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【音楽評論】 Ayatake Ezaki - 「薄光 / Hakukou」

音楽家が音楽を聴く時は、どうしても厳しいジャッジメントを加えようとする悪い癖が出てしまいがちである。
それはいけないと思い襟を正して、なるべく好意的に作品を聴こうと努めるものの、そんな努力は意外に呆気なく粉砕されてしまうのが最近の決まった流れになりつつある。

とは言え比較的好き(嫌いではない‥)な部類とも言えそうな江崎文武氏のこの作品も、どこかに村松健加古隆、或いは倉本裕基妹尾武等、その時代のニューエイジ・ミュージックの片鱗と痕跡が深く匂い立ち、長く音楽に携わっている私の耳にはけっしてこの作品が新作には聴こえないのがとても残念だ。


多くの作曲家は、かつて聴いたことのある音楽の集大成としての楽曲の更新が「新作」であると信じているが、それは違うかもしれない。
無から音楽を創り出すことは、至って可能である。但しそれが極端に奇をてらったものではない限り、一見新作なのか旧作なのかなぞり返しなのか、リスナーの感性では気付かない場合もある。
 
だが調性音楽の進化系は、私・Didier Merahがそれを更新している通り、まだまだ伸びしろは広い。
「調性音楽はもう出尽くした」‥ 等と言っている輩も大勢居るようだが、それは多くの作曲家を生業としている人達が基礎教育をきちんとクリアしていないことによる勘違いだと言っても過言ではない。

その点、江﨑文武氏は肝心要の基礎教育の部分では申し分ない。それが災いしたのかどうかは分からないが、楽曲からは新鮮さが殆ど感じられない。
優秀でありクールであり分析力に長けており、尚且つかなり狡い作風で人の心を抉りに来ている感が拭えない印象があり、ある意味フェアさを感じない。

この作品「薄光/Hakukou」に於いても、微かに揺さぶられそうになるのは最初から44秒目辺りまで。エフェクトが綺麗だからだ。
だがそこからは「よな抜き」の旋律が若干しつこくて、こういう曲だったらウケるでしょ?!と駄目押しをされているようで、段々と食傷気味になって行く。
 
和のテイストをピアノと言う楽器で追及し尽くすには、あと幾つかの作曲のプロセスを踏む必要があるだろう。
それが何かと言う話しは企業秘密と言うことで、あえてここでは語らないでおきたい。何故ならそれを完成させるのは他でもない、私 Didier Merahの仕事だから。
 
おそらく当面、Didier Merahの背後から音楽史のアンカー(ないしは先頭を行く)の役割りを奪いに来る作曲家は現れそうにない、とだけ書いておこう。
 

江﨑文武 略歴:
WONKmillennium paradeのキーボーディストとして活動するほか、スタジオ・ミュージシャンとしてKing GnuiriFriday Night Plansなど名だたるアーティストのレコーディングやライブをサポートしている。また、他のアーティストへの楽曲提供や編曲・プロデュースに加え、映画音楽、アニメーション音楽、CM音楽も手がけている。

1992年11月19日、福岡県福岡市に生まれる。幼少期からピアノを習い、中学からはジュニアオーケストラに入団する傍ら、ビル・エヴァンスとの出会いから独学でジャズピアノを始める。福岡県立修猷館高等学校を卒業。

2011年、東京藝術大学音楽学部に入学。音楽環境創造科で映画やアニメーションの音楽制作を学ぶ。大学在学中、安宅賞受賞。同級生の石若駿、常田大希と出会う。
2013年、WONKを結成。活動開始後、サマーソニックやフジロックフェスティバルなどに出演。
2015年、映画「なつやすみの巨匠(企画・脚本:入江信吾 監督:中島良 出演:博多華丸、国生さゆり、板谷由夏、リリー・フランキー)」音楽監督に抜擢。
2016年、Daiki Tsuneta Millennium Paradeにキーボーディストとしてレコーディング参加。
2018年、King Gnu「Prayer X」にレコーディング参加。以降、King Gnu作品を多数手がける。
2019年、King Gnu白日にレコーディング参加、ミュージック・ビデオに出演。サポートミュージシャンとしてNHK紅白歌合戦に出演。millennium paradeとして活動開始。
2020年、東京大学大学院学際情報学府修士課程を修了。

Wikipediaより抜粋。)


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