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いつでも自分に立ち返ることができる Kacey musgraves「Deeper Well」は私の今年の最高のセーフティーゾーン

本日からは、今年前半に好きだった音楽アルバムについて、何回か連続で感想を書いていきたいと思います。

noteにブログを書き始めた2020年(もう4年になるのか!)から、毎年上半期と下半期にベストアルバムを出してまとめていたのですが、今年(っていうか来年かな)にちょっとやってみたいことがありまして、今年はそのスタイルはいったん止めてみて。

まずは今年前半に大好きだった作品について1作1作、しっかりと感想を書こうかと。枚数なども特に決めず。
というわけで、早速この作品から始めたいと思います!

Kacey musgraves「Deeper Well」

アメリカのSSW、Kacey Musgravesの新作がリリースされたのは今年の3月。彼女の事は

2021年にこんなブログを書きましたが、私のミュージックライフの最高のミューズで、生きるに欠かせない存在の一人なんです。

そんな彼女の待望の新作なので、とても楽しみにしていましたが、今作も大好きすぎて、「ああ、やっぱりケイシーの事が大好き!」と改めて思いました。

今作「Deeper Well」は彼女の原点でもあるカントリーに立ち戻りながら、さらにもっと大きくジャンルを特定させない懐の広さを感じさせる、アコースティック感とナチュラルな音の魅力を最大限に追求したアルバムです。

もともと彼女のソングライティングの力と質の高さは

グラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞した「golden hour」で世界的に広く知られたと思いますが、そこから彼女なりの音の実験的な作品「Star-Crossed」を経て、

今作「Deeper Well」ではギターをはじめとする楽器の生音と電子音のバランスと美しさを極限まで追求したかのような音の上質さ、そこにケイシーにしかない曲の素晴らしさと声の力を合わせて、とても美しいアルバムに仕上がっています。

2曲目の「Deeper Well」はこのアルバムのシングルとして選ばれた表題曲。

いきなりSaturn(土星)から始まっちゃうんですけど(笑)、ここでは自分の人生を振り返りながら、そこで学んできたことを踏まえて、これから自分の道をどう進んでいこうかという曲で、彼女の本質をよく表している曲だと思います。

「ダークなエナジーを持っているあなたとは離れて私は自分を大切にする」

優しい曲調ながらしっかりと歌う彼女の声に惹かれます。

「Too Good to be True」も今回のアルバムでMVが作られた曲。

前作では全曲にMVを制作し映画のようにしていたのとは対照的に、今作はMV制作も控えめ、プロモーションも極力抑えたかのような中で選ばれたこの曲は「Deeper Well」よりもさらに穏やかな曲で、おそらくは恋愛相手ですが、「お互いを大事にすることを大切に、でもあまりにも真でいるために追求しすぎないで」と彼女らしくひねりを入れて歌っています。


「Giver / Taker」は彼女の得意なミディアムバラード。カントリーを根底にしたアレンジが、ケイシーの歌声をとても気持ちよく支えています。

「Sway」はとてもシンプルな軽やかな曲に、彼女の声を多重に重ねて声の広がりや深みを聴かせる1曲。まるで林や森の中にいるような1曲で、馬が走るような爽快感にも包まれます。

「The Architect」は彼女のキャリアでもポイントになりそうな曲。この曲もとても美しい曲です。シンプルなメロディの曲の中で、世界の美しさと共に起きている矛盾や悲しいことについて、問いかけるような曲。The Architectは神みたいな意味もあるのかな。


他にも、ソウルの影響も感じられるような「Lonely Millionaire」、ヨーデル歌唱を使った美しい「Heaven is」、ジブリ好きとして知られる彼女の視点が面白い「Anime Eyes」。

最後の曲は「Nothing to be Scared Of」(何も怖がらないで)と最高のメロディを持って歌いあげて終わります。

私が大好きな、アメリカの父子でいろんなアルバムをレビューするYouTuberチャンネル「turning the tables」でもこのアルバムが取り上げられていて、いつもはインドアで紹介しているところをこのアルバムは

森の中でリスニングして紹介している!


最高の聴き方ですね♪真似します! 

パパの方は途中で聴いているうちに泣いちゃってて、私と一緒やん!(笑)

このYouTubeチャンネルも人気の音楽レビューチャンネルなんですけど、もう女の子の方が1曲目から泣いてるんですよね。早い!私と一緒やん!(笑)男性の方はにっこにっこで踊ってたりしてたのに、「Deeper Well」でやっぱり泣いてて。その後ずっと二人とも泣きっぱなしなんですよ。私と一緒やん!(笑)

ここのところ、世界的に辛い状況が続いていて、時に精神的な重圧があったり、今年もいろんな音楽に出会えてとっても楽しい反面、昨今特にポップアーティストは自分に起きた出来事の詳細や心情を反映させる作品が前提で、話題にもなるしリアルの良さはあるけど、ちょっと息苦しさも感じたりするところもあって。

そんな時に、ちょうどケイシー自身のモードもあったのか、自分の芯はありながらも自分も相手も特定せずに、大きく誰にでもスッと浸透させることができるかのようなこの美しいアルバムが、私には今、本当に救いなんです。

最近のインディ女性アーティストは、ラナ・デル・レイをはじめ、結構陰の部分やいわゆる「sad girl(サッドガール)」と言われる悲しい曲を歌うアーティストが好まれている傾向があって、素敵な作品がたくさん発表されていますが。

これは個人的な好みですけど、私はどちらかというと陽の部分や穏やかで温かさを感じるような作品の方がやっぱり希望をもらえるし、憧れるんですよね。
ケイシーのこの歌声や作り出す曲の美しさや温かさは、私をいつも安心させてくれるし、今作はその一番ピュアな部分を絞りとったかのような極上のオリーブオイルみたいなアルバムで、美しいナチュラルな音のぬくもりに包まれているように感じられて、私にとって何か混乱したり疲弊したりするとこのアルバムを聴いて、いつでも自分の芯に立ち返ることができる作品で、「またしてもケイシーに感謝」って感じです。

このアルバムは「golden  hour」から一緒に曲制作をしているDaniel Tashianと Ian Fitchukとまた一緒に組んでいます。この三人、個人的には「ずーっと制作を続けてほしいな」と思っています。だって最高なんだもん。

Ian Fitchukは今年このMaggie Rogersの新しいアルバムでもPDを担当しています。マギーもどちらかというと陽の部分を感じさせてくれる力強さがどんどん増しているアーティストで、作品をリリースするごとに成長を感じます。
この作品も今までで一番いいアルバムだと思うし、私のお気に入りです。Ian Fitchukは個人的に、今年最高の仕事をしているPDの一人ですね。

日本が好きなことで知られるケイシー。今まで「golden  hour」ではフジロック&単独、「Star-Crossed」の時はサマソニで来日公演をしてくれています。
現在ワールドツアー中なので、この「Deeper Well」でも来日公演をしてくれないかと思っています。絶対行く!!!

よろしければ聴いてみてください♪

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