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虹は2色?「雨のにおい」の名前は?気象オタクの新入社員がドはまりした『気象のはなし』

こんにちは! この春に出版社のダイヤモンド社に入社したての新入社員の菱沼です。新人研修の一環として、「自社の話題書を新人が読むとどう感じるのか?」をnoteに綴ることになりました。今回は、気象学者である荒木健太郎さんが書いた『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』を取り上げます! 目から鱗な「気象のはなし」を一緒に深掘りしていきましょう!

生活が豊かになる「気象のはなし」

 みなさん、人間の生活においていちばん身近な「サイエンス」ってなんだと思いますか?

 答えは「気象学」です。異論は認めます。

 でも、考えてみてください。天気予報を見て一喜一憂し、梅雨が来ると少し憂鬱になり、夏は暑くて冬は寒いことについ文句を言いがちではないですか?
 とある夢の国に出かけて、「晴れ男だからさ、感謝してよ」「雨女だから雨降っちゃった、ごめんね~」みたいなやり取りをした、もしくは見聞きした経験がありませんか?あるいは、台風の接近に伴い、「学校が休みだ!やった~!」「電車が止まってしまって会社に行けない……」などという経験はありませんか?
 
 きっと皆さん、心当たりがありすぎるのではないでしょうか。

 つまり、気象学とは生活に根付いている学問なのです。もちろん気象オタクの偏見も入っていますが、空が存在していない日はないので、ご納得いただけるのでは?と思っています。

 そんな、空を見上げすぎて電柱に頭をぶつけることもある気象オタクが、気象庁気象研究所の雲研究者である荒木健太郎さんの『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』を読んでみました。

(カバーの色が素敵な空の色で心ときめきます。本棚にあったら眺めてにやにやすること間違いなしです!)

 ただこの厚さ! なんと人差し指の1.5関節分!!!

(全部で391ページ!!!!)

 いくら気象オタクでも簡単には読めなそう…普通に心が折れかけました。
もはや眺めて幸せならいいのではないかと現実逃避までしました。

著者の空への愛=本の厚さ

 本の厚さが著者の空に対する愛の大きさなのだと自分を納得させ、ページを開きます。「味噌汁のドラマ」「ドラえもんと台風」「雨のにおい、雪のにおい」「『梅雨入り宣言』の真相」…気になる目次が盛りだくさんで、正直とってもわくわくしました。その中でも目に飛び込んできたのが、「雨の日、気象学者はこう楽しむ」です。

 わたしは雨の日が嫌いです。本当に憂鬱すぎます。電車に乗れば濡れた傘に押し合いへし合いされ、歩けばかばんや服の裾はびたびた、滑って転ぶこともあります。洗濯物だって乾きにくくなります。許せません。気象オタクだからといってなんでも好きなわけではないのです。

 最近は、「傘をささなきゃ雨音が聞こえない。つまり、ほとんど雨は降っていない。」という持論を振りかざして、小雨の日は傘なしで歩いています(意外とびしょびしょになる)。正直、雨が好きな人って少ないんじゃないでしょうか。そんな雨の日になにをどう楽しんでいるんだと疑問に思い、まずその節を読みました。

「雨の日もまた、楽しいものです。おすすめは、スマートフォンで水たまりをスロー撮影することです」

(p.190より引用)

 スロー撮影????????…楽しいのでしょうか?気になりすぎて自分でもやってみました。

(原宿の道の真ん中で撮りました、人目を気にすることはやめました)

 たのしい!!!!!!!!!!! 雨がぴちゃんぽちゃんする瞬間をゆっくり見るのってこんなに楽しいんですね! 皆さんもみなさんもぜひやってみていただきたいです。素敵なぴちゃんぽちゃん選手権をしましょう。

(待ち望んだ雨を大喜びで撮影するわたし、楽しそうですね)

もしかして雨の日って楽しい?

 雨の動画を撮っていて気になったのが「雨のにおい」です。雨には独特の、表現しにくいにおいがあります。わたしはそのにおいが結構好きです。雨の日で、唯一好きなところかもしれません。あの少しカビっぽいような、朝早い森の奥の草のような、なんとも言えないにおいが癖になります。
 巷では「地面のほこりのにおい」だなんだと、まことしやかにささやかれているのですが、気象研究者としての見解はどうなのでしょうか。

 「雨のにおい、雪のにおい」の章(p.192)によると、「雨のにおい」には正式名称があるらしいのです。ひとつが「ペトリコール」、ギリシャ語で「石のエッセンス」という意味です。

 おしゃれすぎませんか???

 植物からできた油分が乾燥した地面の石表面に付着し、雨によって空気中に放出され、自分たちの鼻に届いていると考えられているらしい……。晴れた日が続いた後、久しぶりの雨が降るときに地面から上がってくるにおいのことを、ペトリコールと呼ぶそうです。

 そしてもうひとつが、「ゲオスミン」、「カビ臭いようなにおい」と表現されることもあり……ペトリコールと比べるとえらい違いですね。ペトリコールが雨の降り始めのにおいであるのに対して、こちらは雨上がりのにおいだそうです。土の中のバクテリアたちが作った有機化合物が雨水で広がることで発生するとのことですが…「バクテリアが作った有機化合物」? これ以上考えるのはやめておきましょうね。

ほかにも気象のはなしが盛りだくさん!
 もちろん、雨以外にも気象学のあんなことやこんなことがこの本にはたくさん載っています。特に印象的だったのは、虹のお話です。虹といえば、見られればラッキー!と思う象徴ですよね。虹といったら7色ですよね。その常識、ひっくり返ります。

「虹は七色」というのは、世界共通の認識ではありません。

(p.137、139より引用)

 え!!! ラッキーセブンはどこに!!!!!

 ドイツでは5色、アメリカでは6色が虹の色数であり、南アジアには赤と黒の2色だとしている地域もあるそうです。思わず「赤と黒?? 虹色が??」と宇宙猫状態になってしまいます。出現する虹が違うのでは?と思ってしまいますが、見ている虹は同じ虹。色を表現する語彙など、主に「文化的な理由」で異なっているようです。著者は、国立天文台が編纂する『理科年表』に従い「6色」と紹介することが多いそうですよ。

 しかも、この本には「虹の見つけ方」まで載っています。虹を見つけやすくなったら…素敵ですよね!皆さんも『気象のはなし』を読んで虹探しをしてみてください!

読み終えた瞬間、とりあえず外に出たくなる
 雨の日の雑学を知ると、憂鬱だった雨の日が楽しくなります。なんなら待ち遠しくなります。

 わたしは雨のスロー撮影をするために、嫌いなはずの雨の日を心待ちにしていました。このままだとnoteの締め切りに間に合わない、お願いだから降ってくれとまで思いました。虹だって探しに行きました。やっと降ったと思った雨が全然止まず、降り終わったのは真夜中。当然太陽は沈んでいるので虹が出るわけはありませんでした。楽しい人生ですね。

 この本には、ほかにも雲の正体や風が吹く理由、気象に関する陰謀論や疑似科学との向き合い方までなんでも載っています。「あ、雲が白い理由知ってる?」とドヤ顔するもよし、「虹って7色が当たり前じゃないらしいよ」と雑学を披露するもよし、雨の日に傘をささないで歩くもよし、「気象」を知ると、生活の中で小さな楽しみを見つけられるはずです。

 皆さんもぜひ、より楽しい人生のために『気象のはなし』を読んでみませんか?

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