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腹式呼吸と呼吸筋の関係とは

腹式呼吸は歌唱の基本です。前回2つの異なる呼吸法について記述しましたが、今回は「ドイツ式」の腹式呼吸を掘り下げたいと思います。

さて、こんな言葉を聞いた事ありませんか?
「お腹に空気を入れて」
あれれ?何かおかしいと思いませんか?お腹?空気?入れる?
当たり前の事ですが、空気は肺に取り込まれるのであってお腹には入りません。お腹にあるのは腸に溜まったガスで下品に言うと放屁(オナラ)です。放屁ではもちろん歌になりませんし、喜ぶとしたら小さな子供くらいなものです。
お腹に空気を入れてという表現(イメージ)は間違いとは言えませんが、適切ではないとぼくは考えます。
それでは「腹式呼吸」とは逆の呼吸法はなんでしょうか?読者の皆さんは答えはもうお解りですね。
「胸式呼吸」です。
それでは実際にやってみてましょう。
まず、ゆっくり深呼吸してみましょう。胸郭が広がって肩が上がりますよね。その時に息を止めて下さい。その状態では喉で息を止めていて発声するのも喋る事さえ辛いと思います。腹式呼吸が未熟だとこの様に呼吸を喉でコントロールする事になってしまい、その状態で発声すると喉に大きく負担がかかってしまいます。
そこで「腹式呼吸」の出番です。ヒトが呼吸をする際、横隔膜が下がって肺に空気を取り込みます。胸式呼吸も腹式呼吸も基本同じですが、腹式呼吸では呼吸筋をフルに活用します。これは前回記述した「イタリア式」も「ドイツ式」同様です。それでは呼吸筋とは何でしょう?

呼吸筋(こきゅうきん, 英語: Muscles of respiration)は、呼吸を行う筋肉の総称。すなわち、呼吸をするときに胸郭の拡大、収縮を行う筋肉のこと。種類としては、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋、胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋などがある。
正常安静呼吸では、吸気は主に横隔膜の収縮によって行われ、また外肋間筋も使用される。呼気は筋肉を用いず、伸展された肺の受動的反跳(ふくらんだ肺が自然にもとに戻ろうとする力)によって行われる。努力呼吸時には、吸気には胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋が、呼気には内肋間筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋といった呼吸補助筋が補助的に用いられる。
「呼吸筋」ウィキペディア日本語版 2017/9/11 18時(日本時間)より
URL : https://ja.m.wikipedia.org/wiki/呼吸筋

例えばトライアスロン選手や水泳選手などのアスリートはこの呼吸法を鍛えます。理由はお解りですね。

ここに記されている努力呼吸が腹式呼吸に最も近い呼吸法です。

なにか小難しいと感じるかも知れませんが、答えは至ってシンプルです。
簡単に言うと喉で息をコントロールするのではなく、ウエスト周りの筋肉(呼吸筋)で横隔膜を押し下げ、横隔膜を支えます。その時にお腹が膨らみます。何故かと言うと、横隔膜が押し下げられる事によって、内臓が潰されておへその少し下辺りが膨らみます。実際にやってみて下さい。呼吸筋で横隔膜を止めると喉で息を止めてないのが解るはずです。肺から空気が漏れないで喋る事も可能です。
前回の記事に記述した、凹ませながら吐く技術(イタリア式)もありますが、今回は「ドイツ式」です。
「イタリア式」の様に息を吐くとお腹が凹んでいくのではなく、できるだけ横隔膜を下げた状態をキープして息を吐きましょう。その時、歯の間から、一定の強さ、スピードで息を吐いて下さい。その感覚を身に付ける事によって強く息を吐く事ができると同時に息のコントロールが容易になります。その為には呼吸筋をしっかり鍛える必要がありますが、腹式呼吸の利点は息を喉でコントロールする事が減り喉の負担が軽減されます。

読者の皆さんは、歌を歌ってる時に最後のサビで疲れて歌えなくなった経験ありませんか?息を喉でコントロールすると声帯の周りの筋肉が疲れて声帯の閉鎖が弱くなって高音をなかなか出せなくなるのです。
腹式呼吸はすぐに身につくものでは決してありません。

まずは普段の生活で自分の呼吸を腹式呼吸に変えていくところから始めてみましょう。

#音楽 #コラム #歌 #腹式呼吸

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