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土壌診断と野菜に適した土づくり

こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。

先日は、地力を高める3つのポイント(物理性、化学性、生物性)について書いてきました。
今回はその内、家庭菜園者でも簡単に計測できる方法がある化学性について考えていきたいと思います。

土壌の化学性を評価する

土壌の改善目標が地力増進指針にあり様々な指標が書かれていますが、私は農業従事者ではなく家庭菜園を楽しむ人なので、簡単にできて、かつ改善方法が見つかるようなもので土を調べてみたい、と考えていました。
詳細な土壌分析をするためには専門機関に委託して行いますが、家庭菜園で日常的に計るとよいとされているのが、pH(酸性度)電気伝導度(EC)です。人の健康診断に照らし合わせると、pHは体温、電気伝導度は血圧のようなイメージです。

図1 普通畑の基本的な改善目標

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農林水産省/地力増進基本指針より
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_dozyo/pdf/chi4.pdf

自分の畑は改善目標と比べてどうなんだろうか?ということで、さっそく「農大式簡易土壌診断みどりくん」と「EC(電気伝導度)計」を使って調べてみました。

農大式簡易土壌診断みどりくんについて
https://tsutinokai.co.jp/soil/diagnosis/midorikun-diagnosis-kit/

その結果、
pH=6.5~7.0ほど、EC=0.1mS(正確には0.136mS)でした。
私の畑は低地にありますので、pHは6.0~6.5、EC(電気伝導度)は0.3mS以下が目標となります。
そこから考えると、pHは少し高め、ECは0.1mSが下限となることが多いので少し低めかな?という状況です。
図3ではpHやECの高低によるコメントと対策が示されています。

図2 Tany.の畑のpH試験の結果

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図3 pH及びECによる施設土壌の類型と改良対策

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ただし私が野菜を育てている畑では有機無農薬栽培ルールがあり化学肥料等は使用できませんので、有機質の資材に変換していきます。
図3の点線囲みの通り、塩基成分が多いことと、窒素が少ないことが土質の課題として挙がります。
ここで念のため植物の三大栄養素、N(硝酸態窒素)、K(水溶性カリウム)、P(水溶性リン酸)を再び「みどりくん」を使って計ってみました。

すると窒素はないに等しいくらいの結果でした。カリウムは程よい感じですが、リンは過剰方面に振り切りました。窒素は茎や葉を大きくするもの、リンは開花、結実を促進するものです。今育てているスナップエンドウが、背丈が低いにもかかわらず花をたくさん咲かせている理由はこれか!と結果を見て納得しました。(図4~6)

図4 Tany.の畑の硝酸態窒素

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図5 Tany.の畑の水溶性カリウム

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図6 Tany.の畑の水溶性リン酸

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塩基成分が多くなった原因については自覚があります。
畑をしているとどうしても酸性に傾いてくるので、それを弱酸性に戻すために石灰(運動会の時によく見る白い線を引く粉)を撒くのですが、撒きすぎた、ということです。これについては雨が降ったり、水やりを多めにしたりすると溶けて流れていくということでしたが、もっと積極的にやろうと思った結果、木酢液を散布することにしました。
木酢液は木炭を作る際に発生する煙を冷却して液体にしたもので、土壌を酸性側に補正していくのと同時に、害虫の予防や土壌中の微生物の活性化など、土壌の物理性や生物性を高めるのにも役立ちそうです。
燻製のような香りがします。
次に窒素が少ない問題ですが、これは油かすを施肥基準に従って撒くことにしました。
ひとまずこれでpHとECの補正が進みました。

作る野菜によって調整する

ここまではあくまで基準となる値に向かうような土づくりの話でしたが、実際は野菜によって土壌環境の好みがあります。
どんな野菜を植えたいかによって、それに合わせた土づくりが必要となります。
それにあたって参考となる資料がありましたので紹介します。(図7~8)

例えば私がこれから作りたいと思っている野菜は、
トウモロコシ、ナス、カボチャ、ニンジン、レタス、セロリ、サトイモ、エダマメ、オクラと、今育てているスナップエンドウとソラマメです。
該当するところをそれぞれ赤色点線で囲んでみました。
総合的にみてpHは6.2~6.3くらい、ECは0.4mSくらいになるように調整しようか、と考えています。

図7 野菜及び作物の品目別好適pH

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図8 土壌のECと作物生育の関係

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秋冬野菜については、今回の土づくりの結果(夏の収穫状況)を振り返って改めて考えていきたいと思います。

以上、参考になれば嬉しいです。

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≪参考文献≫
渡辺 和彦 他共著 環境・資源・健康を考えた土と施肥の新知識、2012
加藤 哲郎 監修 土壌・肥料の基本とつくり方・使い方、2017

≪参考資料≫
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_dozyo/pdf/chi4.pdf
農林水産省/地力増進基本指針

https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/siryo1.pdf
農林水産省/環境保全型農業関連情報 都道府県施肥基準等

https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070300/071400/ecofamar/shishin/mokuzi2.html
和歌山県/土壌肥料対策指針(改訂版)平成31年

https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/index-6.pdf
兵庫県/ひょうごの土づくり指針 平成30年

http://www.japan-soil.net/BOOKLET/H20_21_22.htm
一般財団法人 日本土壌協会 環境・土づくり関連冊子

https://tsutinokai.co.jp/soil/diagnosis/midorikun-diagnosis-kit/
農大式簡易土壌診断みどりくん

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