明けない夜はないが、、、~岡崎市和食店「魚信」コロナ禍経営奮闘記30(9月30日)
こちらの続きです、なんだかんだで、この連載も30回も続いてきたんですね。西田社長をはじめ魚信の関係者の皆さま、ここまでお読みくださっている皆さま方に感謝申し上げます。
外食企業の9月期の月次が次々と発表されています。
回転すし、餃子・ラーメン、牛丼と、いわゆる日常食のお店は好調、豆腐会席など高級路線、居酒屋は苦戦中、とはっきりとした傾向がわかります。
われらが魚信さんも9月末が決算期。西田さん、9月月次はどうでした?
西田さん「20日のSWまでまったく動かない月でしたね。ラスト10日間で動きましたが、届きませんでした。今月も全体的に厳しかったです。前年比の数字をいいますと、売上63.3%、客数69.5%、客単価91.2%といずれも前年割れの結果となりました」。
部門別はこんな感じ
「9月の30日間といっても、今月は菅新政権発足の19日までピタッと動きませんでした。先月末に安倍首相辞任されて、それから自民党総裁選、新政権の報道が増えて、コロナ関係の過剰な煽り報道が減ってきたことで、ようやく動き出したのが20日からのシルバーウィーク以降。だから、実質10日で昨対比6割越えの数字ができたと少しばかり手ごたえを感じています」。
5月GW明けに「脱宴会、脱法事」に舵を切ることを決めて、新戦略を練り上げて、それを「釜めし」という形でようやくスタートを切り、お一人様のお客様にもご家族さまのお客様にも「店内でも釜めし、テイクアウトでもほかほか釜めし」と7月下旬から徐々に認知を広げてまいりましたが、それが9月下旬になってじわりじわりと浸透しつつあるのかな、と。仕出し、とありますが、それにはテイクアウトも含まれていて、148%と急成長しているのも心強いです。
来月はコロナ発生なく、この調子で行ってほしいですね。
「そうですね。ですが、星野リゾートさんもワタミさんも4月から1年半、とみておられるようなので、そのあたりは楽観視せずに、できることをやっていこうと。どこかで触れられていたと思うんですが、わが社よりも一足早く、8月に回復できた企業はどこも客数よりも客単価アップが実現できていた、という分析がありましたよね。テイクアウトメニューがうちの弱点とズバッと指摘されたわけですから、そこは今月数字として表れていないのですが、そういう方向でいこうとスタッフの皆さんとも意識もって動いてもらっているので、徐々に客単価アップが実現するよう変わっていけるんじゃないかと期待しています。もちろん、それは無理強いするような形じゃなくて、ご自宅用にお持ち帰りをお勧めするなどの方法で薦めていこうよって」。
9月は決算期でしたね。今期を振り返ってみていかがでしたか?
そうですね。うちは海鮮和食レストランとはいえ、ショルダーネームを「味の集会場」としていたこともあり、法人・団体の宴会・接待、法事の会席が売上の6割以上を占めていた団体食中心の経営形態でした。そこをコロナが直撃しましたから、3月以降は、前年比40%の売上でも当たり前って言えば当たり前なわけです。「これではつぶれる」って必死に舵を切り、方向性を模索して、フェイスブックや新しいお客様や職人さんらとの出会いで助けられています。
というと?
5月に宴会部門を捨てる決断をして、個人客、フリー客中心で「魚信でしか味わえない食事を提供する」という本来の外食の目的を立ち返り、新しい柱となる事業を探すなか、「釜めし」に出会い、「釜めしと海鮮和食」を中心としたイートインとテイクアウトという形態に変えていこうと挑戦できる体制へと「変態」中です。女将と店長がフェイスブックのライブ動画を始めたり、インスタに料理写真をアップするなど、コロナ不況がなかったら、こんなことにチャレンジしなかったわけで、挑戦することを思い出させてくれた、という点ではコロナ禍はありがたい機会だったなと(笑)。もちろん、売上・利益的には厳しいですよ。本気で倒産もある、と今でも考えていますから、崖っぷちは崖っぷちです。飲食業の利益構造は売上10%ダウンでヤバくなる薄利の世界で、それがもう7カ月も続いている。まだまだ楽観視できるほどには至っていません。新規事業の「釜めし事業」も立ち上げ期ですが、これからの魚信を支えるエースとして、立ち上がってきて欲しいなというところです。
7月中旬からの9月中旬まで影響があった「第2波」が厳しかった。
本当にそうですね。7月に岡崎に来訪したユーチューバ―がコロナ陽性、さらに岡崎警察署がクラスター発生により、和食の顧客層である50代以上のお客様、特に女性のお客様が「外食離れ」「巣ごもり消費」へ。週末や連休に決まっていた法事、慶事が次々にキャンセル。また、通常時ならば8月お盆の都会からの帰省時にご家族様によるご利用が多いのですが、東京のGoToトラベルが除外となり、全国の自治体が発信した「帰省自粛要請」もマイナスに響きました。7月の連休、8月のお盆休みという2度の「繁忙期」にキャンセルが続き、それまで順調に回復基調にありましたが、大きく腰折れ。
春から長らく続いてきた過剰な恐怖・不安をあおるコロナ報道、自粛要請報道は、9月16日の菅新内閣発足で終わると、市民の皆さまも外食を、というムードに変わられたようで、9月20日からのシルバーウィークから月末にかけて、大いに店内に賑わいが戻ってきました。10月からはGoToイートや岡崎市プレミアムLINEクーポンも始まるので、それで市民の皆さんが動いてもらえると助かります。
9月末まで、という時間軸の中では、コロナ流行のアップダウンを予想していたこととはいえ、厳しい期間となりましたが、明るい兆しもありますね。
そうですね。このグラフでわかるように、慶事以降の4部門が毎月毎月前年比プラスプラスでずっと来ていること。あまり数字を追いかけるようなことはしたくないのですが、この地味ですが、継続的なプラスは支えになってます。特に伸びている仕出しは「釜めしテイクアウトの風」に乗ってきたかな、ということで、ここはまだまだ伸びしろがあります。また、出前館を始めた(6)うおのぶ食堂部門はずっと好調を維持しています。魚信本店の客層とは異なり、40代までの若いファミリー層の皆様方のご来店に支えられておりまして、本当にありがたく感謝申し上げます。
このエビフライタワー丼、そそりますね~(笑)。それから、今期は、8月下旬から、さらなるチャレンジも始まりましたね。
原田師匠による「本物の手作り豆腐」づくりですね。道具もなかなか揃わない中で、OKがもらえる品質の豆腐ができるまでは時間がかかりますが、これも「岡崎手作り豆腐」としてブランド化できる潜在力を持っています。なんとかものにしていきたいと思っています。
修行っぽいです(笑)。また、成長、と言えば、スタッフの森川さんも、随分成長されてるように思いますよ。彼がんばってますね。
ライブでお客様、特におねえさま方(笑)にかなりかわいがって頂いて、だいぶしゃべれるようになってきた(笑)し、料理人としての自覚も出てきたようで、自発的に包丁を研いだり研究する姿勢がみえてきたりと嬉しい成長があります。店長だけでなく統括も森川くんも他のスタッフもみんな成長していく姿は嬉しいね。
社長だけでなく、スタッフの皆さんにとってもタフな期間となったわけですが、それがかえって個々の成長につながっているのかもしれません。また、一流の豆腐職人の原田さんや在インド大使館料理長だった石川さんらの技術はそう簡単に伝授できるわけもないですから。こうした数字には表れてこないけれど、自分も含めて全員いくつになってもレベルアップに努力するしかない、と教えられています。いつの間にか一流職人が集う店になっております。さあ、10月始まります。今週もありがとうございました。
続きます↓
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