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【デザインシンキング・コンサル⑤】ユーザーインタビューの「成功実感」を得る

こんにちは。DONGURIでデザインシンキング・コンサルをやっています、矢口泰介(@yatomiccafe)です。

私はプロジェクトにおいて、よくユーザーインタビューを行います。

そのとき、全てつつがなく、できれば満足感のうちに終えられるのが望ましくはあるのですが、どうしても

「今日のインタビューはうまくいった。」
「今日はいまいちだった。もっとうまくできたのではないか」

など、「成功実感」に波が生じるときがあります。
もちろん、「まったくの失敗だった」というケースは困るのですが・・・(ヒヤヒヤ)

この「成功実感」とは、あくまでリサーチャー個人の感覚です。

ユーザーインタビューについて調べると、様々なインタビューの手法や技術について書いた記事はありますが、「どういうときにユーザーインタビューは成功と言えるのか?」を、リサーチャーの目線で書いた記事は少ないように感じます。

それは、「成功実感」が、手法や技術によって、直接的・自動的にもたらされるものではなく、現場において、個人の感覚の積み重ねとして生まれるものだからでしょう。

今回は、そんなリサーチャーの感覚としての「ユーザーインタビューの成功実感」にメスを入れ、「成功実感」とは何か、どういうときにもたらされるか、を、なるべく自分の言葉で分解してみようと思うちょります。

ユーザーインタビューとは何か?

事業の開発や改善において、ユーザーから情報を得ることは、リーン開発の必須プロセスです。

そのため、ユーザーインタビューを行うことは特にスタートアップにおいてはすでに当たり前のプロセスですが、最近では、企業規模を問わず、その必要性についての認識が高まっているように思います。

よく、ユーザーインタビューの成功を語るときに「ユーザ自身も気づいていないインサイトを発見する」という表現が用いられますが、これは

「ユーザーの本音をずばり言い当てて、鼻を明かしてやるんだぜ!」

という話ではありません!(そんなこと誰も思ってないと思いますが・・・)。

UX文脈におけるユーザーインタビューは、そもそも「インタビュー」というものの一般的イメージとは異なっています。実は、ユーザーインタビューは「ユーザーの言葉」を取得するものではないのです。

ユーザーインタビューで得るのは、「ユーザーの行動」になります。

ユーザーインタビューの目的は、行動の理由、行動様式、行動を生み出す構造(文化や文脈)、あるいは、特定の状況下における行動そのものを、抽出することにあります。

なぜ、こんなしち面倒臭いことが目的なのかというと、そもそも人は、なぜ自分がそのように行動するのか、について説明ができない(!)からです。

行動経済学の発展が示すように、人の行動は「説明できないけどなぜかやってしまう」という不合理なものなのです。脳がそうなってるから仕方がない。

従って、ユーザーインタビューは、そもそもが「ユーザー自身が気づいていない(言語化できない)インサイト(行動)」を取得するためのものなのです。

そのために、ユーザーインタビューには、質問設計から、実際のインタビュー手法まで、目的に応じて様々な手法があります(というか、ユーザーインタビュー自体がリサーチの一つの手法です)。

失敗するユーザーインタビューとは?

ユーザーインタビューの成功について考えるために、逆に、明確な失敗パターンを考えてみます。

まず、ユーザーインタビューは「定性調査」(質的調査)であるため、「調査目的」がないといけません

UX文脈におけるユーザーインタビューの場合、「調査目的」は、事前に立てた「仮説の検証」となることが多いでしょう。
プロダクト開発であれば、プロダクトを使う根拠となる行動背景が存在するかどうか。あるいはプロトタイプを触ってもらい、仮説通りに使ってくれたかどうかなど。

なので「とりあえずやる」という調査目的のないユーザーインタビューは、調査として成り立たないので、ブブーです。

また、仮説の精度の低すぎる状態(インタビュアーが何を聴けば良いのかわかってない状態)で始めたインタビューは、だいたい失敗します(ソースは自分)。

また、別の話でいうと、「仮説は立てたものの、その検証にばかり頭がいってしまい、ユーザの話を深掘りできなかった」という失敗談も耳にします。

これは、仮説を確かめようとするあまり、インタビューがクローズドクエスチョン化してしまったケースだと思います。

インタビューがYES/NOだけを問うものになると、仮説の「検証」ではなく、仮説の「補強」のための場になってしまい、仮説のピボットを求められる情報が出てきたときに、処理できずジ・エンドとなります。

ユーザーインタビューの成功ってNANDA?

従って、仮説の検証ができたか(調査目的が達成されたか)どうかが、ユーザーインタビューの一つの成功基準となります。

また、デザインシンキングにおいては、ユーザーインタビューにおける「仮説」→「検証」というプロセスが、1回の往復で終わることはありません。

「仮説」→「検証」→「仮説生成」→「検証」→「仮説生成」・・・

という形で、インタビュー中にどんどん新しい仮説が生成されてきます。

例えば、組織開発の場合、ステークホルダーへのインタビューがプロセスに組み込まれます。

インタビューをしながら得られた情報から、組織構造についての仮説を組み立てていきますが、組織構造は、目の前の人を起点として情報がタテ・ヨコと多岐にわたります。

ざっと上げるだけでも

- 組織構造
- パワーディスタンス(上下関係の感覚)
- 部署間の連携
- 心理安全性のレベル
- マネジメントのレベル

などがあります。
それらをインタビュー中に取得した情報からどんどん構造化していきます。

その際に、定性情報でざっくりとすばやく仮説を組んでいくデザインシンキングの思考方法は、非常に役立ちます。

このように「仮説の検証」とそれを踏まえた「仮説の更新」のサイクルが回ることが、ユーザーインタビューのひとまずの成功と言えるかと思います。

仮説が更新されると新しい質問が生まれる

その意味でいうと、私の場合、インタビューの「成功実感」は「仮説が更新された」ときに生じる、ということになると思います。

仮説を補強できた、一部ピボットを迫られつつ新たな気付きが得られた、など、インタビューをしながら、どんどん仮説がアップデートされる感覚が持てたインタビューは、自分にとっても満足度の高いインタビューとなります。

目の前の「わからない」を減らしていくと、同時に、一つ上のレイヤーで、「わからない」が生まれてくる、という運動は、デザインシンキングの運動構造と似ています。

この「どんどん仮説がアップデートされ、新しい質問が生じてくるかどうか」という感覚が、私の場合の「成功実感」だと思います。

ユーザーインタビューの成功実感を得るための「研鑽」

初めに、インタビューの成功実感を得るには、インタビュー手法や技術を持っているかどうかは直接的には関与しない、ということを書きました。

つまり「成功実感」は、まさにインタビュアー個人の感覚や経験の積み重ねによるものだからですが、この「感覚」を強化するための手段として、手法や技術を積極的に学び、研鑽するべきである、と言えます。

例えば私は知らない人に相対すると非常に緊張してしまうのですが(恥ずかしながら・・・)、それに気を取られずに集中するために、インタビュー開始時のラポール構築や、インタビュー中の所作、インタビュー体制などは、積極的に学びたい技術の一つです。

インタビュー・デザインリサーチは奥が深く、学ぶことは、自分に当座必要な技術だけでも、様々な学問を横断してたくさんあります。
そんな、リサーチャー自身の研鑽によって感覚が研ぎ澄まされていく面白さを、私は気に入っているのかもしれません。


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