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ゲーム屋人生へのレクイエム 23話

前回までのあらすじ。知人の子供にゲームクリエーターになるにはどうすればいいのか尋ねられた元ゲームクリエーターが自分の過去を語る。なんとなく入社したゲームメーカーでアメリカ子会社出向から帰任したばかりでまたアメリカ、南米に出張したときのおはなし。


「一緒にフジモリ大統領に会いに行きましょう」

「ブラジルで会った日本人のお客さんにそう誘われてさ。えっ?て。ブラジルの出張終わってアメリカに帰ろうっていう前日にもう一度会いたいって言われて会ったんだけど、その時に明日フジモリ大統領と会うことになったから一緒にペルーへ行ってくれって誘われたのよ。当時のペルーは日系人で初めて大統領になったフジモリさんが政権持っててさ。それで子会社の社長やセールスマネージャーは行っても行かなくてもいいけど俺には一緒に行って欲しいって言われてさ。何で俺?って聞いたら機械の事を説明できる技術者がいないとフジモリさんを説得できないからって言われてさ」


「へえええ。すごいじゃないですか。フジモリさんは知らないけど大統領でしょ。それで会いに行ったんですか?」


「それがさ、一緒に出張してた社長が俺は工場から出張しているだけの人間だからそんな事をさせる訳にはいかないって言ってさ。お客さんからかなりしつこく俺を連れて行くって言っても頑として聞かなくってさ」


「で、どうなったんですか?」


「その社長とセールスマネージャーがペルーに行ったよ」


「えええ!ひどいじゃないですか。自分が行きたかっただけじゃないんですか?」


「まあ、そうだったかもしれないな。お客さんはすごくがっかりしてたよ。技術屋抜きでプレゼンするのは厳しいって言ってたから。でもね、結局フジモリ大統領にも会えなかったし、ペルー進出の話も失敗したって後日聞いたよ。俺がその場に居なかったからかどうかはわからないけど。それで俺一人アメリカに戻ってさ、倉庫に残った壊れた機械を直したりして残りの出張を消化してた。もうすぐ日本に帰るのかって思ってさ。もうこれでアメリカに来ることもないんだなって思ったら寂しくなったよ」


「それで日本に帰ったんですね」


「いやいや、話はまだ終わってない。続きがあるのさ」


「どこまでこの話続くんですか?」


続く

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