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『進撃の巨人』快進撃の裏側:二次利用=ライツビジネスの最前線に迫る。

映画、ドラマ、アニメ、ゲームなど、エンタメ業界に関わる仕事・職種について考えるとき、真っ先に思い浮かぶのは「クリエイター」ではないでしょうか。

たしかに、私たちが目にするアニメやキャラクターの商品などは元を辿ればクリエイターによって生み出されたもの。一方で、キャラクターを利用したビジネスには「ライツ(版権)」という考え方も欠かせません。

今回のnoteではデジタルハリウッド大学(以下、DHU)で「キャラクターコンテンツマーケティング」の授業を担当し、株式会社講談社でライツビジネスを手掛ける立石謙介先生に話を聞きました。

クリエイターを志す学生が多いDHUで、ライツビジネスに関する授業を提供することにどのような意味や価値があるのか、立石先生が考える「ライツを介したエンタメ業界との付き合い方」などを紹介します。

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立石 謙介(たていし けんすけ)
講談社ライツ・メディアビジネス局 アニメ・ゲーム事業部次長。1974年生まれ。早稲田大学卒業後、(株)セガを経て、2001年に(株)講談社へ入社。コミック販売部、コミック宣伝部を経て現職。ライツビジネスには10年以上従事している。 『進撃の巨人』『炎炎ノ消防隊』『聲の形』など、さまざまな作品の映像化や商品化などを担当する。

日本を代表するコンテンツに携われるのが「ライツ」

——立石先生は講談社でライツビジネスを担当されているとのことですが、そもそも「ライツ」とはどういったものでしょうか。

ライツとは「版権」を意味する言葉なのですが、出版社で「ライツ」というと「紙や電子書籍以外のすべてのものを扱う仕事」とよくご説明させていただいています。ライツ事業部では、コミックや小説等を原作とするコンテンツの映像化・商品化・イベント化の窓口として、外部の企業への営業活動や版権の監修などを日々行っています。

クリアファイルやフィギュアなどのグッズの監修や、スマホゲームとのコラボなどの仕事をしていますね。最近だと資生堂さんともタイアップしていて、CMをご覧になった方もいらっしゃると思います。

こちらから営業に行き、こんな商品を一緒につくりませんかと提案する場合もありますし、お客様からコラボのお話をいただくことも多々あります。基本的にキャラクターをいかに活用するのか、その使用許諾を通して一緒に考えていくのがライツ事業部です。

——外部の方と作品をつなぐ立場なんですね。

出版社といえば、編集部があって本を出版するというイメージが強いと思います。なので出版に直接携わる部署では、作者や印刷会社、書店など関わる人がある程度決まっているケースが多いです。

しかし、ライツ事業部はキャラクターの活用ができる業種の方であれば誰とでもお仕事ができるため、関わる人が多様なのも魅力のひとつです。

アニメーション制作会社や声優さん、広告代理店、食品・飲料メーカー、コンビニエンスストア、温泉施設の広報や商品開発を担当されている方など、関われない人はいないかもと思えるくらい、さまざまな業種の方にお会いすることができます。

編集者は作者と二人三脚で作品づくりに注力するクリエイティブ寄りの仕事ですが、ライツ事業部はビジネス寄りの仕事がメイン。とはいえクリエイティブなことも要求される部署です。作品を0→1にするサポートをするのが編集部。すでにある作品を1→100に膨らませる一翼を担うのがライツ事業部ですね。

——立石先生は『進撃の巨人』のライツ担当と伺いました。そのときにされた業務を教えてください。

主にアニメのプロデューサーや、「進撃の巨人展」の企画・運営を担当しました。

プロデューサーを例にすると、まずは映像メーカーのポニーキャニオンさん、アニメ制作会社のWIT STUDIOさん(Season1〜3担当)やMAPPAさん(The Final Season担当)と一緒に、製作委員会としてアニメを完成させるまでの大枠を決めていきます。

どういうメンバーで制作していくか、どこで放映するか、制作費をいかに回収するか等を決めつつ、アニメ化に付随するキャンペーンや商品化などを行います。

その一環として行った「進撃の巨人展」は、たくさんの方に喜んでいただき、ファンの方たちの顔を直接見る貴重な機会でした。アニメ開始当初、SNSでの盛り上がりを見ることはできましたが、なかなか直接お会いすることができなかったのでファンの方々に直にお会いできて胸が熱くなったのを覚えています。

——『進撃の巨人』に関しては初期からずっとライツを担当されているんですね。

そうですね。約10年間位ですかね、おそらく『進撃の巨人』に関わらなかった日はないくらいです。ほかにも担当している作品はありますが、『進撃の巨人』に育ててもらったと言っても過言ではありません。数年に一度出るか出ないかのビッグタイトルに今でも関われているのは非常に光栄なことです。

「ライツ」を扱う働き方を知ってもらうために

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——立石先生は講談社で働いていらっしゃいますが、もともとライツビジネスに関心があったのですか。

いえ、入社するまでは正直ライツビジネスについて知りませんでした。最初はファッションをやりたくて。まさか出版社に入社して自分が映像を扱うようになるとは思ってもいませんでしたし、こんなにアニメに詳しくなるとも思っていませんでした。

——講談社にお勤めしながら、DHUで「キャラクターコンテンツマーケティング」という作品の二次利用をテーマにした授業を担当されています。講師になったきっかけは?

DHUの高橋光輝学部長(専門:コンテンツ産業論)からお話をいただいて、ライツビジネスを多くの方に知ってもらう良い機会だなと思ったのがきっかけです。

『重版出来!』『舟を編む』などの作品でも題材となっているように、出版社といえば編集者のイメージが強いんです。一方、私が扱っているライツビジネスというのは知名度が足りません。私も出版社に入ってからはじめて知ったくらいなので、知っている人はかなり珍しいと思います。

——どのような学生に受講してほしいですか?

DHUはエンタメ業界で働きたいと考えている学生やクリエイター志望の学生が多いので、映像制作や3DCGなどデジタル技術やクリエイティブなことを学ぶ授業が多いですよね。ただそれだけではなく、広告や企画を考えるビジネス寄りの授業もある。

ライツビジネスはみなさんの想像以上に私たちの身の回りに浸透しています。勉強したいことが決まっていなくても「とりあえず新しい世界を覗いてみたい」と思っている人にぜひ受講してほしいですね。

——学生にライツビジネスを知ってもらい、未来の選択肢を豊かにする授業なんですね。授業をする上で大切にしていたことはありますか?

2021年度はコロナ禍の影響で、オンラインで私が話をするスタイルの授業だったので、飽きずに聞いてもらえるような話をしました。

著作権や知的財産権などの知識を身につけてそれを応用する、といった学術的なものではなく、ライツビジネスという仕事があること、その面白さを伝えるための授業です。生きたものをお伝えするために、調べたらわかるような情報は極力省くことはかなり意識しました。

授業後のアンケートを見ると、「ライツビジネスという仕事を初めて知った」という意見が多く、出席率もかなり高かったので、楽しんでもらえたのだと思います。

授業を受けて「ライツを仕事にしたい」と思わなくてもOK

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——最後に、これから入学を控える学生や立石先生の授業を受けたことがない学生へメッセージをお願いします。

僕に限らず、DHUには講師をやりつつ別に本職がある実務家の教員がたくさんいます。ただ、無理に「先生と同じ仕事をやってみたい!」と考える必要はないと思っています。

私の授業を聞いて「もしかしたらライツは自分にあってないかも」と判断するのも大切なことです。株式会社ポケモンやサンリオなど、ライツビジネスを扱う企業は出版社以外にも身近にあります。なので、選ぶ・選ばないの選択をするために、色々な人の話を聞いてみてはいかがでしょうか

僕の授業は、アニメ『進撃の巨人』を1話以上見てくれば履修条件はクリアなので、気軽に楽しく受けてもらえると嬉しいです!

いかがでしたか?

デジタルコンテンツを創るための知識・技術と、それを世に広めていくための企画・コミュニケーション能力。その両方をデジタルハリウッド大学では学ぶことができます。

「興味がわいた」「もっと詳しい話を聞きたい」という方は、ぜひDHUのオープンキャンパスや説明会にご参加ください!

▼デジタルハリウッド大学公式HP


▼OPEN CAMPUS GUIDE 2021

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