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すべての道は仏教に通ず【#002 中島みゆきさんの「糸」】

中島みゆきさんの「糸」


中島みゆきさんの「糸」っていう歌、一度は耳にしたことがありますよね。卒業式や合唱コンクールなどで定番のあの曲です。

(^^♪
「縦の糸はあなた♫  横の糸は私♫  織りなす布はいつか誰かを暖めうるかもしれな~い♬
縦の糸はあなた♬  横の糸は私♪  逢うべき糸に出逢えることを♩  人は仕合わせと呼びま~す♬」
(^^♪


なんかこの曲、耳にしただけで涙が込み上げてくるんですよねぇ。トシのせいかもしれません。とても素敵な曲です。 

お経は「糸」という意味


この曲の中に「縦の糸」・「横の糸」という言葉が出てきます。それを耳にする度に「お経」を思い出してしまうのです。だって「お経」ってサンスクリット語で「スートラ」って言うんですけど、「スートラ」のもともとの意味は「糸」とか「線」とか「ワイヤー」という意味だからなんです。

 
ご存知のように、織物は「たて糸」と「よこ糸」で構成されています。「経」という言葉が、なぜ「糸」という意味を持つのかについて、きちんとは説明できませんが、インド哲学において「スートラ」とは、深い内容を短い言葉で簡潔にまとめあげたものを指します。覚えやすいようにしたのだと思います。中にはえらい長いものもあり、精読すると何か月もかかるものもありますが、でも大体において「スートラ」というものはシャープに仕上がっています。簡潔な「スートラ体」という文体があるくらいですから。

 
まあ、そんなことはどうでもいいのですが、この「糸」という曲の「たて糸」と「よこ糸」という表現の奥深さが身に染みます。

お経は「たて糸」か「よこ糸」か?


織物って「たて糸」をまず張っておいて、そのあと「よこ糸」を通す作業が行われます。専門的なことは分かりませんが、垂直方向に並んでいるのが「経糸(たていと)」で、その間を縫うように左右に往復している糸が「緯糸(よこいと)」だということは素人の私でも分かります。
 

よくテレビで目にする、例のあの織物の光景です。話によると経糸が効いているので、縦方向に引っ張っても生地はそれ以上伸びないらしいです。でも横に引っ張ると柔軟に伸び縮みするそうです。

そういう意味からすると、「お経」はまさしく「経糸」と言えるかもしれませんね。「経糸」は織物それ自体の基礎となるプラットフォームのようなものなのでしょう。お経と我々との関係を考えてみても合点がいきます。


 経糸が織物において重要な役割を果たしているのと同様に、お経が仏教徒にとって「人生の指針」という大切な役割を果たしているから、これら聖典類を「スートラ」と称したのかもしれません。
 

ちなみに「お経」というのは、ブッダの語った言葉を書き留めたものと理解されているかもしれませんが、目の前で早稲田速記のように書き留めたわけではありません。文字化するまでに何百年という相当な時間を要しています。

 
それゆえ、正確に伝承されていないのではないかという疑いを持つ人がいます。この点については確かにその通りかもしれません。インドでは当時文字を記す文化をまだ持ち合わせていませんでした。インド人の類まれなる記憶力について熱弁することでこの疑いを払拭しようとする人がいますが、なんせ2500年も前の話しです。実際どうだったかなんて誰にも分かりません。

 
ただ一つ言えることは、古いお経であればあるほど、ブッダと時代を共にしていた仲間や弟子たちが、その編集に関わっていた可能性があり、より信憑性が高いということです。
 

また、時代を経た後で作成されたお経だからといって無意味であるともいえません。このあたりのことについてはおいおいお話しさせていただくとして、今回は「経」を表す「スートラ」というサンスクリット語が、「糸」という意味を持っているという事実をお伝えしたかったのです。

お経が「糸」である意図とは?

 
人間の行いや周囲で起こる様々な事象には「真理」というものが常に働いています。言い換えるならば、事象と言われるものの背後には必ず何か一本「糸」のようなものが張られているということです。

 
それは、すべての事象を貫いている「法則」のようなもの、つまり「真理」であるとなります。その糸から外れた事象は何かおかしいのであって、またその糸から外れた行為というのもやはり法にそぐわないものとなるでしょう。

 
この「法」という言葉は、意味が多岐にわたるインド哲学の専門用語です。サンスクリット語で「ダルマ (dharma)」と言いますが、この語の指しうる内容については今後お話しさせていただきます。

さいごに


中島みゆきさんは「たて糸」を「あなた」だとしています。もしそんなこと言われたら、「よこ糸」である彼女を好きになってしまいそうです。でも私から見たら彼女が「たて糸」になるんですよね。いやそんなことはどうでもいいですね。この歌は、ホント名曲ですよね~。

それでは、また。

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