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人材業界の最前線から”未来の働き方”を考える。デジタル×ビジネスな「人材開発論」ってどんな授業?

デジタルハリウッド大学(以下:DHU)には、デジタル表現を生業とする教員だけでなく、人材業界や広告業界など、ビジネスの最前線で活躍する教員も数多く在籍しています。「広告発想論」「金融論基礎」「ブランディング」といった科目がDHUのカリキュラムに含まれていることからもわかるように、これからの未来を生き抜く上ではビジネス的な知識や視点は欠かせません。

今回のnoteでスポットを当てるのは、「人材開発論」。文字通り人材、そして「働くこと」をテーマにした科目です。

これからの職業人にとって、働くとは? 人材とは? 高校生の皆さんにとって、この記事が今後のキャリアを考えるきっかけになるかもしれません。

リクルートでHR統括編集長を務める藤井薫先生

人材開発論の担当教員は、株式会社リクルートで20年以上「働くこと」に向き合ってきた藤井薫先生。マスコミからの取材や社外講演、執筆活動を通じて、新しい働き方、そして生き方の「今と未来」について発信しています。

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藤井 薫(ふじい かおる)
1988年、慶応大学理工学部を卒業後、株式会社リクルートに入社。以来、人と組織、テクノロジーと事業、今と未来の編集に従事。B-ing、TECH B-ing、Digital B-ing(現リクナビNEXT)、Works、Tech総研の編集、商品企画を担当。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長・ゼネラルマネジヤーを歴任。2008年より、リクルート経営コンピタンス研究所エバンジェリスト、2014年より、リクルートグループ広報室社内広報誌編集、リクルートワークス研究所を兼任。著書に『働く喜び 未来のかたち』がある。

これからの「働く」をデザインするための授業

——まずは、人材開発論の授業内容について教えてください。

「人材開発論」と聞くと、企業の人事や専門的な経営戦略の話をするのかも?と思う人がいるかもしません。しかし、ひとことで言えばこの授業は「皆さんがこれからどう働いていくか、生きていくか」を考える、そのヒントとなる時間です。

DHUでは、デジタルに関するさまざまな専門スキルを磨くことができます。しかし、それらはあくまでも他者に価値を届けるためのツールです。それを誰に届けるのか、どう届けるのか、そもそも何故届けるのかは、自らが設計していく必要があります。

未来の働き方をデザインしていくために、人材開発論には下記の3点からキャリア設計を考えていく時間があります。

Will:自分がやりたいこと
Can:自分ができること
Must:社会から求められていること

いつかは大学を卒業し、就職や起業して仲間とともに社会変革に尽力するときが来るでしょう。そのとき、自分はどんな意思(Will)を抱き、どんなスキル(Can)を磨き、どんな社会の「不」を解決していくのか(Must)。3つが重なるポイントを見つけていくことが、これからの働き方を考えていく上で重要になっていきます。

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この3つは、働く喜びを得ていくためにどれも欠けてはならない要素ですが、その中でも重要なのはWillです。Willが欠けてしまうと、継続的に価値を提供することがとても難しくなります。

たとえ自分に能力があって、社会からの期待に応えられたとしても、実は自分が心からやりたい仕事ではなかったとします。その状態では、短期的には価値を提供できるかもしれませんが、自分の内側から湧き上がる気持ちや自分の存在価値を見失って、ワクワクした生き方から遠ざかってしまうことになります。

理性的に考えて頭がやるべきだと考えていることよりも、自らの中にある心からやりたいと感じる内発的な動機がないと、何ごとも継続が困難になってしまいます。

個人の生き方が多様になっている世の中で、あなたはどんなことに自分の人生を懸けていきたいのか。それを教員や他の受講生と一緒に考えていこう、という授業です。

社会、働き方、個人の生き方の変化。それらを構造的に捉える力を養う

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——人材開発論の授業の到達目標として「自分の立脚点を自覚して、自身の今後の展望に向かって効果的な学生生活が送れるようになる」が掲げられています。こちらについて詳しく教えてください。

この授業の目的は、社会の変化、それに伴う働き方の変化、そしてそれに影響を及ぼす個人の変化というように、変化の構造に自分で目を向けられるようになることです。世の中が変わったりテクノロジーが発展したりすると、働き方も変わってきます。すると、一人ひとりの生き方にも影響が出てくる。たとえば、下記のように段階的に変化していきます。

テクノロジー:デジタル技術の急速発展
社会:急速な人口減少や高齢化、サービス経済化、地球環境の劣化、感染症拡大
組織:クローズで階層的から、オープンでフラットな組織へ
働き方:テレワークによる時間や場所を自由に選べる働き方、副業の拡大
個人の生き方:企業寿命と職業寿命の逆転で、終身雇用より終身成長ができる生き方へ

ひとつ例を挙げるなら、労働人口の減少や定年退職時期延長の流れも、個人の働き方に確実に影響してきます。

——定年退職の話は、学生にとって遠い未来のように感じます。どのように影響してくるのでしょうか。

一見関係なさそうに思えることでも、木を見るのではなく森を見てみると、自分にもどうやら関係してきそうだ、とわかることはたくさんあります。

労働人口が減少すると、必然的に人材確保の難易度が上がります。働き手の数を維持するためにも、現在働いている人が長く働けるよう、企業は定年退職の時期を徐々に引き上げているのです(参考:経済産業省「生涯現役社会に向けた雇用制度改革について(2018)」)。なかには、定年制度を撤廃した企業もあります。

働き手としての寿命が伸びている一方、企業の平均寿命は2020年時点で23.3年というデータもあります(参考:東京商工リサーチ「2020年『業歴30年以上の"老舗"企業倒産』調査」)。

——つまり、ひとつの企業で生涯働き続けることが難しくなっている?

はい。今後、企業の寿命と働き手の寿命の差がますます拡大してくることが予想されます。企業の寿命が約25年、働き手の寿命が約50年とすると、単純計算で少なくとも2種類以上の会社で働く必要がある。企業の流れに身を任せたり、周りの人と似たようなキャリアを歩んでいく時代が終わりかけているのは、日々実感しています。

生涯現役時代の到来に伴って「終身雇用」が崩壊し、個人としての「終身成長」が求められるようになります。すると、今度は企業の採用戦略が変化し働き方が変わってくる。

——どう変わるのでしょうか?

たとえば、採用の現場では企業の採用基準が変わってきています。個人の専門スキルがいかに優れているかではなく、スキルを何の課題解決のために使うか、顧客の体験価値を向上するために、スキルをどう使うか仮説を設定するといった、目的志向性課題設定力を重視するようになっています。

同時に、技術に加えて、不特定多数の人を巻き込めるような対人能力や、自分はこれをやりたいんだとみんなの目標となる旗を立てられる主体性が評価されていきます。

——そこで個人の生き方も変わっていく必要がある?

はい。最初に話した通り、人口動態・サービス経済化・デジタル化・フラットな組織の出現といった社会構造の不可逆な変化から、個人の生き方の変化を考えていく必要があります。個人のあり方として今後重要になってくるのは、変化の時代をリードするためのアントレプレナーシップ(起業家精神)です。

私はいろんな起業家の方とお話をする機会がありまして、彼らと接する中で共通して感じることがあります。それは、皆さんが人間ならではの命を燃やしていくような力を持っていること。人間はいつか必ず死んでしまう。だから「あなたは何に命を燃やすか」「今日死ぬとしたら、本当にそれは今日すべきことか」などを自らに問い続けてほしいのです。

労働環境の変化やテクノロジーの発展など、自分には関係のないように思える事象でも、そこに関心を寄せ自分事として落とし込むことはできます。この授業では社会環境に興味を持ち、「自分はどんなことがしたいのか」「自分は何ができるか?」「自分は誰の期待に応えるプロフェッショナルになりたいのか」を自分の言葉で考える視点を持てるようになるはずです。

自分の人生を歩んでいくために、まずは自分の言葉で語れるようになろう

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——学生の授業中の様子や最終レポートを通じて、彼らの変化を実感することはありましたか?

自分の考えを、きちんと自分の言葉で具体的に表現する学生が増えてきたと思います。

人材開発論では、「働くとは何か」「人材とは何か」を私が話すだけではなく、学生と一緒に考えてきました。その考えてきたことを自分の言葉で語れるようになることで、未来のキャリアを描くためのヒントになるよう授業内容を組み立てました。

——具体的にどのようにして、学生たちに問いかけたのでしょう。

私が授業をする上で重視しているのは、双方の学び合いです。これはキャッチボールのようなもので、相手に対して自分が面白いと思っている「関心」を投げ込むことが大切なんです。

ではそれをどこに投げるかというと、相手が取りやすい位置に投げる。キャッチボールでは、相手の体の中心から離れたところに投げたら、相手に取ってもらえないですよね。具体的には今年話題になったアーティストの話や誰もが知っているようなアスリートの映像など、学生が吸収しやすいと思う形で、伝えたいことを投げかけています。

板書をしながら話をするだけで一方的に情報を投げていくトーク&チョークではなく、オフラインでは歩き回って学生にマイクを向け相互にコミュニケーションを取るウォーク&ダイアログの授業をしています。2020年度からはオンラインの授業になりましたが、幸いブレイクアウトルームを活用できたため学生とも双方向のコミュニケーションが取れました。

——なるほど、授業そのものが藤井先生と学生とのコミュニケーションのようですね。

そうかもしれません。

最終課題として、今までの授業の内容を踏まえて自分の考えを書いてもらう、答えのない問いを出題しました。学生によってどこに関心があったから、何が自分の中に刺さっていったのかは千差万別。将来どんなことに活かしたいのか、最終課題ではきちんと自分の言葉で書かれていたので、この授業で伝えたかったことが伝わったんだと実感できました。

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——全8コマの授業を終えて、受講した学生にどんなことを期待しますか?

私はいつも授業で矛盾のある両端性の話をしています。ひとつは自分の人生を生きてほしいということ。本当にやりたいことを見失ってまで、他人の人生を生きる必要はありません。

その一方で、自分の人生を歩む中、他者に貢献してほしいというのがもうひとつ。自分の人生を歩むには、ひとりでは進んでいけないのも事実です。

自分なりの旗を立てて、楽しみながら自分の人生を歩むこと。自分の持ち味で他者の人生を楽しませること。それぞれ矛盾していますが、どちらか一方が欠けても豊かな人生は歩めないので、そのバランスを問い続けてほしいと思っています。

——最後に、受験生の皆さんへひとことお願いします。

私の授業だけでなく、DHUには学生の可能性を拡張できる授業がたくさんあります。あなたの持ち味をどこへ向けて、どのように拡張していくのかは、DHUで学ぶ中で最もワクワクすること。ぜひDHUで学びを深めてほしいです。

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デジタルハリウッド大学では、定期的にオープンキャンパスを開催しています。自宅で気軽に模擬授業を体験できるWebオープンキャンパスに加え、実際にDHUを体感できる校舎見学会(DHUFANCLUB会員限定)も毎月開催しています。

興味を持っていただいた方は”OPEN CAMUPUS GUIDE”をチェックしてみてください!


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