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公務員と安定

「公務員は安定している。」多分公務員の人ならば、一度は言われたことがあるのではないかと思います。

給料であったり、社会的な信頼であったり、身分であったり、その状況や話題によって「公務員は○○が安定している。」とよく言われます。

公務員の志望理由にも表れています。マイナビの調査でも、公務員になりたい理由は断トツで「安定しているから」でした。
参考:2024年卒大学生公務員のイメージ調査 | マイナビキャリアリサーチLab (mynavi.jp)

安定とは何か。定義としては「「安定」とは、激しい変化がなく、落ち着いた状態であることです」とあります。

確かに実感としても、公務員は変化が少ないです。給料の伸びも急ではないし、職を失う恐怖もほとんどありませんし、地方公務員であれば勤務地が遠方になることもほぼありません。

今回は公務員の安定さについて考えることにしました。

1 給料が安定している

公務員の給料は人事院の勧告によってきめられています。民間企業従業員の給与水準と均衡させることを目的としていることから、激しく上がることもなければ、大幅に下がることもありません。そのため、不景気の間は相対的に民間よりも給料が高く感じられ、好景気の間は給料が低く感じられます。

給与は良くも悪くも年功序列で、入庁してから段々と月給が上がっていき、退職間近でピークを迎える人が多いです。

今は上がっているとはいえ、新卒の給料は高くありません。私自身でいえば、初任給は20万円弱だったので、手取りでいうと10万円代中盤でした。これでは一人暮らしはなかなか難しいと感じたのをよく覚えています。

その代わりに、年を経るごとに給料は上がっていきます。普通に仕事をしていれば、人によって多少の(少々の)幅あるものの上り階段のように、ゆっくりゆっくり金額が上がってきます。

また、賞与(ボーナス)も出ます。6月と12月に、月給の2倍ほどの賞与も手に入ります。賞与も基本は月給の額に依存するため、給料が上がればボーナスも上がります。

私の所属する自治体ではありませんが、財政が悪化しても、給料が大幅に下がることは稀なようです。管理職になると、自治体のプライマリーバランスが悪化していれば給与カットもありますが、若手の場合だと東日本大震災の時に数%の給与カットがあったくらいで、基本的な給料は安定しています。

肌感覚でいえば、20代中盤で一人暮らしできるくらいの給料がもらえるようになり、30歳前後で慎ましい生活なら家族を養えるくらいになります。

基本的に働いている期間が長ければ長いほど、給料が上がるため、勤続することにインセンティブが働きます。劇的に暮らしが良くなるわけではないけれど、次の年にあっと悪くなることもない、刺激が足りないと言えばその通りですが、非常に安定しています。

2 勤務地の安定

地方公務員であれば、ほぼ引っ越しを伴う異動はありません。大体、自宅から通える勤務地を指定されるため、単身赴任を求められることは稀です。

東京都などは島があったり、北海道や長野県などは土地が広かったりと、広域自治体の場合は、引っ越しを求められる場合も0ではありませんが、基礎自治体で、通えないほどの勤務地になることはほぼ0と言ってよいのではないかと思います。

ただし、一般自治体でも他自治体との交流派遣や民間企業への派遣などで遠方地に行く可能性もあります。ただし、そういう場合はストレス耐性などを人事がしっかりとチェックをしていることから、「(能力もあって精神的にもタフで)どこに行っても大丈夫な職員」が選抜されることがほとんどです。

個人的な経験から言っても、最大かかった通勤時間は1時間ほどです。拠点がほぼ変わることがないという点では、公務員は大変安定していると言えます。

3 雇用の安定

おそらく「公務員の安定」というフレーズで、一番イメージしやすい安定さが雇用の安定だと思います。公務員は職を失うことや仕事がなくなることがほぼないというのは本当だと思います。

民間企業でいうリストラ、クビが公務員はほとんどありません。さすがに罪を犯して、起訴されれば別ですが、勤務不良でクビになる分限免職は、他の自治体で年に一度聞くくらいで、珍しい事態と言えます。
参考:悪質パワハラで免職「適法」 元消防士が逆転敗訴、最高裁|あなたの静岡新聞 (at-s.com)

所属する自治体でも、盗撮などによって懲戒免職になるケースはたまに聞くものの、「勤務態度が悪いからクビ」というケースは寡聞にして知りません。

逆に(傍から見れば)仕事をしていないのに給料をもらえているというケースは、たまにですが自分の自治体でも耳にすることもあるので、雇用の安定度は非常に高いと思います。

また、職を失うという意味では雇用先がなくなることも稀です。赤字額が一定の基準を超えると指定される財政再建団体も、地方自治体のレベルでは、夕張市のみですし、今後も多くの自治体が指定されると言われ続けて、10年以上が経過しています。
参考:総務省|報道資料|令和2年度の財政再生計画等の実施状況報告及び完了報告の概要 (soumu.go.jp)

地方創生臨時交付金など国から地方に回る額も、是か非かは様々な意見があると思いますが、年間で数兆円と多額に上り、仕事の上でも福祉の需要が留まることはないため、行政サービスが必要とされる場面は多くなるでしょう。
参考:地方創生臨時交付金とは 使途、原則問わず - 日本経済新聞 (nikkei.com)

さすがに、今後は少子高齢化の波が凄まじいため、社会保障をカバーできず、赤字に転落する自治体も多くなるとは思いますが、それでも「勤務先が倒産しない」ということでは、公務員は安定していると言えるでしょう。

4 現役の公務員として思うこと

公務員は安定しています。給料も雇用も勤務先などの環境も、1日で大きく自分の世界が変わることはそうそうないでしょう。99%くらい昨日と同じような日常を送る日々です。

そういう意味では、楽しくないわけではありませんが刺激が少ないとはいえるかもしれません。

 ・今までの人生が激動過ぎて少し落ち着いた職業に就きたい
 ・やりたいことが見つからない

こうした理由で公務員を選ぶ人が多くいます。何ら間違ってはいないと思います。

長く続けられる職業は、きっと穏やかなものが多いと思いますし、人生でこれというものを20歳前後で見つけている人は稀です。安定さにひかれて公務員になる、それはそれでいいのだと思います。

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