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杉山知之学長による祝辞|2022年度学位授与式【デジタルハリウッド大学】

2023年3月19日、デジタルハリウッド大学15期生、デジタルハリウッド大学大学院18期生の学位授与式が執り行われました。卒業生、修了生の皆様、誠におめでとうございました。

本noteでは昨年に引き続き、杉山知之学長による祝辞を全文公開いたします。

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皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。皆さんの門出にあたり、私の気持ちを伝えさせて頂きます。

私は2年前に、10万人にひとりと言われるALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気となりました。脳からの命令が筋肉を動かす神経に届かなくなる病気です。人工呼吸器を付けたので、声を出すことができません。

そこで今日は、事前に収録した私自身の音声から、その特徴を抽出した声の分身を作成し、合成音声を生成するコエステーションのサービスを利用し、皆さんへの告辞を届けたいと思います。

話の内容は、ChatGPTが作ったものではありません。私のごく限られた知識と経験から作られたものです。


さて、世界はますます複雑となり、状況はさらに混沌としていると感じられます。この3年間は、新型コロナウィルスによる全世界を巻き込んだパンデミックに翻弄され続けました。世界の大都市から人々が消えた姿は、とても現実とは思えないものでした。

多くの人々が、自宅からオンラインで活動することとなりました。本学もオンラインでの授業となり、みなさんに駿河台でのキャンパスライフを送っていただく事ができませんでした。

さらにウクライナでの戦争。戦地から直接、リアルタイムでネットに上がって来る映像は、まさに第二次世界大戦のヨーロッパ戦線そのものでした。これが2022年に起きていることとは信じ難いものです。

そして、21世紀らしく、一般人が曝されている情報戦は、凄まじいものです。ネットを駆け巡る情報から、何が真実か見極めることは極めて困難な状況となってしまいました。

時を同じくして、人工知能が絵を描き始めました。ベースとなるビッグデータは、この四半世紀に人々がネットにアップし続けた画像たちです。半年もすると、AIが描く絵画は芸術的価値を論じるべきレベルにまで成長していきました。

そこに現れたのがChatGPTです。自然言語で、AIとやりとりができるプラットフォームは、広大なネット空間に置かれている、膨大な情報を深く学習し、我々の問いに対する適切な答えを、個々に、無限に、与えてくれるのです。このことは、世界トップクラスのコンピュータサイエンスの研究者たちからも、驚きを持って迎えられています。シンギュラリティは目の前となりました。

もうひとつ忘れてはいけないことは、民間企業開発のロケットが、地球と宇宙空間を往復し始めたことです。これまでは捨てられて、燃え尽きるしかなかった巨大な第一段ロケットが、逆噴射しながら地表に垂直に降り立つ姿は、まさにサイエンスフィクションがリアルになった瞬間でした。スペースX社の偉業をたたえずにはいられません。多惑星種としての人類の未来が始まったとも言えるでしょう。

一方、本学では、もうひとつの宇宙であるメタバースの利用が自主的に広がり、多くの学生が自分のアバターを持つようにもなりました。

いやはや、盛りだくさんです。一昔前なら、人生で一度経験するような出来事ばかりですね。これだけのことが在学期間中に起きるとは、奇跡と言えるでしょう。これらの事実を、これからどう生かすか、みなさんの判断に委ねられているのです

僕が30年前、ワークステーションでネットにアクセスして体感した、世界中のコンピュータが繋がることにより、21世紀の世界は全く異なる世界になるという感覚が、今、一気に様々な現実として起きているようです。僕が学校を作った理由は、急速に発展するテクノロジーに翻弄され、何が起きているか理解できずに、不安な日々を送る人達に、みなさんになってほしくなかったからです。

21世紀のすべての変革のキーは、デジタルテクノロジーであり、そこに繰り広げられる、人と人のコミュニケーション、人と機械とのコミュニケーション、機械と機械のコミュニュケーション、さらに、地球に存在するものすべてとのコミュニケーションが、未来を創っていくのです。デジタルコミュニケーションを自分のものとして操るために、様々なことを学ぶ学校として設立したのが、デジタルハリウッドなのです。

本日、大学は第15期の卒業生を、大学院は第18期の修了生を、送り出すことになりました。幸い、大混乱の21世紀の世界においても、12世紀からの歴史を持つ大学という高等教育機関が発行する学士号・修士号は、世界的に同等のものとして扱われています。ここでは、人類が生み出した文化と伝統が、良い意味で生きているのです。

学位は必ずや、みなさんの未来に役立つことでしょう。本年度からは、紙に印刷された証書と共に、NFTでのデジタルの証書も発行します。ぜひ、みなさんが学業に励まれた証しとして、使ってください。

学長としての願いは、これからも様々な節目で、大学と関わって欲しいということです。求人、起業支援、共同研究、大学院への進学など、大学との接点は卒業後も多くあるのです。すでに、学部の卒業生で、教員として教壇に立たれている方もいます。今日は、みなさんとの別れの日ではありません。新たな関係が始まる日なのです

Entertainment. It's everything.
みんなを生きるな。自分を生きよう。

みなさんの未来に栄えあれ!

(photo by Eiki Tanada)

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