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野菜に必要な養素とバランス

こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。

前回は野菜=植物の一部として、植物が生長するために必要な栄養素は何か?について、初級編、中級編と書き進めてきました。今回は上級編ということで、各栄養素の話と育てる野菜による肥料の与え方について書いていきたいと思います。

植物に必要な栄養素とは?~上級編~

人と同じで植物も全部の栄養素を大量に与えればよいというものではなく、それぞれの要素を「ちょうどいい」具合に与える必要があります。
特に植物では多量必須養素と呼ばれる栄養素の内、N,P,K,Caが重要です。
N(窒素):茎や葉を大きく、葉色を濃くするため、「葉肥(はごえ)」といわれます。
過剰に与えると病害虫にやられやすくなり、不足すると葉が黄色っぽく軟弱になります。
P(リン):おもに開花、結実を促進するため、「実肥(みごえ)」といわれます。
果菜類で多めにあげると花つき実つきがよくなります。
K(カリウム):根の生長を促進するため、「根肥(ねごえ)」といわれます。
果菜類、イモ類、マメ類は吸収量が多いため、しっかり与えます。ただしあればあるだけ吸収してしまう栄養素ため、与えるときには小出しにするのがよいとされています。                        
Ca(カルシウム・石灰):特に根の正常な発育に関わっています。Kが多い土壌だと吸収率が抑えられやすくなります。
となっています。

多量必須養素の他の養素は以下の通りです。
Mg(マグネシウム・苦土):葉緑素の成分で、様々な酵素の活性化を促進します。不足すると下の葉が枯れていき、Caと同じくKが過剰な土壌では吸収が抑えられます。
S(硫黄):たんぱく質、アミノ酸、ビタミンなどをつくっています。不足するとNと同じく軟弱になり、病気にかかりやすくなります。

また微量必須養素は基本的に土壌の天然ミネラルが供給源となっていて、役割は大きく分けて3つあります。
①光合成に必要:Fe/鉄、Mn/マンガン、Zn:亜鉛、Cu:銅、Cl:塩素
②酵素の成分として必要:Mo/モリブデン、Ni/ニッケル
③細胞の組織形成と維持に必要:B/ホウ素

図としてまとめると以下の通りです。

植物の必須要素まとめ

画像1

CO₂やO₂以外は土中にあって根から吸収されるものですが、
働く場所を示した方がわかりやすいと思ってこのような図にしました。

なおそれぞれの必須要素について詳しく知りたい方は、

農林水産省/環境保全型農業関連情報 要素の欠乏と過剰
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/siryo1.pdf
を見てみてください。

野菜による好みの環境

家庭菜園をするにあたって、養分不足で枯らすことだけは避けたいところです。
ヒトは人種によって栄養素の消化吸収力や病気のなりやすさが異なったり、時期によって追加で摂取する必要があったりといった違いがあります。
野菜も種類によって性質や養分がほしいタイミングが異なります。

・いつ養分が多く必要なのか
・どの養分が欠乏すると表(おもて)に出やすいか

資料を紹介したいと思います。
まず、いつ養分が必要なのかについては大きく3つのタイプに分かれます。(表1参照)
(1)スタートダッシュ型
生育期間が短くて茎や葉を収穫するものと、はじめに茎葉が生長してその後に収穫部が大きくなるものの2つのパターンがあります。これらは最初の土づくりの段階で必要な肥料を入れておきます。
(2)コンスタント型
茎葉を伸ばしながら収穫をするため、生育期間が長くなります。このようなタイプのものは少量ずつこまめに肥料切れにならないように様子を見ていく必要があります。
(3)ラストスパート型
葉ボケ、つるボケしやすいものは育成初期の段階では肥料を控えめにして、生育中期から後期に肥料を与えていきます。

なおそれぞれの中間に位置する野菜もあります。

表1 野菜の生育と肥料を施すタイミング

画像2

次に、どの養分が欠乏すると表(おもて)に出やすいかについては表2の通りです。
一覧ではマグネシウムが欠乏症を発症しやすいようにみえます。ただし土壌中にマグネシウムが不足しているときだけではなく、カリウムが過剰に吸収されマグネシウムの吸収率が落ちていることが原因となっているときもあります。

表2 作物別要素欠乏症発現の難易度一覧(一部抜粋)

画像3

その他、微量必須要素では土壌がアルカリ性だと吸収されにくくなったり、逆に酸性だと吸収しすぎて過剰障害になったりするものもあります。
ひとつの要素に極端に偏ることなく調和のとれた要素バランスを保つことが、収穫量を増やしたり質の良い野菜をつくったりするために大切であることがわかります。

次回はいよいよ土づくりの話に移っていきたいと思います。

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≪参考文献≫
一般財団法人 日本土壌協会・監修 「図解でよくわかる 土・肥料のきほん」、2014
加藤 哲郎 著 土壌と肥料の基礎知識、2012

≪参考資料≫
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/siryo1.pdf
農林水産省/環境保全型農業関連情報 要素の欠乏と過剰

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