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ゲーム開発におけるランダム性の分解

ゲームでの「運」の要素を担う、ランダム性。ときにはゲームバランスを壊すクラッシャーとなり、ときには最高の脳内麻薬となりうる表裏一体の性質を持った要素を分解していきます。

ランダムに見る連続性

人間は何も無いところに連続性を見ることがある。

例えば、コインを投げてて3回続けて表が出ると、次も表が出る確率は小さいと考えてしまう。こういった確率の誤認識は他の例でも多く、1/100で当たるスロットがあった場合に、人は毎回同じ確率であるということを信じる事が出来ない。

1/100で当たるスロットを100回やって当たりが出なかった場合、そろそろ当たりがくると考えてしまう。次の確率も1/100である事は明白なのに。。。

ソーシャルゲームでは、いろいろと問題となっている「ガチャシステム」がこのランダム性をうまく活用しています。連続してレア度の低いキャラが出るにも関わらず、やめられなくなってしまうのはきっとそろそろ出るだろうという気持ちを逆手にとったシステムにハマってしまっているからで、また確率の表記を疑ってしまうのも、人は理論では理解していても、この毎回同じ確率ということを感覚的に認識し信用することが出来ないからです。

パチスロが使う確率を錯覚させる表記法

1/100の確率はときどき発生すると期待され、99%の確率は100%と同程度に安全であると誤解される。

どちらも同じ確率であるが、人間は極端な確率を正しく判断する事が苦手。ゲームやギャンブルでは、こういった都合の良い見せ方が使われている。

この表記による人の錯覚を利用した手法は、パチスロを例にすると分かり易いです。パチスロでは当選を表す確率は1/300などと表記し、継続を表す確率は80%などと表記されています。この表記法を逆にすると、当選確率0.33%、継続率4/5になります。どちらが当たりそうで、どちらが外れそうに見えるかという表記法によるマジックが活用されています。

ランダム性はより多くの人を魅了する

運が強いゲームは、初心者に勝つチャンスを演出する。

大抵の人は将棋の名人には挑もうとはしないが、ブラックジャックの名人になら挑んでも良い、勝てる見込みがあると考えるかも知れない。

一般的に老若男女問わず、一緒に遊ばれ続けてきているトランプゲームなどは、ランダム性がゲームバランスに大きな影響を及ぼすことが多い。これは、最初から勝敗が見えている頭脳戦よりも、上手く良い目を出せば誰にでも勝つチャンスがある。と思えることが、ゲーム参加へのモチベーションを高めてくれる。

1 対1の真剣勝負に向かない人々を引きつけるには運の要素が必要です。ただ、単純に運が勝敗を左右するゲームを作ればいいということにはなりません。ゲームにとってランダム性が持つプラスとなる性質と、マイナスとなる性質について理解し、組み込んでいく必要があります。

戦略崩しの表裏一体

ランダム性はプレイヤーを離脱させるストレスになる。

大抵の人はゲームのランダム性によって自分の戦略が崩される事を嫌う。だが同時に、この戦略崩しはゲームにとって非常に重要な役割も担っている。

不運はプレイヤーが負けた時に言い訳を提供し、勝った時には不運をね返したという満足感を与える。

ゲームは試練という名でプレイヤーにストレスを与え、それを乗り越えたときの達成感によって、ストレスを開放させる。これは脳に快感を与え、次なる試練にチャレンジするためのガソリンのようなものとなる。与えたストレスと解消の反動が大きいほど、より多くの快感を得られるが、あまりにもハードは試練に心が折れてしまうと、プレイヤーは二度と立ち直ることはできない。

先に説明したように、プレイヤーに勝つチャンスがあると思わせることが、ゲーム参加へのモチベーションをアップします。逆にいえば、絶対に勝てる見込みがないと思わせてはいけません。一度そう思ってしまったプレイヤーは、目をそらし、もう二度とそのゲームはプレイしてもらえないでしょう。

ランダム性がゲームを壊す

ランダム性はあらゆるゲームのあらゆる状況に適するわけではない。

ランダムの組み込み方で最も悪い例は、プレイヤーにとって理不尽さを与えること。また、ランダム性がただのノイズになってしまう場合も問題で、これはただ単にプレイヤーのゲームに対する理解を妨げる

さらに重要なのが、勝利判定に運の要素を持ち込んではいけない

ではトランプゲームは?あらゆるゲームが、勝利判定に運の要素を持ち込んでいると感じるかもしれないが、このトランプゲームの不運が不公正と見なされないのは、ゲーム終了までに間があって対処する時間が与えられているからだ。運の要素が働くのがゲームの序盤であればあるほど、ゲームバランスが良く感じられる。

トランプゲームにおける最もランダム性が活用されている場面を考えてみてください。それは、最もゲームの序盤にある、カードを配る手札配りにあります。多くのトランプゲームは、ゲームの最初にもっともランダムで不公平な要素を持ってきています。ただプレイヤーは、明らかに不利な状況でも、勝者と敗者を決める過程を見直すことで勝利の道筋が見えた瞬間に、最も理不尽で不公平な手札配りを忘れ、自分を責め次のチャレンジに挑みます。更にはこの状況を覆し勝利した瞬間に、何よりも大きな快感を得ることが出来るのです。

ランダム性が及ぼす時間への影響

ランダム性がゲームの進行を無駄に遅らせる場合もある。

たとえばサイコロを使った戦略ゲームの場合、サイコロをふる時間や、思考する時間についても時間がかかる。

予想外の行動結果に対処するというのはゲームデザインの中核要素だが、同時にゲーム自体の進行速度も重要な要素である。制作者はどちらを重視するか慎重に決めなくてはならない。

とくにスマホアプリなどでは、1回のゲーム時間の重要性が非常に大きいです。それが全てではありませんが、どのような環境でプレイされるゲームであるかを明確にして、ゲームデザインしていく必要があります。

ランダム性の終着点

ランダム性について考えると、最後にこの問いに行き着く。

運の要素はいかにゲームを良く、または悪くするのか?

ランダム性はプレイヤーに心地よい驚きをもたらし、快感を与えゲームを良いものにしているのか。または展開を無駄に予測不能にし、プレイヤーの意思決定を無価値にしてストレスを与えているだけなのか。

ランダム性を良い物にする方法の一つは、可視化することです。何が起きているかを公開し、ゲーム内での計算処理をプレイヤーに見せ、確率を公開する事で、ランダム性はプレイヤーにとって謎ではなく戦略を立てるための武器になることもあります。


以上、ランダム性の分解でした。ここまで読んでいただいた方ありがとうございます。