見出し画像

『Live at 甲陽園 "CHISEL" 12/17/23』会場限定CDのライナーノート

皆様ごきげんよう、でわひろきです。
CDを手に取ってくれた皆様ありがとうございます。
さらにCDを楽しんでもらうべく、解説を残しておきます。

CDの意味 - なぜ限定なのか

自分自身でライブをする意味を考えたとき、「その場で創り出される」ことを大事にしているのだなと気づきました。

たとえ同じ曲を演奏しても、自分のコンディション、機材のセッティング、お客さんの人数、気温、湿度…そう、まったく同じ演奏は二度と出来ないのです。
そして、そういう「その場かぎり」という儚さと、ある種の呪術性に深く惹かれています。

さて、グッズでも同じような意味を持たせることができないか、と考えたときにこのCDの企画が立ち上がりました。
ライブの演奏はもちろんその場かぎりの内容、そしてグッズに関しても「そのときだけ」のCD、ということですね。

こんなふうに書くと難しい感じがするけれど、僕が言いたいのはこれだけです。

何も考えないで。
リラックスして流れに乗ろう

CDジャケット

セットリスト

  1. 幻想花火

  2. ring, loop, circle, hoop

  3. ambient #01

  4. まどかのテーマ

  5. 船を建てる

曲の解説

1.幻想花火

動画配信サービスでラジオや生放送を行っている”まどか”の依頼で制作した楽曲です。

歌詞は徳島出身の詩人、ミスミアヤカ。

「お祭り」「花火」など、The 夏!という感じのテーマで、爽やかさがありながらも、でもやっぱり日本の夏やなという湿気感を演出しております。

夏といえば、鳴門の海沿いをイーグルスをBGMにドライブするのが好きなので、イーグルスの音楽は日本の夏のイメージ。あるいは、鳴門は日本のカリフォルニアなのかもしれません。何のこっちゃという感じですが。

2.ring, loop, circle, hoop

作詞作曲でわひろき、だけど、ドラムや演奏はお友達に手伝ってもらいました。

というのも、実は「一緒にインスト(ボーカルなし)の曲を作ろうよ」という話になり、後半の部分がそのインスト作品なのです。
"インスト完成 - データを編集して一番を作る - メロディと歌詞を作る"という工程で、皆さんに聴いてもらっている形になっているわけですね。

歌詞のテーマはなんだろう、「方言」でしょうか。
くるりの岸田さん、上田正樹さん、有山じゅんじさんの曲聴いてると、そのまま大阪弁や京都弁が出てくるのが土着的でとても良いと思ったのです。
ほな出葉が作る曲の「方言」はどこや、というと徳島弁なわけで、こういう歌詞に落ち着きました。

おっさんになると笑い飛ばせることも若かりし頃はぐちぐちと悩んでしまったりするもので、そういうモラトリアムな暗さを書いておきたかったというのもあります。
夏の夜の切なさにも似た気持ちや予感を覚えているでしょうか、金木犀の感傷的な香りは?
そういうのって、どこかにメモしてそっと見返したいときがあります。

3.ambient #01

アンビエント、日本語だと環境音楽と訳されるものですね。
ジムノペディでお馴染み、エリック・サティが提唱した「家具の音楽」が元になったジャンルだと言われていて、要するに家具のように、環境に調和する音楽ということです。

実は僕が一番最初に作ったアルバムはアンビエント作品集でした。
その中でも印象に残っている曲を、今回は再レコーディングし皆さんにお届けしました。
もう10年以上も前のこと、無料でダウンロードしてもらえる形にしていたのだけれど、自分の手元にあるかも定かではない…あったら何かの形で出したいですな。

約16分と長尺の曲ですが、大きく分けると前半後半の2パート構成。
後半は音楽というよりノイズですね。
鳥の鳴き声、子供の遊ぶ声、工事現場の音、部屋の中を流れる空気の音。
そういう日常の中のアンビエントにインスピレーションを受けました。

聴くときのポイントは、集中しないこと。
あとはスピーカーの前にいないこと。
先ほどあげた環境音のように、気がついたら何処かから聴こえてくる、が理想的だと思っています、僕はね。

※探したいですね、とか言ってたらあったのです。
当たり前かもしれないけれど、なんかすでにもう今に至る片鱗がありおもしろい。

4.まどかのテーマ

『幻想花火』を歌ってくれたまどかちゃんはトークなどを配信をするので、そのBGMがあると良いよな、ということで作った曲です。

小さな部品をレゴみたく組み上げた作品で、ジャンルでいうとミニマルということになるでしょうか。
これも基本は繰り返しの楽曲だけれども、周回するごとにちょっとずつ新しいギミックが入っていきます。

これも他に集中することがあるときのBGMというイメージがありますね。
料理するときとか、洗い物するときとか。
日常のなかでCDをヘビロテして欲しいですな。

5.船を建てる

長い旅もここで終わり。
原型は10年近く前にできていたのだけれど、なんかまとまり良く作れず放っておいたかわいそうな作品。形にしたから許してくれ。

でも、そういうことってありますよね。
経験値を貯めてレベルアップしないとうまくいかないタイプの曲だったのだな、と改めて思います。
音楽を作ることは感情とかニュアンスを技術に変換する作業、だと僕は思っているので、ここに至るまで多種多様な音楽に触れたことが結実したように感じています。自分で書くと自信満々な感じですね。

お腹(胃)を痛めて生み出した作品たちですが、生まれてしまうと意外と自分の一部、みたいな感覚はなく。親近感はあるけどね。
子供ができるとこういう感覚なんでしょうか。

さて、音楽の技巧的な話をすると、同じコードをずっと弾きながらベースラインだけが変わっていくコード進行。
なんでこのコード進行を採用したかというと、ポップだけど浮遊感があるようにしたかったからです。さっきしたニュアンスを技術に変換する作業とは具体的にこういう部分。

めっちゃ簡略化して考えるとFコードだけで弾けます。
ぜひCDに合わせてみてくださいね。

歌詞は鈴木志保さんの漫画からインスピレーションをいただきました。
漫画の世界と現実が交互にクロスオーバーするというか、夢と現実の境目というか。

"夢と現実"を行き来するのは、一時期狂ったように観ていたデイヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』の影響もあるかもしれない。
デイヴィッド・リンチさんの作品は「起きながら観ることのできる夢(悪夢)」という感じ。

気になったらぜひチェックみてください。
この感じを出したかったのですよ、音楽で。

歌詞集

幻想花火

始まりも終わりもまだ見てない
わたしの夏はいつからですか
君とわたしの恋の歌
バイバイはまだ聞かせないで

oh…君のことを知らない
あの頃のわたしは
夏のめぐりを待ってた

花火の音に導かれたら
遠い目をした君がいた
僕の背中を押してくれないか

名前も知らない二人は
夏のめぐりに誘われて
21時の魔法だよ
最後の花火を咲かす

幻のような静かな夜も
いつかは忘れる
淡い感情を
恋と呼ぶには早すぎる

始まりと終わりがまだ見えない
ふたりの夏は今夜だけなの
触れた背を押したらどこにゆく
バイバイはまだ言わせないで

始まりも終わりもまだ見てない
わたしの夏はいつからですか
君とわたしの恋の歌
バイバイはまだ聞かせないで

明日もまたここに来て
君の名前を教えて

ring, loop, circle, hoop

まるで全部終わったかのような
ひとりきり午前2時
テレビの砂嵐はまるで雲みたい

空からこぼれ落ちた僕らは
天気ばかり気にして
自分のことすら置いてけぼり

こんなんで良いのか
わかれへんけど
こんなんで困難に
立ち向かえれへんけれど
ah…どうにかせなね

コーヒーの粉がなくなった
ひとりきり午前4時
全部、終わらせてしまおうかな

船を建てる

うまく眠れればいいのに、なんて
ひとごとで海を想う
朽ち果てた難破船
アシカたちの夢みている

やつらは国境の外れの
赤い赤い海の中で出会う
波打ち際を漂って
クジラの血に染まって出会う

lalalalala...

彼らはカウンターの
青い光の中で別れる
グラスの塩みたいに
波にさらわれてしまう

うまく笑えればいいのに、なんて
バスルームの鏡の前に立つ
傷ついたバスタブに
アシカたちの夢の見ている

lalalalala...

うまく眠れればいいのに、なんて
ひとごとで海を想う
朽ち果てた難破船
アシカたちの夢みている

lalalalala...

もがけばもがくほど青い青い海に染まって
アシカもクジラも遠い風景も赤くなっていく
日々も過去も現在も
先も遊園地の観覧車も
君も
青く青く青く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?