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ミッションとビジョンの違いは何か?『図解 人材マネジメント入門』【無料公開#25】

電子版5月28日、書籍版6月26日発売の『図解 人材マネジメント入門』では、人材マネジメントの理解と実践に役立つ100のツボが紹介されています。その中でマネジメントする側・される側双方に役立つ30のツボを、毎日1つずつご紹介していきます。

Q:ミッションとビジョンの違いは何か?

A:ミッションは変えてはならない使命、ビジョンは変えるべき未来の姿


ここでは組織の目的について考えます。

組織開発とは「組織の効果性を高めることを目的に、行動科学を応用した、組織内のプロセスを変革する、人間尊重的で計画的な取り組み」です。自組織は「何」に向けて効果性を高めていくべきなのでしょうか。

私のコンサルタントとしての経験上、組織の目的について考えるときに、どの企業でも必ず陥る罠があります。
それは、言葉のすれ違いです。ミッション・ビジョン・バリューなど似たような言葉がたくさんあり、しかもその言葉の使い方が人によって異なるため、いったい何の話をしているかがわからなくなってしまうのです。
まずは言葉の定義を揃えると組織開発は格段に進めやすくなります(図表084)。

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ビジョンと戦略は「変えるべきもの」

ビジョンとは「未来のあるべき姿」を言葉にしたものです。戦略とは「現状とビジョンとのギャップを解消するやり方」つまり「勝ち方」を言葉にしたものです。
ビジョンや戦略は3年あるいは5年といった区切られた期間で定めることが多く、社内外の環境によって「変えるべきもの」です。変えなければ環境に適応できず企業は衰退していきます。
多くの経営者がダーウィンの進化論を引いて説明するように「変化に適応したもの」が生き残るのです。

ミッションとバリューは「変えてはならないもの」

ミッションの語源はラテン語の「mittere(遣わす)」。遠方の地へ行き、果たすべき役割のこと、神から授かった「使命」のことです。
自社を定義する「われわれの事業は何か、何になるか、何であるべきか」という問いに答えることが、自社のミッションを知ることになるとP. F.ドラッカーは言っています。

バリューとは「企業が社会に提供したいと考える価値」つまり、相手にどのようなベネフィット(benefit 利益・恩恵)をもたらすのかを言葉にしたものです。

立ち位置の違いはありますが、ミッションとバリューの本質は同じもので、それは期間の区切りは設けず、基本的な価値観として長い時間をかけて組織に根付いていく「変えてはならないもの」です。

もしミッションが毎年のように変更されている場合、それはスローガンの域を脱していない発展途上のものと言えます。過去から現在、そして未来への「一貫性」が必要です。
環境変化の中で朝令暮改は経営者にとって当たり前でしょう。しかし一貫した「芯」がなければ組織への信頼は「言っていることと、やっていることが違う」と失われてしまいます。

次回は、世界のビジョナリー・カンパニーの特徴を紹介します。

<著者プロフィール>

坪谷邦生(つぼたに・くにお)

株式会社壺中天 代表取締役、株式会社アカツキ 人材マネジメントパートナー、株式会社ウィル・シード 人事顧問、中小企業診断士、Certified ScrumMaster認定スクラムマスター。 1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルート社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、急成長中のアカツキ社で人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志を形にする」ことを目的として壺中天を設立。 20年間、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、人材マネジメント講座などによって、企業の人材マネジメントを支援している。 主な著作『人材マネジメントの壺 ARCHITECTURE』(2018)、『人材マネジメントの壺DEVELOPMENT』(2018)など。

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