吉川歩

本が好き。アフリカと日本を行き来しながら暮らしています|'93|毎週日曜更新

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記事一覧

共有するとか、しないとか|ウガンダ生活

地方出張の帰り道、車で、畑やススキが両側に広がる赤土のまっすぐな道を走っていると、アチョリ(僕がいる地域の名前)語のコメディがラジオで流れた。一緒にいた同僚に翻…

吉川歩
2日前
38

キャラやバンドと歳をとってさ

せっかくアフリカにいるし、アフリカのことを書きたいけど、今週はちょっとしたトピックがあった。米澤穂信さんの小説「小市民シリーズ」が完結したのだ。文庫本で5作のミ…

吉川歩
9日前
38

【おすすめ本】子供時代は知らない街角(山田詠美/晩年の子供)

子供の頃のこと、どれくらい覚えていますか。 例えば、幼稚園の通学路、友達との初めてのケンカ、好きだったテレビ番組。我ながら、ぼうっとした子供で、記憶は少ないし、…

吉川歩
2週間前
45

暗闇で水を飲むひとよ

だれにも話したことはないが、ずっと探しているものがある。 恋人や幸せのような大それた話ではなく、もっと小さなものだ。他人に話したことがないのは、人に言えない悩み…

吉川歩
3週間前
59

書き出しカルタを作って遊ぶ

外は大雨で、仕事も忙しく、家の中で朝から晩までPC画面しか見ていない、これで本当に生きていると言えるのか、そんな一日(8/29)。風呂に入って夜十時、何か人間らしい…

吉川歩
1か月前
53

アフリカ暮らしのこよみ|ウガンダ生活

日本の都市とアフリカの暮らしの大きな違いは、季節にどれだけ左右されるかだと感じることがあります。 例えば、雲は出ていても、雨が降らない時。日本の街で暮らしている…

吉川歩
1か月前
47

【おすすめ本】人類がはじめて月を歩いた夏だった(オースター/ムーン・パレス)

今週もこんにちは。今日は実家の名古屋に帰省してきます🙋 作家の訃報に接してその作品に触れる、ということが時々あります。最近は大江健三郎さんとか。亡くなってから作…

吉川歩
1か月前
52

ふたりぼっちの青春【映画「ルックバック」感想】

映画館に映画を見にいくのが、少し苦手だ。話しても、動いてもいけないと思って緊張するのかもしれない。行って後悔したことはないのに、自分のペースで読める本にばかり手…

吉川歩
1か月前
84

人が変わるなんて、薬味を1回頼むくらいのこと

僕はアフリカはウガンダと日本を行き来する仕事をしている。ひと月半おきに日本とウガンダを往復し始めてもうすぐ3年。 とはいってもウガンダはまだまだ謎だらけだ。一つ…

吉川歩
1か月前
44

【おすすめ本】悪役と悪と悪いやつ(伊坂幸太郎/マリアビートル)

今週もこんにちは。ぶじに帰国しました🛩️ 暑いですね・・・ 今日の一冊は伊坂幸太郎さんの「マリアビートル」。東北新幹線に乗り合わせた殺し屋たちの運命が交錯する群…

吉川歩
2か月前
49

マイホームは円い家|ウガンダ生活

今週もこんにちは。今日は移動日です🚗 アチョリ地域の円い家(ハット) 僕が今いるのは、ウガンダ北部アチョリ地域。初めてここに来た時、まず日本との違いを感じたのが…

吉川歩
2か月前
71

国際電話で美容院を予約する

2024年7月8日(月) 朝の通勤路でマンダジ(1個約20円)をたまに買う。マンダジは小麦粉を練って揚げた揚げパンのこと。自転車のお兄さんが朝、バケツに詰めて売り歩い…

吉川歩
2か月前
40

【おすすめ本】きみの空に一匹の猫がいて(大江健三郎/空の怪物アグイー)

今週もこんにちは。ウガンダ出張もあと二週間ほどです🇺🇬 このマガジンは同じ作家は二度取り上げないぞと勝手に思ってきたのですが、今回それを破ります。最近読んですご…

吉川歩
2か月前
52

葉物野菜ばんざい|ウガンダ生活

今週もこんにちは。祖父から名古屋は梅雨の只中と聞きました。みなさんの住む場所はいかがですか。 今来ているウガンダはアチョリ地域。アチョリ料理が薄味でおいしいんだ…

吉川歩
3か月前
73

【おすすめ本】ひとの数だけ歴史はあるの?(バスケス/コスタグアナ秘史)

今週もこんにちは。早くに目が覚めてしまいました🥱ウガンダは朝の5時・・・ 「歴史は勝者が作る」と言われます。歴史は中立ではなく、起きたことを書き残せるのは勝者だ…

吉川歩
3か月前
37

ウガンダのソウルフードはロレックス

2024.06.10 月 前回の出張で、お土産にボールペンを持ってきたら、ウガンダ人の同僚には青色が圧倒的人気で赤色が余ってしまったと日記に書いた。(ボールペンは基本的に…

吉川歩
3か月前
43

共有するとか、しないとか|ウガンダ生活

地方出張の帰り道、車で、畑やススキが両側に広がる赤土のまっすぐな道を走っていると、アチョリ(僕がいる地域の名前)語のコメディがラジオで流れた。一緒にいた同僚に翻訳してもらったら、こんな小噺だった。 同僚たち、爆笑。最初は「良い子」を装って食事を断る。しかし、あっさりお肉に釣られる。それでも、自分のためではなく、相手のために行くのだと言い張る主人公が可愛いのは分かる。 でも、正直ピンと来なかった。誘われたなら、澄ました真似をしなくても、素直にご馳走になればいいじゃないかと思っ

キャラやバンドと歳をとってさ

せっかくアフリカにいるし、アフリカのことを書きたいけど、今週はちょっとしたトピックがあった。米澤穂信さんの小説「小市民シリーズ」が完結したのだ。文庫本で5作のミステリー物だが、一作目は2004年刊なので、かれこれ20年追いかけてきたことになる。 (アニメも気になる) 一作目が出た当時、僕は小学五年生だった。新聞の書評欄で見つけて、たしか将棋大会の日に、大雨の中、遠くの本屋で買って帰った。 それから二十年。僕は三十代になり、ウガンダで最後の作品を読み終えた。さびしさや満足感

【おすすめ本】子供時代は知らない街角(山田詠美/晩年の子供)

子供の頃のこと、どれくらい覚えていますか。 例えば、幼稚園の通学路、友達との初めてのケンカ、好きだったテレビ番組。我ながら、ぼうっとした子供で、記憶は少ないし、覚えていても断片的なイメージだったりします。それでも、何かの拍子に蘇る思い出があって、あの経験をした一人の子供が今の自分と地続きであると思うと、不思議な気持ちになります。 「子供時代」はだれもが通ってきた知らない街角のようです。 今週は、最近読んだ本ではなく、本棚から一冊を紹介します。山田詠美の「晩年の子供」という短

暗闇で水を飲むひとよ

だれにも話したことはないが、ずっと探しているものがある。 恋人や幸せのような大それた話ではなく、もっと小さなものだ。他人に話したことがないのは、人に言えない悩みだからではなく、その心の揺れがさざなみのように小さく、文字通り「言うほどのことでもない」からである。 それは例えば、失くした折り畳み傘のカバーとか、丁度いい町中華とか、お気に入りのパンツに映えるカットソーとか、座右の銘とか、手頃な丼茶碗とか、そういうものだ。頭の隅でずっとうっすら探している。でも見つからない。普段は

書き出しカルタを作って遊ぶ

外は大雨で、仕事も忙しく、家の中で朝から晩までPC画面しか見ていない、これで本当に生きていると言えるのか、そんな一日(8/29)。風呂に入って夜十時、何か人間らしいことがしたいと家の中を見回すが、本を読むエネルギーはない。 さて、どうしよう。そんな時に思いついたのが「書き出しカルタ」である。好きな書き出しを五十音集めてカルタにしてみるのだ。いきなり全音はハードルが高いので、1列につき1つ、好きな書き出しを並べてみた。 以下に列記する。①家にある②すべて違う作家の作品、とい

アフリカ暮らしのこよみ|ウガンダ生活

日本の都市とアフリカの暮らしの大きな違いは、季節にどれだけ左右されるかだと感じることがあります。 例えば、雲は出ていても、雨が降らない時。日本の街で暮らしていると「今日、傘持ってく?」で済むところが、アフリカだと「畑の作物が枯れてしまうかも」という切実な心配に変わるのです。 アフリカの農村では季節に生活を合わせます。農村人口の大半は農家で、雨が降らないと、食べ物を作るための農業ができません。下図はアフリカ、僕のいるウガンダ北部はアチョリ地域での一年をまとめたもの。 雨季

【おすすめ本】人類がはじめて月を歩いた夏だった(オースター/ムーン・パレス)

今週もこんにちは。今日は実家の名古屋に帰省してきます🙋 作家の訃報に接してその作品に触れる、ということが時々あります。最近は大江健三郎さんとか。亡くなってから作者に親しむこともあり、そんな時は良い作品に出会えた喜びと後悔がないまぜになった気持ちになります。 ポール・オースターも今年4月に亡くなり、久しぶりに「ムーン・パレス」を読み返しました。大学以来だから、十年ぶり。青春と喪失、忘れえぬ痛み。そんなキーワードにビビッとくる人にはおすすめの一作です。1989年発表。 ▼▼

ふたりぼっちの青春【映画「ルックバック」感想】

映画館に映画を見にいくのが、少し苦手だ。話しても、動いてもいけないと思って緊張するのかもしれない。行って後悔したことはないのに、自分のペースで読める本にばかり手が伸びてしまう。 でも、先日見に行った映画は本当に良くて、「早く見終わりたい」じゃなく「もっと見たかった」と思った。「チェンソーマン」の藤本タツキ原作・押山清高監督の「ルックバック」だ。 「ルックバック」は同級生の女の子二人が漫画を描き始める青春映画。皮肉屋で一途な藤野と抜群の画力を持つ引きこもりの京本。小学生で出

人が変わるなんて、薬味を1回頼むくらいのこと

僕はアフリカはウガンダと日本を行き来する仕事をしている。ひと月半おきに日本とウガンダを往復し始めてもうすぐ3年。 とはいってもウガンダはまだまだ謎だらけだ。一つ知れば、二つ謎が増える。 でも、最近ささやかな嬉しいことがあった。 苦手だった食べ物を一つ克服したのである。 それはシアバターだ。 まず「食べるの?」って話ですが、はい、食べるのです。 僕の好きなデンゴーというウガンダ料理がある。豆(ササゲ)のペーストで、ポタージュのように濃厚。大体どこのローカル食堂にもある人気

【おすすめ本】悪役と悪と悪いやつ(伊坂幸太郎/マリアビートル)

今週もこんにちは。ぶじに帰国しました🛩️ 暑いですね・・・ 今日の一冊は伊坂幸太郎さんの「マリアビートル」。東北新幹線に乗り合わせた殺し屋たちの運命が交錯する群像劇。2022年にはブラッド・ピット主演(!)でハリウッド映画化されています。 ▼▼今回の本▼▼ 伊坂作品の白眉といえる本書は緻密な展開や掛け合いの楽しさは言わずもがな、登場するキャラクターが素敵です。一言でいえば、全員悪いやつ! 機関車トーマスに詳しい殺し屋「檸檬」、他人を操り絶望させることに快感を覚える中学

マイホームは円い家|ウガンダ生活

今週もこんにちは。今日は移動日です🚗 アチョリ地域の円い家(ハット) 僕が今いるのは、ウガンダ北部アチョリ地域。初めてここに来た時、まず日本との違いを感じたのが「家」でした。藁葺き屋根の円い家。未知というより、小学生の頃に訪れた博物館みたいだと思ったのを覚えています。今週はそんな丸い家の話。 円い家(ハット)の間は写真のように近接していますが、じつは、一軒に一家族が住んでいるわけではありません。一家族がいくつもハットを持っていて、台所や寝室、物置きなど用途別に分けられて

国際電話で美容院を予約する

2024年7月8日(月) 朝の通勤路でマンダジ(1個約20円)をたまに買う。マンダジは小麦粉を練って揚げた揚げパンのこと。自転車のお兄さんが朝、バケツに詰めて売り歩いている。 先週のマンダジは揚げたてですごく美味しかった。でも、今日のは、同じ人から買ったのに、冷え切ってカチカチだった! なんでー! 同僚にそれを話したら、当日の朝に揚げる場合と、昨日の残り物の場合が両方あるそうだ。当日の揚げパンはバケツの上よりも下のほうにあると言う。今度から買う時はバケツの下にある揚げパン

【おすすめ本】きみの空に一匹の猫がいて(大江健三郎/空の怪物アグイー)

今週もこんにちは。ウガンダ出張もあと二週間ほどです🇺🇬 このマガジンは同じ作家は二度取り上げないぞと勝手に思ってきたのですが、今回それを破ります。最近読んですごく良かった話があって、人に勧めたくなってしまったので。それは大江健三郎の短篇「空の怪物アグイー」です。 ▼▼今回の本(収録されている本)▼▼ この話、元々気になっていました。近藤聡乃さんの「A子さんの恋人」という漫画に出てきたからです。(「A子さんの恋人」は改めて紹介したい大好きな作品なので気になる方はぜひ。7巻

葉物野菜ばんざい|ウガンダ生活

今週もこんにちは。祖父から名古屋は梅雨の只中と聞きました。みなさんの住む場所はいかがですか。 今来ているウガンダはアチョリ地域。アチョリ料理が薄味でおいしいんだよという話をあちこちでしてますが、日々の献立に欠かせないのが葉物野菜です。日本だとキャベツにレタス、ほうれんそうに白菜などですが、ここではこんな感じ。 ボー(Boo) マメ科植物の葉っぱです。葉っぱ自体の味はクセがないですが、日干しで乾燥させすぎると苦くなるそう。アチョリではポピュラーな野菜のひとつで、農家が庭先

【おすすめ本】ひとの数だけ歴史はあるの?(バスケス/コスタグアナ秘史)

今週もこんにちは。早くに目が覚めてしまいました🥱ウガンダは朝の5時・・・ 「歴史は勝者が作る」と言われます。歴史は中立ではなく、起きたことを書き残せるのは勝者だけだということ。理屈は分かるけど、「どういうこと?」と聞かれたら答えに詰まってしまいそうです。 コロンビアの作家ファン・ガブリエル・バスケス(1973-)は現代南米文学の旗手として知られます。彼の「コスタグアナ秘史」はそんな歴史のゆがみを「作家に名作のネタを提供した一般人」を主人公に描いた長編小説です。 ▼▼今回

ウガンダのソウルフードはロレックス

2024.06.10 月 前回の出張で、お土産にボールペンを持ってきたら、ウガンダ人の同僚には青色が圧倒的人気で赤色が余ってしまったと日記に書いた。(ボールペンは基本的に何本あっても困らないし、日用品だし、日本で安く品質の良いモノが買えるのでお土産に重宝する。ウガンダでは通常の筆記は青や黒だ。赤ペンはマイナーなのでみんな欲しがらなかった) 残り物の赤ペンになってしまった同僚に前回申し訳なかったので、今回は同じ黒の同じペンを全員に買ってきた。10名の同僚に10本の黒ペン。これ