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パニック障害・PTSD症状改善のための治療アプリ&デバイス "Freespira" のシリーズE資金調達!【4/15発表: 米国デジタルヘルスニュース】

今回ご紹介する米国スタートアップであるFreespiraは、パニック障害やPTSD* の治療を目的とした、薬を使わない治療法を提供している会社です。2008年創業の米国企業です。

患者さんの呼吸パターンの調整を通して症状の改善を図ります。同社製品はアプリとデバイスの両方で構成されており、パニック障害やPTSDの症状を軽減または解消することが証明されている、唯一FDAクリアランスを取得した治療法(米国の規制当局の審査をクリアした治療法)です。

*PTSDについて:
PTSD(Post Traumatic Stress Disorder: 心的外傷後ストレス障害)は、死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態です。PTSDは決して珍しいものではなく、精神医療においては「ありふれた」病気のひとつであると言えます。

出典:『こころの情報サイト』(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター作成)

投資家の顔ぶれなど、今回の資金調達の詳細は分からないのですが、ラウンドとしてはシリーズEラウンドになり、$22.6Mの資金調達を行ったそうです。ちなみに、前回ラウンドでは2020年に有名投資家・VCであるLightspeed Venture Partnersがリードを務めています。前回から約4年を経ての資金調達のようです。


About "Freespira"

:米国
創立年:2008年
資金調達ラウンド:シリーズE
主な投資家:今回ラウンドは不明。前回ラウンドではLightspeed Venture Partnersなどが出資している。
総調達金額:約 $48M
サービス:パニック障害・PTSD症状改善のための治療アプリ&デバイス
事業モデル:B2B2C - Health Plan(民間の健康保険会社), Employer (雇用主)を介して患者さんに届けるモデル


米国におけるパニック障害・PTSDの課題

胸痛、息切れ、不眠・悪夢、そして辛い記憶のフラッシュバックなどがパニック障害やPTSDの主な症状です。これら症状は非常に苦痛で日常生活に支障をきたす可能性があります。米国では退役軍人の方にこの症状を抱えて苦しむ方が多く、同社もこのよう元軍人の方にも製品を届けています。

パニック障害・PTSDの主な症状の一覧

また、パニック障害を抱える患者さんの98%は、大うつ病、不安障害、アルコール使用障害(アルコールへの依存症状)などのメンタルヘルス等を併発しているとのことです。そして、成人および10代の若者の13.6%は、パニック障害とPTSDの両方 を併発しており苦しんでいます。これらの症状は複雑に絡み合い、管理が特に困難になることがあります。

また、医療費の観点では、年間の患者一人当たりの平均医療費が$4,000と言われているようですが、パニック障害を抱える方の医療費はその倍以上の$9,325、PTSDの場合は4~6倍以上の医療費になるとのことです。医療費を負担する患者さんだけでなく、医療費の拠出を抑えたい保険会社や雇用主にとっても大きな課題になっています。

年間の患者一人当たりの平均医療費。一番左がパニック障害とPTSDがない方の医療費。それに比べて、パニック障害がある方の医療費(左から2つ目)、軍人ではない一般の方と元軍人の方のPTSDがある場合の医療費(左から3つ目と4つ目)


サービス概要

従来の治療法といえば薬物療法やカウンセリングが主な選択肢になっています。そんな中、同製品はFDAクリアランス取得済みの、投薬不要のデジタル治療アプリ兼デバイスであり、新たな治療選択肢として追加されることになりました。

28 日間の在宅治療期間を通じて、患者さんに適切な呼吸パターンになるようトレーニングを実施していただくことで、パニック障害や PTSD の症状を改善させます。パニック障害や PTSDでは、二酸化炭素 (CO2)に過敏に反応してしまい呼吸が乱れることが多いそうです。同製品の利用中に呼吸方法についてのリアルタイムなフィードバックを患者さんに共有しトレーニングを積んでいただくことで、呼吸数と呼気CO2 レベルを調節し、症状の改善を図ります。

呼吸を検知するセンサー、タブレット端末、そしてアプリで製品は構成されている。

同社製品の利用方法は以下の通りです。

  • 1 日 2 回の 17 分間のトレーニングを実施。

  • 同社製品に含まれている小型の呼吸センサーが患者さんの呼吸パターンを測定し、その場でリアルタイムにフィードバックを返して呼吸トレーニングを支援。

  • コーチ(医学的な診断・治療の指導などは行わない)による毎週のオンラインチェック。

Freespira は、医師やセラピストの診察を必要としない、自宅で手軽にできる治療法です。開始するには医師やセラピストの診察は不要で、適性を判断するための簡単な臨床評価のみが必要になるだけだそうです。

臨床効果

主な同社製品の28日間の治療プログラムでは、なんと75%の患者さんがプログラムを継続できたという報告があります。また、治療後、患者の3分の2以上が症状の著しい改善を経験しています。さらに、治療完了時には86%の患者さんがパニック発作を抑えることに成功し、そのうち73%の方が12ヶ月後もパニック発作を起こすことなく日常生活を送ることができているとのことです。

但し、こちらの民間保険会社のレポートによると、試験はSingle Arm試験であることや追跡調査で正確にデータが拾えていないことなどを指摘しているため注意が必要です。

医療費の削減効果

同社製品の治療プログラムは、患者さんの医療費を大幅に削減する可能性を秘めています。具体的には、以下の効果が期待できます。

  • 救急部門利用費の65%削減

  • 薬剤費の68%削減

  • 総医療費の38%削減

医療費削減効果

これらの数値は、患者さんの症状を改善し、医療機関への依存度を減らすことで、医療費全体を削減できることを示しています。

最後に

Freespiraは、パニック障害とPTSDに苦しむ人々にとって、新たな希望の光となる可能性を秘めています。薬を使わずに、安全かつ効果的に症状を改善できるという、従来の治療法とは異なるアプローチを提供します。

このような新たな治療選択肢がより増えることで、患者さんやその他の医療におけるステークホルダーの方々の様々な課題の解決に繋がればと思います。

おしまい。

※このブログ記事は、個人的な趣味で書いているものであり、あくまでも情報シェアのみを目的としています。

参考記事

https://www.bluecrossma.org/medical-policies/sites/g/files/csphws2091/files/acquiadam-assets/090%20Digital%20Health%20Technologies%20Therapeutic%20Applications.pdf

参考;前回記事


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