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CI開発における「組織のナラティブ」について

こんにちは。ミミ&グリ(DONGURI Mimicry Design)でデザインシンキング・コンサルをやっています、矢口泰介(@yatomiccafe)です。

DONGURIとMimicry Designは2020年3月をもって資本業務提携を結び、国内におけるイノベーションを加速させるために活動することとなりました。活動について詳しくはこちらのメディア「idearium」をご覧ください!

今回は「CI開発における組織のナラティブについて」というテーマで書いてみます。このテーマで書こうと思った経緯は、昨年関わった、とあるクライアントの「CIリニューアル」のプロジェクトがきっかけです。

そのプロジェクトの成果物は「企業ロゴ」でしたが、成果物と同じくらい、「開発プロセス」をどうデザインするか?ということが問われたプロジェクトでした。

思えば、そういった成果物の開発以前の、混沌とした状態からプロセスをどのように組み立てるのか、については意外と言語化されていないかもしれないと思いいたり、今回それを試みることにしました。

※「CI」はコーポレートアイデンティティの略です。CIの定義や在り方は、時代とともに更新されていますが、今回はその厳密な定義よりも、機能性や目的性に着目して語っていきます。あしからず・・・。

CIリニューアルの背景に「組織課題」がある

CI開発/リニューアルは、完成したアウトプットと、そのデザイン設計プロセスが公開されることが多いです。

それらの記事はとても刺激があり、参考になるのですが、そこからさらに遡って、「ビジュアル設計以前のプロセス」が共有されることはあまり多くありません。

なぜかというと、そもそも、組織の根幹であるCIを変えよう(あるいはしっかり定めよう)という大きな決断が起こる背景には、立ち上がったばかりのスタートアップを除き、前向きであれ、後ろ向きであれ、何かしらの「組織課題」が存在していることが多いからです。

そうした背景をもったプロジェクトである場合、成果物としてはCIに付随する言語/視覚的なアウトプットを目指しながらも、そのプロセスには起点となる「組織課題」への目配りが欠かせないということになります。

つまり、そうした背景を持って始まったCIプロジェクトは、必然的に「組織開発」的な性格を帯びることになります(「組織開発に関わる複数のプロジェクトの一つ」として位置づけられるケースもあります)。

CIリニューアルは混沌から始まる

そういった性格を持つプロジェクトは、具体的な成果物としてのビジュアル/言葉の設計に、いきなりダイレクトに進めることは稀で、まず「まず何からやればいいのか」と途方に暮れるところから始まることが多い、あるいは、いきなり成果物に着手したはいいものの、どこか違和感がつきまとう、ということが多いのではないでしょうか。

ミミグリでは、そういった混沌状態からお話をいただくことが多く、クライアントと伴走しながら、課題を解きほぐしていき、プロジェクトを形作っていきます。

ここでようやく今回のテーマですが、そうしたプロジェクトにおいて、混沌状態を脱するヒントの一つに、「組織のナラティブをどう取り戻すか」ということがあります。

組織のナラティブとはなにか

組織のナラティブとは、その組織で流通している「主流の物語」というイメージです。端的に言うと「自分たちは何者で、何を目的として、何を大事にしているのか」などです。

※今回の「ナラティブ」という言葉については、社会構成主義や心理療法で使用されている意味を一応なぞっていますが、その定義や文脈を100%踏まえたものではないので、あしからず・・・笑

これらは、一般的に、「理念」とか、「ミッション・ビジョン」といったラベルで言語パッケージされている場合が多いのですが、これが単なる「お題目」と化し、誰も血肉化していない状態に陥っている。この状態が、「組織上の課題」と認識され、CIプロジェクトの起点となっている場合があります。

この「組織内でナラティブが共有されていない」状態は、WHYを問わない部分最適が進んで組織の硬直化を生んだり、いつまでもマネジメント負荷が高い状態が続く、などの現象の原因になります(ただ、こちらも卵が先か〜の場合があり、そういう状態が長く放置された結果、ナラティブが失われたケースもあります)。

ということで、そういう状態で「CI開発」を行う場合には、失われている「組織のナラティブ(物語)」を、取り戻すことが重要になると思います。


※ただ、組織の硬直化は、一発で解決できる特効薬はなく、「組織開発」などの関係性へのアプローチと、「組織デザイン」という組織の構造に着目したアプローチと両面での施策が有効です。

なぜナラティブは失われているのか?

混沌を抜け出すプロセスは、「なぜナラティブが失われているか?」の理由(あるいは、本当にナラティブは失われているのか)の探索から始まる場合が多いです。

一般的に「理念」という言語パッケージが、「お題目」となってしまっている場合。

1. 組織のフェーズが変わったのに、言葉だけが変わっていない
2. 人が増え、組織が階層化するなどで、伝達の機会が失われた
3. そもそも最初から芯を食った言葉ではなかった
4. 事業のスケールでやってきたため、ナラティブを意識していなかった

などなどが理由として考えられますが、おおわくのところは「理念(などの組織の物語)」と「日々の仕事」とが、結びついていない、という体感に帰着するのではないかと思います。

ナラティブの「原型」を発見する

さながら考古学者のように、リサーチは、なぜナラティブが組織内で失われてしまったか、もともと、どんなナラティブが存在したのか、を探索することが、私リサーチャーとしてのワクワクするところです。

# 発見〜情報構造の発見のプロセスでだいたいやること
1. トップ(経営層)のインタビュー(事業理解、組織理解)
2. ステークホルダーのインタビュー
3. 上記により、語られる内容の共通点と差異の発見
4. さらに、組織内階層やポジションにおける理解や認識の差分の発見

このプロセスで発見するのは、ナラティブの「原型」です。

この組織において「一番大事にされていること」は何か。それがメンバー間で食い違っていたり、理解がずれていることはないか。言葉と行動がずれていないか。その「ズレ」はなぜ発生し、そこにどんな意味があるのか。そのズレに対してどんな情報を付加していくことができるか。

くるむWeb

ざっと、このようなことを探索〜発見するのが、このプロセスです。

ナラティブの原型が、無事に可視化され、言語化されると、混沌状態にやや光が指します。私はこのプロセスにおいて、リサーチャーという肩書の面目躍如を感じることが多いです。

ナラティブを再び取り戻すために

上記で原型が発見された段階で、CI開発プロジェクトは大きく分岐します。すなわち、成果物を開発するための情報のブラッシュアップと、発見された「ナラティブの原型」を再び組織のナラティブとしていくための組織開発プロジェクトです。

失われた組織のナラティブを取り戻すためには、まさしく組織開発的なプロセスが必要となりますが、目的に沿って設計された、組織内での「対話」が必要となります。

対話の目的の例
1. 日々の仕事と「組織で大事にしているもの」を体感として結びつける
2. 組織内で「ズレ」が生まれている部分に着目し、その意味を問い直す

対話を行うことは、「適応課題」に対するアプローチとなります。

私の例でいうと、過去のプロジェクトにおいては、日々の仕事と理念とを結びつける「体験作文」などのワークを通じた対話などを実施しました。

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これまで「対話」といえば、直接対面して、というのがデフォルト条件でしたが、今後はおそらくリモートワーク環境でオンラインで実施、という条件下で行われることが多くなると予測されます。オンライン環境下での対話方法も、ミミ&グリでは日々研究しております。

まとめ

今回は「組織のナラティブ」というテーマに沿い、CI開発プロジェクトについて書いてみました。CIには様々な可能性や、側面があるため、一般化はできませんが、不透明な状況の中、今後ますます「形骸化していない実のあるCI」を掲げ、組織内外を巻き込んでいくことが、重要になるだろうという気がします。

私も、組織イノベーションに携わるミミグリのメンバーとして、相談に乗れればと思いますので、混沌状態に陥っている場合は(笑)お気軽にご連絡ください!


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