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祐徳稲荷神社 地獄の参道

「それなら、途中にある祐徳稲荷神社(ゆうとくいなりじんじゃ)に行きたい」。佐賀県の太良町へ竹崎カキの取材に行くというボクに、妻がそう言った。

妻は、少し前から「祐徳さんに行かないと」とこぼしていた。

祐徳稲荷神社は、佐賀県鹿島市にある日本三大稲荷のひとつだ(ほかは伏見稲荷大社と笠間稲荷神社)。まあ鹿島市なんて言っても九州の人間以外にはピンとこないだろうから、有明海の北西の方にある街と思ってください。

取材に行く太良町はその鹿島市から南に位置するため、通りすがりに寄ることに何も問題はない。待ち合わせの時間が先方の希望で14時過ぎからだったのも都合が良かった。

そういうわけで、祐徳稲荷神社へとやってきた。ここに来るのは、たぶん初めてだ。

駐車場から神社までの道のりは商店街があるとのことだったが、その多くはシャッターで閉まっていた。出店も開いておらず、どうやら平日にきてもあまり賑わっていないようだった。

とは言えすべてのお店が閉まってるというわけではなく、神社まわりの土産店は盛況だった。「よしよし帰りに寄ってやるぞ」と思いながら、まずは神社へと向かった。

なんでも、この祐徳稲荷神社は山の上に御本殿が建てられているらしい。

そこで足が弱い人のために、なんと神社なのにエレベーターが設置してあるのだ。ちょっとハイテクな神社だ。

ただ、エレベーターもタダというわけではない。往復で300円かかる。

どうしようかと悩んだが、なんとこのエレベーターのチケットはおみくじ付きになっており、300円払うだけでおみくじまでひけてしまうお得なチケットだった。ここのお稲荷さんは商売がうまい。

早速エレベーターに乗り込みおみくじを見ると、嬉しいことに大吉。初めて来たお狐さんにこんなに良くされるとちょっと後が怖いなあと思いつつ、御本殿へと向かう。

そして御本殿でのお参りもすみ、これでおわりかなと思ったらじつは奥の院というものがあるそうだ。御本殿からは石段を登って行くという。

参道には、多数の鳥居が建っていた。

さぞ、夜に来たら怖いだろうな。とはいえ今はお昼なので何も怖いことはない。スイスイと登っていった。怖いものはボクの体力だけだ。

奥の院まで残り200メートルと言う標識が見えるとともに、ここまで登りだった参道が降りに変わった。

それならもう少し緩やかな坂道にしてくれてもよかったんじゃないか。などと思っていると、その先には地獄が待っていた。

今までの道はコンクリートで舗装した「道」だったが、下りが終わったところからはただの石を積んだだけの酷道になったのだ。

その石段も真っ平らではなく、ただ本当に石を積んだだけ。少しでもバランスを崩すと、そのままとがった石とゴツンとキスをすることになる。そんな詰み方だ。おもてなしなどナシ。

そんな道がこれから200メートルも続くのだ。ここの神様は随分と手厳しい。

酷道に負けじとお堂を見つけては参っていたが、何十枚と持ってきたお賽銭もここにきていよいよ乏しくなってきた。そこで、残り150メートルくらいからは奥の院への到着を優先することにした。

ヒイヒイと苦しいあえぎ声を出し、休憩も入れつつ何とかして頂上まで辿り着いた。

ここにベンチがあって本当によかった。このベンチを持ってきた人にお賽銭をあげたい。

こうして奥の院でのお参りも終わり、休憩もしてさあ帰ろうかと気合を入れたところ、行きとは別の参道を見つけてしまった。しかも看板には「この先難所あり」だ。

今歩いてきた参道ですら完全に難所だったのに、さらなる難所とは何なんだろうか。まあバカなボクは大丈夫だろうと思ってこちらの道を選んだのだが、本当にバカだった。

別ルートは最初の方は危ないところに手すりや鎖なども設置してあったが、途中からそんなものは消え失せ、さらに雨は降っていないのに地面も濡れているようになった。「地面」と書いているが正しくは石だ。だからかなり滑る。本当に難所だった。危なすぎたのでここで写真は撮っていない。

ちょっとしたお参りのはずが命を危険に晒すようなことになってしまった。それでもようやく行きの参道へ合流するルートを見つけて進むと、なんとそこでは竹の杖が出迎えてくれた。

最初にこれを見逃さなければこんな苦労はなかったんじゃないか、とガックリ。

まあこうなってはしょうがないと、ちょうどボクらと同じように杖に気付かず登って行こうとするご夫婦を見かけたので、声をかけて徳を積んでおいた。これで次回はもう少し楽にお参りできるといいのだけれど。

そうそう、この祐徳稲荷神社では「玉みくじ」と言う珍しいおみくじがある。

木箱の中に入っている玉を引き、そこに書いてある番号の棚からおみくじがもらえるのだ。

ちなみにボクが引いたおみくじは中吉の「乙亥(きのとい)」だった。

「あなたの運は揚子江の波風が徐々におさまっていくようなものである」。はてさてこれは良い内容なのか、悪い内容なのか……。


以下、有料部分にはパノラマ写真を掲載。

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