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ダイヤモンド社の編集長が「知らないともったいない本」と断言!超オススメの名著とは?

こんにちは! この春に出版社のダイヤモンド社に入社したての新入社員の菱沼です。同期4人で担当しているこの連載も、23回目を迎えました。22回に引き続き、今回も書籍編集局第2編集部の編集長である横田大樹(よこた・ひろき)さんの突撃インタビューをお届けします! 【中編】では横田さんの思考や行動を変えた本や、おすすめ本を紹介します。『ゼロ秒思考』のような自己啓発書から『半導体産業のすべて』のような技術書まで、多くのベストセラーを担当してきたスゴ腕編集長は、新人4人に対し一体なにを語ってくれるのでしょうか⁈

>>前編『ダイヤモンド社“書籍”編集長の意外すぎる新人時代!『攻殻機動隊』で進路確定…入社1年目は印刷所で爆睡?!』から読む


前回に引き続き、お話を伺っていきます! 今回も笑いの絶えない楽しいインタビューでした!

ベストセラー編集者の思考を変えた1冊

ーー横田さんがおすすめしたい本ってありますか?

 うーん、悩ましい質問ですね。ダイヤモンド社の本だけでも20冊くらいすぐに出ますが……自分の担当書からは『マーケット感覚を身につけよう』という、ちきりんさんの本をおすすめしたいです。

 この本は、テーマそのものが圧倒的にオリジナルなんです。ちきりんさんの当社での第1作『自分のアタマで考えよう』は、ビジネス書の定番の「論理思考」をユニークなアプローチで解説するものでした。そして第2作の『マーケット感覚を身につけよう』は、「論理思考」と対になる「価値思考」についての本なんですが、これは私の知る限り、ちきりんさんが初めて体系立てたテーマなんですよ!

 にもかかわらず、解説のわかりやすさやおもしろさは『自分のアタマで考えよう』に勝るとも劣らない。テーマそのものが斬新だから、読者に与える成長価値も大きい。「これはすごい本を世に出してしまった…」と思いましたね(笑)。

 自分の担当でない本だと、『ピクサー流 創造するちから』が超おすすめです。なにせ、著者が『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』のピクサーの創業社長ですよ?! それでこのタイトルって、すっごく読みたくなりません?  しかも、ピクサーには設立のときからスティーブ・ジョブズが関わってるから、ジョブズのエピソードもたくさん出てくるわけ。

 もちろんヒットはしてるんですが、個人的には「100万部いくんじゃないか」と思うくらいのパワーを感じた作品で、それと実際の部数との差が大きいのがもったいないというか、やきもきしてるんで、いろいろな人にすすめてます。とりあえず、クリエイティブに関わっている人は全員読んでほしい

ーーどちらも気になりますね! その他にも、読んでみて横田さんの行動や考えが変わった本があれば教えてほしいです!

 じゃあ、ダイヤモンド社以外の本でいきましょうか。仕事面でも生活面でも両方あります。

 仕事で考えが大きく変わるきっかけになったのは、『書きあぐねている人のための小説入門』。これみなさん読みました?

ーー横田さんが前からおすすめしていたのは知ってるんですが読めてないです……。

 いや、そこは読んどこうよ(笑)。

 私は文芸作品を編集するつもりはないし、小説を書きたいと思ったわけでもないんです。でも小説論、もっといえば「プロの人が自分の専門についてつらつらと考えている本」は好きで、その1冊として読んだんですが……結果として、ビジネス書や実用書についてずいぶんと考えるようになりました

 どういうことかというと、著者の保坂和志さんは、『書きあぐねている人のための小説入門』とその続編の『小説の自由』三部作で、「小説とは何か?」を延々と考え続けているんですね。それを読むと、バランスをとるように自然と、小説の対極的な存在であるビジネス書や実用書のことも考えてしまうんです。

 この本に出会わなければ、今のように「ビジネス書ってなんなんだ?」とか真剣に考えるようにはなっていなかったかもしれない。

ーーこの本にはいつ頃出会ったんですか?

 全然覚えてない。

ーー『攻殻機動隊』と同じで、また覚えてないんですね(笑)。

 うーん、いま奥付を見ると、「企業実務」の編集部でよく寝てたころ(詳細は前編を参照)からちょっと成長して、「そろそろ書籍編集の部署に行きたいな」と思っていた時期だとは思うんだけど。

実際に書籍をもってきてお話ししてくださりました! インタビュー後、この本を探しに本屋さんに行きました!

本を読んだ結果、走りすぎて乳首がなくなりかけた

ーーじゃあ実生活が変わった本は何ですか?

 1冊は『BORN TO RUN 走るために生まれた』。すごいタイトルだと思いませんか? そんなに走るの好きなのかよ!ってツッコミたくなるけど、実際そういう中身なんです。

 まず、人間の肉体的な強みっていうのは、どんな陸上生物よりも、長時間、ある程度のスピードで走り続けられることだとわかっているらしくて。

 そしてそれが、アフリカの森で猿から進化して、サバンナに出てきた人類が、どうやって生き延びたか? という話に繋がるんですね。原始の人類は、みんなで槍をもってマンモスを狩っていたわけではなく、シマウマのような草食動物を集団でずっと走り続けて追いかけていたようなんです。そして、シマウマは瞬間的なスピードは人間より速いけれど、いずれ疲れ果ててダウンしてしまう。それを寄ってたかってとどめをさして食べる……みたいな。人間はそうやって生きてきたから走らないと肉体はダメになるんだよ、というメッセージで、しかもそれに現代の超人的なランナーと、メキシコの伝説的な“走る民族”のバトルまで絡んでくる。

 もう読み終わった瞬間から「走りてえ~!」となって、次の日にはランニングウェアやシューズを買って走るようになりました。

ーー行動力すごすぎませんか!

 いや『BORN TO RUN』がすごいんだよ! で、一時期、毎日10キロぐらい走ってました。 でもそれくらい走ってたら、ある日突然「めっちゃ乳首が痛い! どうなってんだこれ⁉」となって。

 ネットで調べたら意外とよくある話みたいで、「走り続けるとシャツとこすれて乳首が取れることもあります」って書いてあって怖くなった。実際血がにじんでたし、でも走りたいしで大変だったんですよ。……なんか変な話になったけど、それだけパワフルな本だったと。

ーーすごく読みたくなってきました! もう1冊はなんですか?

 もう1冊は『一汁一菜でよいという提案』ですね。これは珍しく出会った瞬間を覚えてます。2016年の年末に、吉祥寺の本屋で見てビビッと来ました。A5判の大きな白地の真ん中に手書きでタイトルが書いてあって、「すごい本」のオーラが出ていたんです。
 
 それで自宅に帰ってぱらぱらって読んだ時点で、「よし、味噌汁作るぞ」ってなったんですよ。

 読むとわかるんですが、この本の本質って、味噌汁のレシピではなくて、「一汁一菜」というスタイルを持つことの価値を教えてくれたり、料理することへの心理的な「壁」を壊してくれることなんですよね。「味噌汁に唐揚げを入れたっていいんだ」とまで書いてある。大げさではなく、心の中に土井善晴先生が宿って「これでいいんよ」って言ってくれるようになるんです。

 それからずっと味噌汁は作り続けてて、他の料理にも少しずつ挑戦するようになりました。同じような変化があった人、たくさんいるんじゃないかな。本当にいい本だと思います。

 ちなみに、『一汁一菜でよいという提案』の担当編集の大庭久実さんは、いまダイヤモンド社の第4編集部にいるので、こんど話を聞いてみるといいですよ。

ーーありがとうございます! 横田さんは、すごく本から影響を受けているんですね!

 考えてみたら、本以外で自分の行動を変えたという経験があまりないかもしれない。そういう力のある本を、自分も作っていきたいですね。

ーーインタビューの後編では、横田さんの思い出担当書籍やベストセラーを生み出すコツなどを聞いています! ぜひご一読ください!


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