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『DIE WITH ZERO』の編集者に突撃!本に感化された会社の社長が取った「驚きの行動」とは?!

こんにちは! この春に出版社のダイヤモンド社に入社したての新入社員の森です。同期4人で担当しているこの連載も3巡目に突入しています。26回目では、前編に引き続き、書籍編集局第3編集部の副編集長、畑下裕貴(はたした・ゆうき)さんの突撃インタビューをお届け! 『DIE WITH ZERO』『教養としてのワイン』『あやうく一生懸命生きるところだった』などを担当したスゴ腕編集者が語るベストセラーの誕生秘話に迫ります!

>>前編『「本を読まない編集者」がベストセラー連発?!それでも“売れる本”を世に出せるワケとは?』から読む

前回に引き続き、畑下さん(写真左下)にお話しを伺います!

読者の行動を変える一冊

ーー畑下さんが『DIE WITH ZERO』を編集したときに印象に残っているエピソードを教えてください。

 『DIE WITH ZERO』は、時間とお金を上手く使い最高の人生を送るための革新的な本です。「生きているうちに金を使いきる=ゼロで死ぬ」という観点から今までになかったお金と時間の使い切り方が紹介されています。

  リーディング(編集前に翻訳者が作成する要約)の段階で感動して、原稿に線を沢山引きました。そして、「今しかできないことに惜しみなく金を使うべき」という言葉に感化されてリーディングを読んだ段階で興奮して車を買いました(笑)。 

ーーえっ! 凄まじい影響力ですね。

 後悔のないように今を生きたいと思って。前回の記事で1番おすすめの本に本書を挙げましたが、本書のすごいところは読者の行動を変えるくらいの影響力があることです。読者や周りの人からも「子どもとの時間を増やすようにした」「家族と旅行に行った」「仕事の量を調整した」という報告が届きます。読んだ後、実際に行動に移せることが本書の魅力ですね。

ーーちなみに読者からの感想で印象に残ったものはありますか?

 感想ではありませんが、とある会社の社長さんとお話ししたときに、「『DIE WITH ZERO』を企業の概念に取り入れている」と仰っていました。なんと、独自に作ってくださった『DIE WITH ZERO』のスタンプが社内のメッセージツールで使われていたんです。「来週家族で沖縄旅行に行ってきます〜」の返信にそのスタンプが押されていました。

ーーめっちゃ浸透してますね!

 すごく嬉しかったです。あと、人づてに「それって『DIE WITH ZERO』だよね」と話していた人がいたという話も耳にしました。『DIE WITH ZERO』という言葉が独り歩きしている感じがして喜ばしいです。

 本書の考え方を知っている人ほど人生をより豊かにできるというか。 特に必要以上に貯金してしまう若者もいますよね。でも、20代で必死にお金を貯めるより、他にできることがあると思うんです。

ーーちなみに今もし20代だったら何にお金を使いますか?

 旅行ですかね。年齢を重ねると友人との旅行や1人旅はなかなか開催できなくなるので。『DIE WITH ZERO』に、こんな一節があります。

いつまでも子ども用プールで遊べると思うな

『DIE WITH ZERO』p.188より

 子どもが成長するにつれて、できる経験も変わってくるのと同じで、 今しかできない経験があるはずです。旅行以外にも、その時にしかできないことに挑戦してみたいです。

旅先のグルメが好きだという畑下さん。
宮崎県高千穂町のチキン南蛮を一度食べてみたいそうです。

ダメな自分を認めてくれる自己啓発書

ーーでは、ここで別の担当書に話題を変えて、20万部を突破した『あやうく一生懸命生きるところだった』の誕生秘話を教えてください。

 本書を手がけた2020年頃は「頑張る」をゴリゴリに推す自己啓発書が売れていて、 なんか「しんどいな」と思ったんですよね。いっそのこと「何もしなくていいよ」というか、ダメな自分を認めてくれる自己啓発書を作りたいとぼんやり考えていました。 そんなときに『あやうく一生懸命生きるところだった』を知り、韓国の本を手がけた実績はありませんでしたが、挑戦してみました。

ーー着眼点が鋭いですね。テーマを先に考えていたということですか。

 そうですね。僕は悩みや疑問などのテーマから本作りの企画を考えることが多いのですが、『あやうく一生懸命生きるところだった』はタイトルもコンセプトも「ダメな自分を肯定してほしい」という自分が描いていたテーマと合致していました。

 あ、そうだ。ちなみに『あやうく一生懸命生きるところだった』は第13回「日本タイトルだけ大賞」を受賞しました。これは、本の内容は評価対象にせず、タイトルが秀逸な本を勝手に表彰するという賞です。欲を言うとタイトルだけじゃなくて内容も評価してほしいんですけど、何事も選ばれると嬉しいです。

ーーおめでとうございます! タイトル以外ではどんな工夫をしたんですか?

 あまり本を読まない人でも読めるようにしたかったので、文字を大きくして、行間を開いて、ゆるゆるな雰囲気を演出しました。せっかく書店で手に取ったのに難しいと感じて読むのを諦めてしまうのは勿体無いと思うんです。内容もすごく良いので。

ちなみに畑下さんは『あやうく一生懸命生きるところだった』『DIE WITH ZERO』『おもろい話し方』などのベストセラーを、コンビニのイートインスペースでカフェラテを飲みながら編集したそうです。

生き方や考え方の羅針盤

ーー最後に、畑下さんが手がけた中でお気に入りの一冊を教えてください!

 『奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業』ですね。ストア派の哲学者エピクテトスの言葉や考え方を漫画で一緒に伝える本です。『DIE WITH ZERO』『あやうく一生懸命生きるところだった』よりも目立って売れているわけではないのですが、個人的にはおすすめの一冊です。悩んだ時にふと思い出すというか、心に響くんです。

ーー特にどんなところが響いたんですか?

 「人々を不安にするものは、事柄それ自体ではなく、その事柄に関する考え方である」かな。人生においてすごい辛いことってありますよね。でも、どれだけ辛いと感じることでも事柄それ自体には良いも悪いもないんです。もし落ち込むようなことが起きても、実は人生が好転するきっかけになるかもしれません。エピクテトスの名言のように物事の良し悪しは自分の捉え方次第だと考えたら、楽になるし生きやすくなるんです。

ーー深いですね。私もエピクテトスの考え方を取り入れたいです。

 実は他にも好きな本があります。前職で作った『なにがあっても、ありがとう』というエッセイ本です。著者は渋沢栄一さんのお孫さんである鮫島純子さんで、何事も達観している、すごく魅力的な人なんです。たとえば、骨折したときも「ありがとうございます」って瞬時に言ったという。

 鮫島さんが「悪いことは、浄化されるときに起きる」みたいなことを仰っていて、ネガティブなことに対してもポジティブに捉えられるようになりましたね。

 『DIE WITH ZERO』『あやうく一生懸命生きるところだった』『奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業』『なにがあっても、ありがとう』。自分が手がけた本を振り返ると、ふと思い出せるような生き方や考え方を教えてくれる自己啓発書が好きなのかもしれません。

畑下さんの考え方を知ることができた貴重なインタビューでした!ありがとうございました!