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痣のような青と、夏夜。

底を這うように流れる熱帯夜
ガラスに映る針の月
空っぽの駐車場と首都高のテールランプ

夏ですもの。
愚行だらけ。
一年で一番、頭がわるくなる季節だから

永遠のさようならには程遠く私はまだ刹那の生き物。

クーラーのきいた部屋で亡霊狩り。
真夜中の繁華街で大号泣。
あなたの毎日は忙しない。

赤信号が青へ変わる。
酷暑を過ぎたら融解しよう。
かき氷とプールは嫌い。
だからどうしても、真夜中の海を空想するのが好き。

目には見えない。
そこにあるのかすら分からない隔たりを越えられないまま、また真新しい一日。


いつのまにかイヤフォンから音楽は消え失せていて、
それなら鼓膜に残響する音は一体なんなのだろう。
プラットホームには誰もいない。

そわそわと落ち着かないのは、
夏夜には全ての側面と真理と愚考が横たわっているのを知っているから。

世の中に愛の歌が横行して、
それでも私はまだ誰ともみたことがない景色をあなたとみてみたい。

本能的な所作に間違いなんて無いの。
合ってるの、あれもこれも全て。全て。

生命線を流れていく水が限りなく透明であるように。
夏にばらまく曹達水は、永遠に純度が高いように。

夏が濃くなるほどあなたと私の関係性は薄まってしまうけれど。

決して消えない痣のような季節になればいい。

あれもこれも私に混ざって、
深い海の色をした綺麗な痣だらけの夏に。
痛みが記憶している、
いつまでも幸せになれないような私とあなたの為に。


水平線が夜へ溶け出している。
私の心は何処へ。
夏に溶け出している。
今日まで越えてきた、全ての夜の青。


#夏の片道切符 #散文詩 #詩 #言葉 #夏 #平成最後の夏




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