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英語学習におすすめの洋書:A Long Way Gone(戦場から生き延びて)


西アフリカの小さな国シエラレオネの元少年兵イシメール・ベア氏の体験手記です。平和な国に住む私たちこそが知っておくべき、戦争の実態が描かれています。

読みどころ

ある日突然、住む村が戦火にのまれ、13歳のイシメール少年は家族と生き別れになり、一人でジャングルを逃げまどうことに。そして生きるために少年兵となることを余儀なくされます。しかし運命的な出会いにより、再び「人間」として生還するという物語です。

大袈裟でなく、これまでの人生の全読書の中で5本の指に入る私のお気に入りの一冊です。

非常に重く残酷な戦争の真実が、清廉でむしろ無垢とも思える美しい英語で綴られており、そのギャップに心を打たれます。人が殺害されたり、遺体を目の当たりにしたりするシーンもあり、読む人を選ぶかもしれません。ドラッグの描写も生々しく、正直子供向けではないと思います。

しかし、これは一人の子供が目撃し体験したアフリカの真実。平和に過ごす日本人も目をそむけるべきではないと思います。

眠る家がある。

食べ物や水がある。

家族がいる。

学校へ行ける。

仕事がある。

命の危険に身を竦めることなく、伸び伸びと英語を学べる

そんな幸せをつくづくかみしめ、その時の自分が抱える悩みについて、「あ、大したことないや」と思わせてしまう力のある一冊です。

英語で読む醍醐味

ショッキングな話ではあるのですが、あくまでも当事者の少年の目線で書かれている手記なので、あまり高度な単語は使用されておらず比較的読みやすいです。

背筋が冷たくなるほどの恐ろしい話も、情景や出来事、その時々に彼の頭をよぎる思いがむしろ淡々と描かれていて、不覚にもその文章の美しさにうっとりとしてしまいます。

恐らく校正やリライトは入っているとは思いますが、そもそも著者の視点やものの捉え方が審美的で優れているのだと思います。

書かれている内容は大きな社会問題ですが、文章は非常に質の良い英語です。(現在は小説などの発表もされているので当たり前かもしれませんが)

おまけ

冒頭のシーンで主人公のイシメール少年は、友人たちとヒップホップダンスに興じています。

シエラレオネって、キリンとかいるのかな?

ほとんどの日本人は、こんな風に西アフリカの小国についての知識がないと思うので、この冒頭のシーンで、「アフリカの子も日本の13歳と変わらない普通の少年なんだ」と感じます。

だからこそ、その直後にヒップホップを踊ってた少年が遭遇する地獄絵図の恐ろしさが際立ちます。

著者のイシメール・ベア氏は、現在はアメリカ在住。執筆家、人権活動家として、子供たちをめぐる戦争の問題に取り組み、NGOで世界的に啓蒙活動をされています。
現在の彼の姿です。

まとめ

ベア氏の場合は、本人の聡明さが助けとなり、運命を切り開くことができたとは思います。しかし、もし運命の歯車が少しでも狂っていたら、この一人の賢い少年は、その賢さゆえに少年兵として「出世」し、やがて幹部に上り詰め、ごくカジュアルに人を殺めることができる大人になっていたかも知れません。

彼の他にも、少年兵はシエラレオネのみならず世界中の戦場に今も存在します。また、戦争に起因して虐待に合う子供たちもたくさんいます。こういった事実も、戦争の一つの側面として、心を砕き、目を向ける機会になればと思います。

作品データ

著者:イシメール・ベア Ishmael Beah
2008年 240ページ
英語:アメリカ英語 
難易度★★★☆☆
要注意描写★★★★★(暴力、ドラッグ)


こちらはオーディブル(朗読本)で、著者のイシメール・ベア氏が朗読をしています。サンプルを試聴できます。




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