見出し画像

杉山知之学長による祝辞|2021年度学位授与式【デジタルハリウッド大学】

2022年3月20日、東京大手町・日経ホールにて、デジタルハリウッド大学および大学院の学位授与式(卒業式・修了式)が行われました。卒業生の皆様、ご卒業誠におめでとうございました。

本noteでは式典の最後、杉山知之学長による祝辞を全文公開いたします。

----------------------

画像1

みなさん、ご卒業誠におめでとうございます。僕はいま、車椅子での生活になっていますけれども、デジタルコミュニケーションのおかげで日々の仕事を続けさせていただいています。今日もステージ横で学位記授与の様子や卒業生・修了生代表による謝辞、そして弊社代表の挨拶を聞いておりました。

まずはこの2年間、学習をするのに困難な状況の中、教える側もオンラインで教えていくという初めての挑戦の中で、修士課題または卒業制作をまとめ、今日の卒業を迎えられたみなさんは、本当にすごいことだな、素晴らしいなという感動を覚えております。

我々はCOVID-19によって、歴史的な事象に巡り合ったわけです。僕らがまさに歴史で習ったスペインかぜーー感染者はCOVIDの方がもっと多いんじゃないかと思いますがーーに匹敵するような感染症に対して、科学技術やコンピュータの力をフルに活用して、数か月でワクチンができた。これに関しては、やっぱり人類はちょっとは進んだんじゃないかなと。

僕は1990年代からオンラインとかリモートワークみたいなことができるとずっと信じてやってきたけれど、人間は習慣とか文化とか歴史を背負ってしまうがゆえに「できるんだけどやらない」ということもたくさんあります。でもウイルスのおかげで、と言っちゃいけないんですけれども、デジタル化とかDXとか、保守的でなかなか受け入れない日本においてもだいぶ変わったなと思ったわけです。

ウイルスが収まれば、僕にとって東京で2回目のオリンピックを迎えるはずでした。世界の人が集まって、みなさんも競技場まで見に行ければ良かったんだけれども(、1年延期かつ無観客で行われた)。これも日本の歴史として大きなことだったわけです。それでも冬のオリンピックが北京で行われて、素晴らしいなと思っていたところに、ウクライナの問題が起きました。

我々の大学にはロシアからの学生もウクライナからの学生もいます。本当に心が痛みます。みなさんに言いたいのは、人生の中では歴史的な事象を目の前にすることがあるということです。みなさんは若いうちに大きな経験をされた。僕はもう年寄りですが、みなさんにとってはこれがひとつのきっかけとなって、未来を考えてほしいし、良き未来を作るということに貢献してもらいたいと心から思います。

現状テレビで流れてくる映像というのは、僕が小学生ーー1960年代ですけれどもーーの頃に見た、第二次世界大戦の記録映画とあまり変わらない。タンクが出てきて、ビルが壊れて、ヨーロッパの古い町並みが壊されていく。だけどももう一方では、デジタルコミュニケーションがあって、兵士それぞれが自分のスマートフォンを持っていて、母国とやり取りしている。(先の大戦の頃とは)まったく違うことが起きていると思うんですね。

たった一人が何かやったことでも世界に影響する。地域紛争だけでなくすべての国々のさまざまな問題にあっという間に波及する。たくさんの企業も巻き込まれますし、単純に政治や経済だけの問題ではない。我々に対して精神的に大きな、重いものを残している。

みなさんはこれから社会に出て、decision-makingをしていく、リーダーとなっていく人たちです。デジタルを操れるというのは力です。それをどう使うかはみなさんの判断です。でもそこには、どこかで自分のことだけを考えるんじゃなくて「利他」の心がある。

利他、っていっても大変ですよね。いろんな立場のいろんな人が地球上に90億人もいるわけですから。何が正確な答えかは誰も分からない。でも人間って脳があって、いろんなことを感じることができて、新しいものを作れる。単純に同じような生き方をしているわけじゃない。それが人類以外の他の生物と違うところだと思うんですね。

他の生物は何万年も同じような暮らしをしていることが多いわけですけども、私たちは自分たちで決めることによって変えていける。それも非常に短い時間で状況を変えていける。今までは「自分ひとりがどう考えたって別に世の中変わんないよ」みたいな形だったと思うんですけれど、そんなことはない。1990年以降の状態から見れば、たったひとりの若者が始めたことが世界中の人に影響していくことって何度もあるわけですね。それはみなさんも同じです。

たとえ何億人に影響がなくても、例えば作品を作れば何十万の人に影響するし、会社を作ればそれに関わったお客さんや一緒に仕事した人など、意外と多くの人に自分のdecisionが関わります。それによって「こういう人生って嬉しいな」というふうに答えや結果が出る。こういうことをいつも、いつも考えながらこれから行動してほしいと思います。

みなさんは次の世代、これから生まれてくる人たちにいろんなことを繋げていかなきゃいけない。高等教育機関といわれる大学や大学院での生活を終えて社会に出る人が多いと思うんですけれども、自分はそういう責任を持っているんだ、そしてここで学んだパワーを良きものとして使おう。そのことを心に刻んで、今日の卒業を迎えていただければ、学長としては本当にありがたい。

みなさんの未来に栄えあれ。おめでとう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?