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お金の価値を変える魔法を込めた、まほうのだがしや「チロル堂」のロゴデザイン。

奈良県「生駒(いこま)」という大阪と奈良のあいだ、生駒山の麓にある小さな街の、まほうの駄菓子屋「チロル堂」。ここは、その名の通り魔法が使える駄菓子屋です。入口をくぐると、目の前にはこの店で使える通貨「チロル」が出てくるガチャがあります。このチロルという通貨が「魔法」なのです。

なぜ、この時代に駄菓子屋ができたのか。なぜ、このような場所が必要だったのか。なぜ、このロゴタイプなのか。今回はそのお話を少しさせてください。

勝山浩二 Coji Katsuyama | monodachi
合同会社オフィスキャンプ デザイナー/アートディレクター。1986年生まれ、大阪市出身。グラフィックを軸にした広告デザインやWEB、プロダクト、ブランディングなどを手がける。地域プロジェクトや企業ブランディングなどを手がけるデザイン事務所を経て、現在は奈良県奥大和地域にフィールドを移しローカルデザイナーとして活動。木材産地で地域にねむる林業や木工産業、農業、地域に関わる起業家たちと共にプロジェクトを進行中。



「チロル」という魔法


「まほうのだがしや チロル堂」は、貧困や孤独といった環境にある子ども達を、地域みんなで支える魔法の駄菓子屋です。
子どもたちは持ってきた100円でガチャを回し、チロルを手にすることができる。そう、貨幣の価値がガチャを通すことによって変わるのです。100円が300円の価値に化けたり、宿題が一瞬で終わったり(センパイたちに手伝ってもらう)、他にもわくわくする仕掛けがたくさん。100円を握りしめてチロルのガチャを回すことで、子供たちはカレーを1チロルで食べることができるのです。

もちろん、単なるのサービスやボランティアで成り立つ仕組みではありません。

駄菓子の他にもお弁当やパン、カレーが販売されています。昼間とは一変して、夜には酒場に様変わりし、大人たちの集いの場となる。じつは、その、昼間のランチの一部が、夜のビールの一部が、アテの一部が、気付かぬうちに寄付され、子どもたちに還元することができる仕組みになっているのです。




一度、お店に訪れたら、すぐに理解できると思いますが、
後ろめたくカレーを食べている子供はいません。
「寄付してあげた」と思っている大人はいません。

貧困や孤独で悩む子供たちが、後ろめたさやネガティブな気持ちを持つことなく、お腹いっぱいご飯を食べれる未来。
応援の気持ちや共感した大人たちが、上から目線でも、偽善みたいに見られることのないポジティブな未来。

その双方を紐づけるのが「チロる」という魔法なのです。

チロル堂が目指す未来は、チロルという仮想の通貨がこのまちで共通の通貨になり、お弁当食べたり、物を買ったり、手伝ってもらったり…、どのような消費活動にも自然と寄付活動が行われるようになり、寄付が明るくポジティブな行為に生まれ変わることを夢見ています。


お金の価値を変える魔法のシンボルマーク


お店のロゴデザインをする気ではつくっていません。デザインをつくる上で意識したことは、チロルは新しい貨幣価値だということ。

これだけ電子決済が発達した世の中、これからを生きる僕たちの子供世代は紙幣や硬貨を知らずに育つかもしれない。

これまでは、価値を万人がわかりやすくするための基準として、等価交換のために、貨幣があって。これからの時代はそれらが無くなる(見えなくなる)ということ。

生産する価値や、作る価値、それを届ける価値なんかを、意図的に記して残していかなくてはいけないと思いました。

そういったことを叶えれる場所が「チロル堂」なのです。

チロルの「ロ」と、堂の漢字の真ん中の「口」をクロスワードのように重ねて、(かつての)お金のシンボルとしての硬貨に見立てて、ひとつのシンボルにしました。

これはお店の名前としてではなく、「チロる」という新たな考え方を具現化したマークです。



大人たちにとっても、無くてはならない場所になる


支えられるのは子供だけでしょうか?
いいえ、大人たちもきっと救われる場所です。

学校や仕事といった、いわゆる肩書きや役割で分別される世の中と異なり、ここでは大人たちの「関わりしろ」がたくさんあります。
絵本や手作り玩具をチロったり、野菜やお米をチロったり、器や家具をチロったり、1日店長に立ってチロったり。ただただ毎晩飲みにチロったり。仕事で関わる人がいないので、みんながワクワクと、生き生きとしている。
何でも良いです。大人たちにとっても、自分の宝物が、自分の能力が、自分の消費活動が、誰かのためになって。自分の生きがいになってくるのかもしれません。

誰かを想う気持ちや願いは、貨幣価値を超えるものだと思います。
この小さな地域の中だけで良い。小さくても良いから。誰かが誰かに届けるために尽くしてくれた価値を、このチロルに込めることができれば、貨幣を超えたものになれると思っています。

それでは、今回はこのあたりで。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。また機会があれば他の記事も読んでください。




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