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台風予報のあるある勘違いとは?気象学者はカラスが天敵!?「気象のはなし」全部盛り本の編集秘話

「あらゆる角度から天気や気象を眺められる!」「タイトル通りで、期待を裏切らない!」など各所で大絶賛の書籍『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』。本書は、明日から自慢できる、目から鱗な気象のはなしが盛りだくさんです。あるようでなかった、大人が気象学をさらっと隅々まで知ることができる本。そんな本書の誕生秘話や、これからの時期読んでおきたいページなどを、出版社・ダイヤモンド社の新入社員の菱沼が担当編集者の田畑博文(たばた・ひろふみ)さんに聞きました!

(担当編集の田畑さんからあんなことやこんなことまで、たくさん聞いていきたいと思います!)

気象は体感できるサイエンス

――まず、この本を企画したきっかけを教えてください。

 色々なサイエンス書を作っていく中で、「気象学」はサイエンスの面白さが詰まっていると思ったことがきっかけです。気象学には、物理学や化学、地学、統計学など複数の学問知が詰まっていると感じていました。その学問知を、流れる雲や風、雨、台風などの形で目にすることもできて体感することもできる。「知る」ことができて「体感」できるという距離の近さが、科学の入り口としてすごくいいと思い、いつか気象学の入門書を作りたいと考えていました。

 7〜8年前に著者の荒木健太郎さんを知り、気象研究所まで会いに行ったんです。荒木さんとお話をしたら、本当に研究が好きな情熱的な方だということ、そしてそれをわかりやすく発信している人だということを実感しました。荒木さんが研究者の立場から科学の面白さを伝えようとしていること私が編集者の立場から科学の面白さを伝えようとしていること、二人の目指していることが重なっているように感じて、一緒に本を作りましょうと相談を開始しました。

――『気象のはなし』を多くの読者にとって身近な「天気」や「雲」にテーマを絞った本ではなく、気象学が全部わかる本にしたのはなぜでしょうか?

 「気象学」の面白さを伝えられる本にしたかったからです。
読みやすさを考えて、「天気」「雲」に絞るやり方もありますが、それだとどうしても部分的なものになってしまうんですね。自分が他のサイエンスの本を作るときも大事にしている、「ある学問を理解しようとしたときに必要な事柄が一通り押さえてある・理解できる」入門書を目指しました。

――たしかに、この本を読むだけで、気象学についてなんでも話せる気持ちになりました! 中身の構成など工夫した点はありますか?

 「科学随筆」として、どこからでも読める本にしたいと思っていました。そのため、基本的には1本1本エッセイ単体としてでも読んで楽しめるようにしています。

 全体の並びとしては、1章が気象学の基礎知識を身につける章、2~4章が身の回りの気象の楽しみ方、5章が気象学の学問の成り立ち、6章が気象学の未来を含めた著者の研究エピソードになっています。1章、5章、6章は気象学の過去、現在、未来を知ることができるように、2~4章は読むと日常生活で感じる気象がわかるようにしました。

――著者の荒木さんは虹の色数を6色と紹介することが多いそうですが(詳細は前回記事を参照)、ずばり、6章の章ごとの色使いと虹の6色をそろえたという点は狙いましたか!?

 それは狙いました(笑)。

 最初から荒木さんやデザイナーさんに伝えていたわけではないんですが……テキストだけにとどまらず、本という物体で「気象らしさ」を表現できればと、6章構成になりそうな段階から考えていた仕込みです。他にも、カバーやカバーを外したデザインなど仕込みは盛りだくさんです。これが紙の本のよさかなとも思います。

――とても素敵なデザインですよね! デザインとともに『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』というタイトルが印象的でした。なにか込められた想いはあるのでしょうか?

 読み終えたあとに、自分の内側で変化が起こる気象の本という意味を込めました。これは、本を作ったきっかけとすごくリンクしています。

 散歩していたある日、「空が綺麗だな」と眺めたときに、雲ができる仕組みなどを「全然科学的に理解できていない」「自分はこの空のことを何も知らないな」と思ったことがあったんです。空や夕焼けが綺麗だと励まされたり、虹と出会うと幸せを感じたりという主観的な経験を入り口に、空の美しさや神秘を科学的に理解できるようになる本を作りたいと思った。その視点をそのままタイトルにしているんですよね。空を眺めた時の感動や疑問に対して、この本を読んだときに答えが見えるようになるといい、最初に眺めた時の空の美しさとか感じた虹の美しさとかそういうものが読み終えたときには違う意味で美しく見えるようになるといいな、と。

 巻頭4枚の写真でも工夫をしました。なんとなく眺めるだけでも綺麗ですが、読み終わったときに自然現象としての気象を理解してもう一度見ると、見え方が変わっている。別の視点で美しさを感じられるようになるとしたいと思いました。そんな想いがこもったタイトルです。

(『気象のはなし』より巻頭4枚の写真。本を読む前と後で見え方が変わります! ぜひ実感してください!)

これから役立つ気象のはなし

――これから台風シーズンがやってきますが、知っておいて面白い「気象のはなし」ってありますか?

 「台風の予報円のはなし」ですね(p.320「予測が難しい理由」より)。

 天気予報で見る台風の進路予報円って、日本に近づくにつれて大きくなっているじゃないですか。荒木さんに話を伺うまで、「なぜ日本に近づくと台風って大きくなるんだろう、色々取り込んで大きくなるのか」とぼんやりと思っていました(笑)。
 
 でも、この本を読むとそれが間違いだってわかるんです。台風の予報円は「予報する時間に台風の中心がある確率が70%」の円らしいんです。しかもそれを結ぶ線はその確率円の中心を結んだだけで、進路ではないっていう。周りに話を聞いてみると、私のように理解している人は多い気がします。これから、台風の予報がどんどん出てくると思うので、ぜひ注目してみてほしいですね。

――それでは、担当編集者としての「おすすめポイント」と「イチオシページ」を教えてください!

 おすすめは、「写真とイラストの多さ」ですね。気象学の類書の中でも、かなり突き抜けているんじゃないかなと。合計で200点以上あるんですよ。「読んで理解する」ことと「ビジュアルで理解する」ことの2段階で理解できるように作りました。

 イチオシページは……本当に「全部」なんですよね(笑)。
 
 強いて言えば、6章で荒木さんの個人的お話が出てくるところと、5章にある「気象学のはじまり」です。荒木さんがカラスと格闘していたり(筆者注:観測機器をカラスがつついてしまわないよう闘ったそうです)、健康的に研究活動に打ち込めるように、ストイックにキックボクシングに打ち込むエピソードも紹介しています。とても面白いのでぜひ読んでみてください。

空を綺麗だと思ったあなたへ

――最後に、この本は特にどんな人におすすめか、教えてください!

 空や虹、夕焼けを綺麗だと思ったことがある人、心を動かされたことがある人に手にとってもらえたらと思います。気象という不思議になんとなく関心はありながらも、よい学びのきっかけがなかった人の最初の一冊にぴったりな本です。科学に対して憧れがある人にもぜひ手に取っていただけたらと思います。

(最後ににぎやかすぎる背景でお写真を! 田畑さん、ありがとうございました!)

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この先も面白い書籍の情報を定期的に発信しますので、ダイヤモンド社書籍編集局の公式noteをぜひフォローしてください!