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ミステリーのない幸せな社会

 英国・スコットランドに、たくさんの犬が飛び降りる (自殺する) 橋があるという新聞記事を読みました。英国と言えばネッシー伝説をはじめとして、ミステリー・サークル、たくさんの幽霊話で有名なお国柄なので、これまたそのようなミステリーのたぐいかなと思い読んでみました。教師、動物行動学者などが調査し、さまざまな推理をしているのですが、未だ原因は特定されていないとのことです。
 念力、予言、UFO、雪男など、科学的にはあり得ないと言われるミステリーは、科学の発達した現代においても人々の関心を集めています。科学・技術を生業としているにも関わらず、私もミステリーには後ろ髪を引かれるます。なぜ人々はミステリーに魅かれるのでしょうか? ミステリーを科学的扱えば頭がすっきりしそうですが、この世界が完全に科学的に理解できたとしたら、どんな価値が生まれ、どんな価値が失われるでしょうか?
 人工知能を使って最善の手を打てば、オセロ・ゲームは必ず引き分けに帰結するゲームであることことが分かったそうです。最強の棋士同士が対戦して必ず引き分けになるとわかっているゲームは、やっていて楽しいでしょうか? 勝敗が分からない中で、勝つことで得られる喜びを期待してやってみるという冒険心が生まれるのではないでしょうか。
 また、なぜ人々は小説を読むのでしょうか? 読むのが大変だからと言って、結論が手短に分かるようになれば、小説を読む楽しさは増すでしょうか? 先が読めないことが小説を読む楽しさの主因ではないでしょうか。
何でも効率よく手軽にわかることの快感は、長い人生においては「うたかた」であると思います。したがって、世界のミステリーは、決してなくなることはないでしょう。なぜなら、将来を完全に理解・予測できる方向に進む科学・技術文明がもたらす「つまらない未来」に対する抵抗感から、ミステリーは生み出されているのですから。


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