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お気に入りの女優兼脚本兼監督の3人について連載してみる ~サラ・ポーリー

ハリウッドやインディ系の映画界でここ数年の間にちょっとずつ増えてきているのが
 

俳優兼脚本兼監督の女性たち!

 
 
ざっと並べただけでも

 エリザベス・バンクス(「ピッチ・パーフェクト2」、「チャーリーズ・エンジェル」)


オリヴィア・ワイルド(「ブックスマート」、「ドント・ウォーリー、ダーリング」)

マギー・ギレンホール(「ロスト・ドーター」)


レベッカ・ホール(「パッシング」)

これだけの名前がざっと上がります。まだ1~2本の監督作だったりしますが、いずれも高評価を受けている作品を作っていて、この波はこれからまだまだ広がりそうです。
 
その中でも、以下の3人については恐らくご存知の方も多いのではないでしょうか。
 

サラ・ポーリー

グレタ・ガーヴィグ

マリエル・ヘラー


 作品が特に抜きんでた高評価を受けている3人で、私も女優としても監督としても大好きです。
今回はこの3人について、軽く連載をしてみたいと思います。
 
まずは!
 

サラ・ポーリー

プロフィール等はこちら


彼女については個人的に、この「女優兼脚本兼監督」というカテゴリ内にとどまらず、もう地球上にいる全映画監督の中でも抜きんでて好みの監督です。「彼女の作品で私の人生救われた」と言っても過言ではないくらいです。なので全然冷静な評ではないですし、ちょっと思い入れが強い内容にどうしてもなってしまうので、ご容赦ください(笑)。

サラ・ポーリーとの出会いは女優としての作品です。「GO」というティーンムービーから。懐かしいですね!この映画、「こんなにいろんな人が出てたっけ?」って今予告観ると思います(笑)。

もともとはカナダ出身で、この「スウィートヒアアフター」も当時のミニシアター系作品として静かな人気があった作品。アトム・エゴヤン監督の作品ですね。

女優としては日本ではこの作品が一番有名なのではないでしょうか。「死ぬまでにしたい10のこと」。確か2000年代のはじめあたりの作品で、とても人気があったのを覚えています。私もこの作品好きでした。マーク・ラファロも出てましたね。イザベル・コイシェという女性監督の作品で、

次の「あなたになら言える秘密のこと」も良かったです。

そんな感じで女優としてすっかり知名度がついていた彼女について、驚いたのが

「アウェイ・フロム・ハー」

 
 2006年にこの初監督作品「Away from Her」がアカデミー賞で主演女優賞候補になったのを知った時。当時、彼女くらいの若さで女優として人気がありながら、監督を務める人ってとても珍しかったと思います。女優だけじゃなくて俳優全体でも少なかったかも。
 
この作品がまた驚きの作品で、題材もさることながら人間の深層を描くようなとても面白い作品で、主演のジュリー・クリスティの演技もあって高評価を獲得します。サラがまだ20代後半ぐらいだったと思うのですが、「地味だけどなんだかベテラン感が漂うような人間ドラマの作品だ」と思ったのを覚えています。

「テイク・ディス・ワルツ」

2作目の「Take this waltz」は、これまた私が「一生ついていく」と決めている女優ミシェル・ウィリアムズを主演に、また絶妙に割り切れない女性の心理を描いた作品でした。
この作品、不倫が題材ということもあって、当時映画ファンの間ではとても好き嫌いが分かれていた印象で、私も大好きな女優が主演ではあるものの、映画自体については前作に比べるとキレがないような印象でした。ただ「アウェイ〜」からこの作品で

「甘い感覚の作品を撮る気は全く無さそう」

とはなんとなく感じてました。
 
そして

「物語る私たち」


この3作目である、ドキュメンタリー「物語る私たち」に出会います。ドキュメンタリー作品ということで、ますます驚きました。
しかも内容が非常にプライベートかつ不思議な作品でした。自分の出生にまつわる話ともう亡くなってしまった母を追うようなドキュメンタリー。

個人的にこの作品、私の人生を救ってくれたような作品でした。
これはこちら側の勝手な想いですが。この作品は私にとって本当に大切な作品となりました。

側から見たら「ちょっと変わった」自分の出生や家族についての話だけど。

私自身は幼い頃から両親の仲が悪く、私が10代後半の時から長年の別居の末に離婚したりして、自分の親についてなんともいえない悲しみや感情を抱いていたり。
けどもう自分が30代半ばくらいあたりで、その事とどう向き合うか、自分自身でこれからどう生きていったらいいか、「ちゃんと考えないとな」となんとなく思っていた時期でした。
ただ、はっきりとした方法や気持ちの持って行き方が分からないままで。自分でどうしたいのかもよく分からない状態でした。

そんな時にこの作品の公開があって。この作品、観る前はもっと感傷的な作品だと思っていたんです。けど、全然違いました。今まで撮ってきた彼女の作品に通じる、なんとも言えない感情を残す不思議なドキュメンタリーでした。

まだ幼くして亡くなった母と自分の出生について追いながら、自分が大切にしてきた父をはじめとした家族に語らせていきます。母の浮気相手にもズカズカとインタビューするサラ。
「本当の父」を探すようでいて、育ての父や兄姉とのやりとりに、観ている間なぜか涙が止まりませんでした。

母の姿を追いながら、サラが本当に描きたかったのは「真実なんてどうでもいい」ってことなのかな、と。亡くなった母はどうやっても戻ってきません。それよりも、目の前の愛する人と生きていくこと。そして、真実がどうあれ自分をどう受け入れていく事が大切なのではないか、と。

今までの彼女の作品同様に決して甘くない映画ですが、私自身の迷いや想いがなぜか不思議と受け入れてもらえたような感覚で。
それからは自分の親に対する変な愛憎やモヤモヤをちょっと手放せたような気になれました。
「ちゃんと一生一緒に生きていける人を探してみようかな」と、この作品を観てから思うようになり、それからしばらくして夫と出会えました。

サラはその後にNetflixで配信された海外ドラマ「またの名をグレイス」で脚本とプロデュースを務めています。カナダの人気女性作家マーガレット・アトウッドの本を映画化した作品。「侍女の物語」も映画化や「ハンドメイズ・テイル」としてドラマ化されていますが、この「またの名をグレイス」もなかなか強烈な作品で、これまでのサラらしく一つの答えで片付けようとしない部分がさらに強いテーマで表現されようとしている気がしました。 
 

今年は自ら監督した「Women Talking」が今期の賞レースで大きな評価を受けています。宗教団体のコミュニティで起きていた性暴力に対峙する女性たちを描いた作品です。 

サラ自身も10代の頃にテレビレポーターから性被害にあったことを最近告白しています。今向き合うべき事なんじゃないかと思います。

非常に重い題材の映画ですが、とても楽しみにしています。


私はきっとサラの持つ、何か非常に冷静というか厳しく現実や自分を見つめる部分と、それを包むようなあいまいで柔らかな部分とのバランスにとても救われるんだと思います。どの作品も決して楽しかったりするものではないですし独特だと思いますが、観るたびにいろんな感情が湧いて、だからこそ作品を愛おしく感じます。

たぶん私は彼女の作品を一生待ってるファンの一人です。これからもずっと。

「woman talking」も絶対観てレビューします!!

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