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MinakoとPonta、そして"Town" (2002)

今日は楽曲ではなく一個のLive映像にフォーカスして、記事を書き進めて行きたい。

昭和生まれの私の青春は、この人‥ 吉田美奈子と共にあったと言っても過言ではない。その吉田美奈子と同世代に大貫妙子やユーミン、坂本龍一等が居て、この年代はミュージシャンラッシュだと言っても良いだろう。

だが私はユーミンでも大貫妙子でも尾崎亜美でもなく、やはり吉田美奈子の声を力強さを常に追い求め続けたが、遂に今日まで彼女のLiveに行くことが出来なかった。
忙しかったとかお金がなかったとか、色んな言い訳を並べ立ててももう時は戻らず、あの黄金時代の吉田美奈子に会うことは叶わなくなってしまった。
 

名曲『Town』は1981年11月21日にリリースされた吉田美奈子のアルバム、『MONSTERS IN TOWN』のオープニングを飾ってお目見えした作品だ。その後「ここぞ!」と言う時に吉田美奈子は必ずこの曲をリストアップし、多くのライブハウスをブイブイ賑わせて来た。

問題の「名演奏」は、吉田美奈子のLive DVDにも収録されているが、今回はYouTubeに個人がアップした映像のリンクを貼っておきたい。

これは2002年12月25日、クリスマスに行われたLive映像だが、もう兎に角凄まじいとしか言いようがない。
丁度この頃の私は前職・シャンソンの伴奏とその合間にアイドルグループのマネージメントのアシスタントに追われている最中で、吉田美奈子のLiveのスケジュールを追い掛ける暇もエネルギーもない状態で忙殺されていた。

オープニングのファンキーなギターはまさしくギターの神・土方隆行のソロでスタートし、その後から村上 “ポンタ” 秀一がバスドラでギターをグイグイと追い詰めながら、長いイントロの途中辺りから吉田美奈子が歌舞伎ソウルのように長いカーリーヘアを振り乱し、彼女のトレードマークの肘鉄ダンスで客席とステージの両方を湧かせて行く。
 

このLive映像の凄いところは吉田美奈子、そして各メンバーの競演は勿論のこと、全員が一体となって音楽を形成している点にある。
 
日本のPopsにこれが見られるのはきわめて稀なことであり、現在のJ-Popの多くがヴォーカリスト主導・その他のメンバーはエキストラの扱いを受けるのが主流であり、各パートが完全に孤立した状態で音楽として成り立っていないものが大半だ。

動画3:12辺りからいきなり始まるキーボーディスト・倉田信雄のロング・ソロは見事で、所々アドリブの粗さは見えるものの兎に角42kmマラソンを堂々完走して行くように楽曲の最後までアドリブの手を緩めない。そして休みなく、隙のないパッセージを繰り広げて行く。
その後から「オレの出番だぞ!」と言わんばかりに、土方隆行の長いギターソロが後を追う。

それは音のネヴァー・エンディング・ストーリーを生で視るような規模で、一糸乱れぬ正確かつクールで獰猛さをにじませたファンクギターで土方式 "Town" がステージを疾走して行く。

そして絡み付くような倉田信雄のアドリブと野太い村上 “ポンタ” 秀一のドラミングが、その野太さを控え目に控え目に抑えつつも楽曲の軸をしっかりと支えて行く。
 

村上 “ポンタ” 秀一

残念ながら村上 “ポンタ” 秀一は、2021年3月9日に脳出血で逝去した。なのでもうこの偉大なメンバーで音の饗宴を聴くことは一生出来ない。

他のアーティストとの共演では特に感じることがなかったのだが、特に吉田美奈子と村上 “ポンタ” 秀一とのステージ上の掛け合いは見事である。

見た目のオーラのバランスは勿論、互いに見えない何かで深く繋がっているのを私はずっと感じていた。吉田美奈子にとって彼以外のドラマーは居ないだろう‥ と言う私の予感通り、最近の彼女はまるで生気が抜けたイワシのように声を振り絞って歌う姿が悲しげで、色々な意味でこのパワフルな音楽がこの先永遠に現れないことは残念としか言いようがない。
 

だが、全ての生は栄枯盛衰。どんなに華やいで見えても、いつかは乾いて枯れてこの世を去って行く。きっと私にもいつかその日は訪れる。
 
最近の吉田美奈子はジャズ系のピアノ・デュオとのコラボ・セッションをメインとし、日本の北から南を移動しながら細々と音楽活動を続けているようだ。勿論以前のようなパワフルな声は立ち消えてしまい、いわゆる老後の生涯教育のような歌を歌って生きているように見える。

動画Town (Live)が2002年の収録、と言うことは、吉田美奈子が49歳の時のライブ映像と言うことになる。女性特有の色々な物事が発生しつつも、桜で言うところの満開を過ぎて散り始めた頃に相当するだろう。

油が充満した後に揮発し始めた時のように、女性で言い替えると最もキツい香りを放ちまくる世代がこの、40代後半から50代後半と言える。私が今丁度その時期に差し掛かっているが、私の場合はどうなるのだろうか‥ と言う思いを抱きながらこの動画Town (Live)を、今日は何度も観て良い時間をじっくりと楽しんだ。


さて、この記事の最後に、多分上の動画と同じ頃に収録されたと思われる吉田美奈子の、この動画を貼ってお別れしよう。
この猛々しく、かつ神々しい吉田美奈子とその仲間たちの素晴らしいセッションを、とくとご覧あれ!
 


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