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インターンや副業で得たWebライティングの経験やSEOの知識は、マーケティング業務には役に立たない?

採用の面接をしていると時折「インターン時代には(あるいは、副業として)、Webライティングを行っていました」「SEOの要件通りにコンテンツを作成してSEO知識を学んできました」「それらを通じてマーケティングに興味があったので、きっとその時の経験が生きると思って応募しました」と話していただく方がいらっしゃいます。

似たような話に「SNSのアカウントを担当してまして、フォロワー数を半年でこれだけ増やしました!その経験が生きると思い応募しました!」「ブログを作ってアフィリエイトをやっていました」という方も結構いらっしゃいます。

ただ、はっきり言います。
まず役に立ちません。

たしかに、Webコンテンツの制作やそれらのコンテンツを狙った検索ワードで検索したときに上位表示させるといったSEOテクニックは、相当な広義でいえばマーケティング施策の一つであると言えます。
ただ、それができたからといって、企業のマーケティング戦略立案が出来るか?、企業の広告業務を担当できるのか?といえば、それは全く別物です。
SNSアカウントの認知拡大やアフィリエイトも同じです。

これ、なぜかというと、Webコンテンツの制作(ライティングや動画作成)やSEO施策、SNSアカウントの運用、アフィリエイトというのは、企業から見ると施策実行の最終段階なんですね。
担当された方は、「こういう風に書いてください」「こんな風に動画作ってください」といわれて指示されたとおりに制作を行っており、その制作物を納品しチェックを受けて受領としていたかと思います。時には「この部分をこういう風に修正してください」と指示されたこともあるでしょう。

つまりは、すでに方針や内容が定まった施策に合わせて、言われたとおり(指示通り、決められた通り)に制作作業をしたにすぎないんですね。

一方、マーケティングの全体像というのは、例えばこんな感じです。

出所:進藤美希「デジタルマーケティング大全」白桃書房(2023)

これは、時々「全体像はこんな感じなんだよ〜」と言うことで使わせていただいている図になります。詳しくは専門書に説明を譲りますが、マーケティングというのは、今売り出していこうとする商品やサービスがどんな社会環境におかれていて、どんな消費者がいて、どんな競業商品やサービスがあって、その中でどんな戦略で販売計画を立てていけば良いか?みたいなことをトータルで考えていくんですね。

で、上記の方の担当したWebコンテンツの制作(ライティングや動画の作成)というのは、上の図で言う環境分析から競争戦略、マーケティングミックスまでを多くの人がいろいろなデータや調査、分析手法をつかって長い長い時間をかけて検討してきた結果として行うことになったたくさんのプロモーション(販売促進)活動の、そのまた一つの施策として実施するに至った業務の一部なんですね。
いろいろなことを検討し尽くすだけし尽くして、最後に残った実施段階の施策です。

なので、その最終段階であるWebライティングの経験がマーケティングの仕事の全体を考えていくときに役に立つかと言えば、一枚の葉だけ見て幹や根を判断することができないようにとても難しいとおもいます。

その施策の前提となる上位概念のマーケティングミックスの価格戦略や流通戦略の立案に役に立つかと言えばやっぱりそんなこともありません。
ましてやさらなる上位の市場環境分析に使えるかと言えば、それは全く別の次元のことになります。

マーケティングに関わってきている人間としては、施策の業務を通じてマーケティング全体に興味を持っていただくことは非常に嬉しくありがたいのですが、是非とも興味を持ったら、その全体像はどうなっているんだろうか?ということを調べたり、学んだりしていただきたいのです。

つまり、何らのコンテンツ制作を行ったことがあるのであれば、

・なぜこのコンテンツを制作するに至ったのだろう。
・このコンテンツを読んでもらう対象者は、なぜ今回の人達に決まったのだろう。
・なぜSEOの検索ワードは今回のキーワードに決まったのだろう?この検索ワードを検索する人というのはどのような人だろう。
・今書いているコンテンツを通じて広告主は、消費者に何をメッセージとして伝えたいのだろう。
・そのメッセージを伝えることによって、広告主は社会にどのような影響力を及ぼしたいのだろう。
・自分の担当している業務以外のところでどのようなマーケティング施策が行われているのだろう?

と、なぜ、なぜ、なぜを繰り返しながら自分の担当業務をどんどんさかのぼっていただきたいのです。

実は、自分の担当業務をどんどんとさかのぼっていくことが、興味対象の全体像を明らかにしていくことであり、今やっている業務に対する興味からより広く知見を広げていくということに他なりません。

そうすると、より広い業務を行っていくためには今行っている業務から派生したどんな知識が必要なのか?どんなことを学んでいく必要があるのか、といったところが自然と明らかになってきます。

興味が出てきたのであれば、是非より広い知識を調べたり学んでみてから、自分が仕事としてやっていくに相応しいものかどうかを判断していただきたいなと思うのです。

ところがそこまで調べないうちに応募される方がいて、いつもとってももったいないなぁと思っています。事前に学んでいないので、マーケティングという仕事はどういう仕事なのか、どんな領域のことをやっていくのかについての理解をしていませんし、マーケティング業務に必要と思われるロジカルシンキングやデータ取扱の基本的な考え方、フレームワーク、プレゼンテーション力の事を面接で伺っても何も答えられないのですから。

余談)
とはいえ「役に立ちますよ!」といって採用に繋がるところもあるかとは思います。でも、そこではマーケティング業務を行っているのではなく、これからもずっと指示された内容のコンテンツをずっと作り続ける(ずっとWebライティングの仕事を続ける)という便利な手数の一つになってしまうのではないでしょうか。



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