰かの時間を奪い合い、受け手の脳内思考も含めて時間をどれだけ獲得するかが影響力そのものになっていきますね。だから「人の時間」という限られた資源を取り合う。

記者:地方創生もそれと関係がありますか。

0.1を発見することで地方創生を始める

富田:もちろんです。いま「関門時間旅行」というプロジェクトをやっていて、関門海峡の「関門」で、下関と門司の略ですが、関門という地名はありません。地名が無いとそこに行きたいと想ってもらいにくいわけです。しかし、関門海峡には誰もが知る物語や有名人がたくさん関係しています。例えば、平家が沈んだ壇ノ浦も武蔵と小次郎が戦った巌流島も関門海峡。
そこで関門を想ってもらう時間を増やすために、まず琵琶と現代語で聴く平家物語の朗読劇を作成しました。これに感動すれば現地を旅したくなるし、地元で演者という仕事もできるようになる。その地域のイベントやキャラクターをつくるのもいいですが、本来そこにある価値をその地ならではのキャストでコンテンツ化して人の時間を獲得するのが、僕にとっての地方創生なんです。

記者:それが、はじめに言ってたオリジナルを創る人を育てたいということにつながるんですね。
でもその土地ならではの魅力を作るのがなかなか難しいと思いますが、どのように作ったらいいでしょうか。

富田:まず観察することですね。プロデュースとはゼロから1を作ることではなく、0.1を1にする作業です。その0.1の種を発見するのが大切なんです。どこにでもある魅力の種0.1を見つけて、1に育て、10に育て、100に育てようとするのは、賭けで難しいけれど楽しい作業です。そういう人が増えれば、いろんなものが創生すると思います。

記者:普通では見過ごしてしまう0.1とか0.01に、どうしたら気づけますか?

富田:その種を見つける企画の技術の一つは、俯瞰です。関門の話でいうと、壇ノ浦で平家物語を手軽に聴けるプログラムがないなんて、なんか変だと思うこと。この俯瞰には2つあって「空間的な俯瞰」と「時間的な俯瞰」をすることが重要です。

記者:時間的な俯瞰と、空間的な俯瞰ですか?

富田:時間的俯瞰は、50年前とか、50年後を行ったりきたりして今を観察できる感じですね。空間的俯瞰は、その土地らしさのことで、いかにも関門だよね、いかにも東京だよねという感覚。時間的なものも加えると「いかにも2019年の東京らしい企画だよね」、といったことですね。

記者:それが0.1を見つけることになっていくわけですね。最後に、富田さんはどんな美しい日本をつくっていきたいと思いますか。

日本の”道”という概念はSDGsの大きなヒント

富田:美しいっていうのは主観だから「美しい日本をつくりたい」とは思わないです(笑)。ただ、インターネットによって世界の都市が均質化されていく中で、個人的には世界の文化の多様性を維持するように仕事をしたいと思います。中でも日本文化は異質度の極めて高い文化で、西洋や日本以外の国から見ると、どれだけ掘ってもここまで違うのかというくらい不思議な国が日本ですね。そこを大事にしたい。

記者:日本は他の国と違うというのは、具体的にどんなところですか。

富田:最近いわれている人生100年時代は『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』という本の影響ですが、これは極めて西洋的な発想で一人の人生にフォーカスした話ですね。でも日本人は、その人一人ではなく、受け取ったバトンを次に渡して、過去から未来を充実させていくイメージを昔から持ってきました。それが、日本人が大好きな「道(どう)」のコンセプトだと僕は思います。コーヒーでも野球でもアイドルでも、日本人にかかると「何とか道」になっていきます(笑)。

記者:自分個人は、その「道」の上にあるという感覚ですか?

富田:上にあるというより、自分は脈々と続いている道の一部です。自分担当の長さが50年なのか、20年なのかは大した問題じゃないという感覚ですね。

記者:根底には今も何か残っている感じがします。

富田:そしてそれは、いま世界が目指すSDGsの達成にとって大きなヒントに違いないと思います。遥か昔から日本人のものの考え方は、現代の世界の叡智が議論して至ったSDGsの行動に非常に近かった。だからこそ日本は世界から注目をあびているし、今後まだまだ注目をあびるでしょう。
でもそれを日本人自身が理解できずに、逆の行動をする人も増えているのも事実です。まず日本人が日本文化の意味を知って、これから先、言葉の壁が崩壊する前に、ここが面白いんだと説明できる必要がある。それができるようになった時に、日本は世界のリスペクトを集める国になると思います。そういうことをもっといろんな人と議論していけたらいいと思っています。

記者:日本の宝は文化ということですね。日本自身がそれに気づいて発信していけるようになれば、国家創生になりますね。そんな議論をこれからもしていけたらうれしいです。
今日は、個人の生かし方から、地域の生かし方、国の生かし方まで貫いてお話いただいて、とても勉強になりました。本当にありがとうございました。

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富田さんに関する情報はこちらから↓

ホームページURL:https://tomitaproduce.jp

【編集後記】
今回のインタビューを担当した中谷と牧野です。斬新は発想で企画を続ける富田さんは、目を輝かせながら、どうしたらもっと面白いものができるか、どうしたらもっと人や地域を生かすことができるのかを考え、「燈台下暗し」の発見を楽しみながら仕事をしていることが伝わってきました。これからのご活躍も期待しています。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。




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