Netflixのアンケートに見る、ブランドプロモーション効果検証の極意
2020年正月のマーケティングトピックは、Netflix一色と言ってもいい盛り上がりよう。特に、元日の新聞広告インパクト・Twitterプロモーションの細やかさが話題です。
一方、マーケティング担当者としては、投資と稼働がかかっているこのブランドプロモーションが、どのように効果検証されているのか!?も押さえておきたいところ。
そこでこの記事では、元日付近に実施されていたNetflixのTwitterSurveysアンケートをお手本に、大がかりなブランドプロモーションを検証する調査方法を紹介します。
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※Netflixのサービスモデル・年末年始プロモーション・ROIシュミレーションは、マーケティングトレース主宰者・黒澤さんの記事が網羅的なので、参照してください。
Netflixの新聞広告は、どれだけマーケティング成果につながったのかを考えてみる|黒澤 友貴/ブランディングテクノロジー
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TwitterSurveysアンケートは、全体で6問と少ない設問構成です。でもNetflixは効果検証に必要な項目を見事に網羅しており、順番も的確なので、とても参考になります。
6問は一見個別の質問のように見えますが、調査テーマ的には、3つのパートから成り立っています。以下のパートで個別に質問とねらいどころを解説していきましょう。
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▼ ①次回利用意向
1~2問目はユーザーエンゲージメントを検証する項目になっています。
1問目の次回利用意向は、アンケートの中でも近年注目度が上がっている質問です。従来は利用率や満足度といったその時点での回答者ステータスを測定する構成が一般的でしたが、近年は利用意向・継続意向といった、「次回も選ばれ続けるか」を測定する質問を入れる動きがメジャーになってきています。
特に今回のように、ブランドサービスが群雄割拠していて、ブランドスイッチが容易に起こり得る業態の場合、「動画のサブスクサービスにおいて自社ブランドサービスが次回も選ばれ続けるかどうか?」を測定することは、出てくる全質問のうち最も重要な意味合いを持っています。
配信の関係でノンユーザーを選別していないので、未利用者にとっては「次回」を「初めて」に読み替える必要はありますが、サービス経験値が濃く問われる「満足度」「NPS」の指標よりも、広くウェブユーザーに当てはまる次回利用意向はGoodな質問チョイスと言えます。
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▼ ②好意度
好意度は、ヒトでいうと「人柄」とか「個性」に置き換えられるもので、サービス全体の印象を計るために使われます。分析時には、「好意度の値が高い→ユーザーにとって好ましいブランド→より多くの人にリーチできる」という考え方をします。
取り扱う6問の中でも非常に定性的な項目なのですが、好意度はブランドパワーで押していく時に有効です。というのもの、大々的なキャンペーンを張ると大量加入・大量解約が出やすく、定量データの方も安定した分析を行いにくくなるからです。
ですので、今回は質問数の制約上、総合的な好意度を取るのみですが、好意度の要因をさらに細かく取得すると、「より多くの人にリーチできるドライバー」がさらに具体的に見えていきます。仮に規模の経済で負けていても勝つ見込みを持てます。
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▼ ③ハッシュタグ名称認知
今回のブランドプロモーションでは、広告メディアごとにあえてメッセージングを変えていることもポイントです。
新聞広告→「Netflixでも行く?定額見放題だし!」
交通広告→「聞いて驚くな。実家は意外とやることないぞ。」
看板広告→「12.31、嵐」
メディアターゲットに合わせた展開になっており、それぞれがインパクトのある広告として評価されています。
3問目の質問冒頭に出てくる「#ネ正月」は、広告展開のうち、Twitterプロモーションでよく使われていたハッシュタグです。新聞広告から誘導するハッシュタグとしても使われており、3問目はこの名称認知を問う質問になっています。
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▼ ④サービス名称認知
今回の設計では4問目にして定番のサービス名称認知が出てきます。
この質問は、純粋に(年末以来プロモーションを投下している)Twitter上でのサービス名称認知を計ると共に、前問のハッシュタグ名称認知がピンポイントな質問なので、そのバックアップ的な要因も兼ねてこの位置に入っているものと思われます。
質問の順番は、ハッシュタグ名称認知→(Twitter上での)サービス名称認知となっており、前問回答のバイアスがかからないよう設計されているのも工夫されている点です。
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▼ ⑤現在の利用ステータス
5問目は単純にNetflixの現在利用ステータスを、はい・いいえで問うもの。名称認知を問う4問目同様、サンプル調査方式でサービスの利用率を計る位置づけに加え、この質問は他の質問結果とかけ合わせて傾向を見る時のキーになります。
このアンケート全体は、広告実施による接触者の態度変容を見る「広告効果測定」という大テーマの中の、「ブランドリフト調査」にあたります。ブランドリフト調査では、広告接触者と非接触者を比較して上昇要因を探るものになります。
今回のアンケートを見る限りでは、広告接触者と非接触者という区分けはしていないものの、この「現在の利用ステータス」が回答結果を比較していく時の軸になっていくことは間違いありません。
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▼ ⑥性年代属性
最終6問目は、アンケート定番の性年代属性ステータス。選択肢の並びは見たまんまなのですが、少ない選択数の中で、サービスモデルを意識して的確に選択肢区分を設けている点が見逃せません。
Netflixには人気作品の中に「What's Hot? 2019」トップタイトルになっている『全裸監督』などの大人向けのタイトルもあるので、20歳を境目とするよりも「18歳以下」の方が的確に分析ができます。
また、交通広告内に「実家」の表現が出てきていますが、家族・子どもがいて実家を意識する年齢が35歳付近からなので、暮らしが変化する「35歳以上」のくくりもユーザー分析に役立ちそうです。
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▼ まとめ
記事の冒頭に、6問は一見個別の質問のように見えて、調査的には3つのパートから成り立っていることを予告していました。まとめると以下のような構成になります。
<Netflixのブランドリフト調査>
1.エンゲージメント パート
①次回利用意向
②好意度
2.認知率・利用率 パート
③ハッシュタグ名称認知
④サービス名称認知
⑤現在の利用ステータス
3.回答者属性 パート
⑥性年代属性
アンケートはたった6問なのですが、この6問がブランドプロモーションの効果検証に重要な役割を果たしており、洗練された6問であることがよくわかります。
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ブランドプロモーションの検証って面白そう!
広告効果測定についてもっと学習してみたい!
そう思っていただいた方向けに、私が10月末に出版した書籍『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』(明日香出版社)の中で執筆したガイダンス部分を張っておきますね。よかったら併せてご覧ください。
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