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一流クリエイターが「フラットに成果を出す」ために意識していること。

『「やりたいこと」も「やるべきこと」も全部できる! 続ける思考』の刊行記念で実現した、今を代表するクリエイター同士の対談記事。(第1回の記事はこちら、第2回の記事はこちら

今回はお二人が書籍を書き上げたとき、一緒にお仕事をされたときのエピソードトークです。なかなか聞くことのできない一流クリエイターたちの心中が明らかになります…!

「自分との約束」を守り続けるということ

(阿部さん)
本を自分で書き上げていくって、なんて言うんですかね、その時点の集大成で、すべてがそこに吸い寄せられていく感じがあります。

(井上さん)
ありますね。
けれど、結局一気に書き上げるわけじゃないんで、分けて書いていくじゃないですか。その中で、文章のテンションをどう維持してますか?

(阿部さん)
Xだったりとか、noteとかやっててよかったなと思います。というのも、自分の記憶の断片とか思い出の断片を一度自分で集め直して自分なりに編み上げていくっていう感覚に近いんですよね。

(井上さん)
似てはいますね。

(阿部さん)
で、とにかく編集者の人と約束しちゃったからやらないとって。
約束エネルギーって言ってるんですけども。シンプルにそれなんです。

(井上さん)
僕の場合は編集者には書くとは言ったんですけど、いつまでとかって言わないで本当にできあがるまで見せなかった。

内緒でやってたんで、誰にも見せずにずっとやってた。
自分で〆切は決めてたんですけど。
だからその意味では自分との約束エネルギーとも言えそうだけど、なんでしょうね…テンションを維持するのが結構やっぱり大変だった。

(阿部さん)
誰かが待っててくれてるっていうゴールがないとマラソンは走りきれないと思うので、新八さんはある種、自分自身との約束っていうところを一つ一つの小さなゴールにして、マラソン走り切ったんだな、と。

(井上さん)
まさにそんな感じでした。書かなきゃいけないんですけど、本を書くって本当に大変なんですよね…よく、4冊も書きましたね(笑)

(阿部さん)
不思議なもので、気づいたら書いていたみたいなところもあるんです。
いわゆる動く歩道みたいだなと思うんです。
「続けること」は、流れをつくるってことだと思うんですけども、乗るまでがよいしょって感じですね。

(井上さん)
書く時間を決めてたりしてるんですか?

(阿部さん)
いや、全然決めてなくて。
今はもう本当に時間がなくて、本当に何かにいつも追われてる感じで。

でも、やっぱり流されるだけではなくて、自分から流れを作らなきゃなと思ってるんで、本当に新八さんの本を読んで1日何分かでもやらなきゃなって思います。

(井上さん)
いやいや、途切れても続けられるっていうのは、自分にはちょっとできないので、尊敬するやり方です。

やるんだったらとにかく続けておかないと…途切れると多分終わっちゃうんですよね。だからそこはもう本当に止めずにやるしかないって思ってて、1日1分でもいいからやるとか、1文字でもいいから書く、みたいな。

(阿部さん)
「続けること」は、些細なことでもいいからやってみようよ、小さいことでいいから形にしてみようよ、っていう自分に対しての声かけなんですよね。

(井上さん)
そうかもしれないです。

テンションの動きがわかっていると、仕事もうまくいく

(阿部さん)
なんかちょっと思い出した話で言うと、熱量とかテンションとかって限られたものだと思っていて。

僕が新八さんに書籍のデザインのお願いをしたとき、割とそのお打ち合わせで自分はこういう想いだからこそ、ぜひとも新八さんにお願いしたいんです!とお伝えしたのですが、それを後に新八さんのnoteに「何かを受け取りすぎてしまったかもしれない」みたいなことを書いていただいたことを鮮明に覚えています。

仕事って、クライアントや仕事相手からすると、その人のテンションの奪い合いだったりもするなって思うんで。
自分はそういう人のテンションを上げられる人でもありたいし、やっぱり自分に対して高いテンションを向けてもらいたい。そういう願望や欲望はやっぱりあるなって思ったりしていて。

(井上さん)
確かに、本のデザインって、著者の方と話すことって意外と少なくて。

いろいろ理由があると思うんですけど、僕の場合でいうと、あまり受け取りすぎるとフラットに見られなくなるっていうか。熱量を込めすぎると今度は読者との距離ができてしまうかも、みたいに感じてる部分がある。

あの時はちょっと熱を受け取りすぎたかもなーって思ったんですけど、でも受けてしまったものをどう形にするのかっていうことで、出し尽くすまで出してみるか、と。たぶん普段の仕事以上にアイデアを出した。

最後はちゃんと持っていけたので、熱が上がってて良かったなと、あのときは思いましたね。

(阿部さん)
打ち合わせの場で、新八さんのカバー案をたくさん並べて、満場一致で「これだよね」ってなった瞬間を今でもよく覚えてます。本当に一緒にできてありがたかったです。

(井上さん)
そう言っていただけてよかった。

(阿部さん)
人のテンションで自分のテンションがどういう動きをしてるかって、知っておいた方がいいし、反対に仕事相手の方のテンションの動きみたいなのをわかっていると、お互いが心地よく仕事できると思いますね。

(井上さん)
いい状態でやれるのはもちろんベストなんですけど、なんかこうイレギュラーが起きて化学反応が起きると、新しい発見もあります。

だから「著者とは会わない」という決めつけるのは違うかなっていう気もする。いつもと違うことを試していくと、飽きずにできるし…違うことが起きるってのはいつでも大事だな、というふうには思ってます。

(阿部さん)
いやー、「続ける」って同じことをずっとやり続けるわけではなくて、「自分が変わっていくこと」を自分の中で生み出していくことなんですよね。

自分のルールでガシガシに縛るんじゃなくて、イレギュラーなものを受け入れていくことも、実は継続の秘訣だったりするのかなと、お話を伺っていて思いました。


全3回にわたる対談はお楽しみいただけましたか?

第1回記事
一流クリエイターが「習慣化」を突き詰めた先に見えたもの。

第2回記事
仕事は「○○前にやる」?一流クリエイターの仕事術

さらに、阿部広太郎さんの『あの日、選ばれなかった君へ――新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』を深掘りするパートは下記の記事から読めますので、気になる方はぜひこちらもチェックしてみてくださいね!


【対談者プロフィール】
井上新八(いのうえしんぱち)
ブックデザイナー・習慣家。1973年東京生まれ。和光大学在学中に飲み屋で知り合ったサンクチュアリ出版の元社長・高橋歩氏に「本のデザインしてみない?」と声をかけられたのをきっかけに、独学でブックデザイン業をはじめる。大学卒業後、新聞社で編集者を務めたのち、2001年に独立してフリーランスのデザイナーに。自宅でアシスタントもなくひとりで年間200冊近くの本をデザインする。趣味は継続。それから映画と酒とドラマとアニメとちょっぴりゲームとマンガ。あと掃除とダンスと納豆。年に一度、新宿ゴールデン街で写真展を開催している。最近、短歌をはじめた。書籍の帯を広くしてたくさん文字を掲載する、棒人間(ピクトグラム)を使う、カバーに海外の子どもの写真を使う、和書も翻訳書のように見せる、どんなジャンルの本もビジネス書風に見せるなど、主にビジネス書のデザインという小さな世界で流行をつくってきた。著書に『続ける思考 「やりたいこと」も「やるべきこと」も全部できる!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

阿部広太郎(あべこうたろう)
1986年生まれ。埼玉県出身。慶應義塾大学経済学部を卒業し、電通入社。人事局に配属されるもクリエイティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。2015年から、連続講座「企画でメシを食っていく」を主宰。オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」では、2020年の「ベスト先生TOP5」にランクイン。「宣伝会議賞」中高生部門 審査員長。「企画する人を世の中に増やしたい」という思いのもと、学びの場づくりに情熱を注ぐ。著書に『待っていても、はじまらない。ー潔く前に進め』(弘文堂)、『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社)、『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。X: @KotaroA


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