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城下町長府そぞろ歩き


 本州最西端にある山口県下関市は、関門海峡を挟んで北九州の対岸に位置するお隣の街。小さな地方都市でありながら、仲哀天皇滞在、和同開珎の鋳銭、大内氏滅亡、四国艦隊下関砲撃事件功山寺挙兵など、幾度となく日本の歴史の舞台となった場所である。

これまで海峡に面した唐戸市場まで寿司を食べに行ったことがある位で、ほとんど出かけたことがなかったが、調べてみると市の東部に政治・文化の中心地として栄えた「長府」という城下町があり、とても興味をそそられた。
この町には大小数々の武家屋敷跡や侍町、歴史のある神社仏閣などが大戦中の爆撃を免れ、今も数多く現存している。

このような場所の散策はやはり紅葉と桜、新緑の季節が定番だが、この時期は華やかな彩りは期待できないものの、訪れる人は少なく静かでゆったりとしたひとときを味わうことができる。

歴史的な背景に関する膨大な情報はさておき、こうした城下町や神社仏閣などを歩くと、その土地全体に満ちるゆったりとした時の流れが心地よい。急速なテンポで過ぎていく現代社会の時間とは異なる別の時間が流れているかのようだ。

以前関西で暮らしていた時にはよく古都奈良を歩いた。奈良盆地に入った途端、いつもこの感覚がやってくる。特に中心地から少し離れた唐招提寺や薬師寺、法隆寺などの西部に位置する寺院群ではその感覚が際立つように感じられた。
こうした有料の神社仏閣とか庭園、植物園などは朝一番に入るとその醍醐味を味わうことができる。人けのない境内へ入ると、鳥の鳴き声以外に聴こえるものはなく、動くものも何もなかった。太陽や雲ですら一日中静止したままのような気がしてくる。
このような静寂にどっぷり浸かるような体験をすると、心身はとてもリラックスし、思考も感情も起こらず、「ゾーン」に入ったような心地よさが生まれる。

文明社会の中で、私たちは左脳主導の時間感覚に追われながら日常を過ごしている。しかしこうした古い町並みや神社仏閣の境内など非日常的エリアに一歩足を踏み入れた途端、「時の流れが消える」という右脳感覚が活性化してくるのだと思う。その土地に満ちている波動と共に、当時の人々の美意識や職人技といった右脳中心の感性から生み出された手仕事の温もりに包まれるからでもあるだろう。
そこには脈々と受け継がれている伝統だけでなく、古くからその土台となっている日本の風土の薫りのようなものがあるのではないか。

こうした目的地へ直線的に向かうわけではないそぞろ歩きは、眼には見えない花の在り処を探し求めるひと時だ。
それはこれまで土の時代を生きてきた私たちの心の疲れを癒す「リトリート」となり、風の時代を生きる私たちにとっては「時のない世界への旅」となる。


リトリートとは

リトリートとは数日の間、日常から離れた環境に身を置き、いつもと違った体験を楽しむことを指します。心身の回復を図るため、旅先の観光地を楽しむというよりは、自分自身に意識を向け、ゆったりとした時間を過ごすのが一般的です。
私たちは日頃、仕事や家族、友人などさまざまな関係の中で、少なからずストレスを感じています。その限度があるレベルまで達すると、心身の不調が出てしまい、日常に支障をきたすこともあるほどです。
リトリートは、自然や落ち着く環境の中で過ごし、毎日のルーティーンからあえて一旦離れることで、心と身体の状態をリセットするために有効な手段だと言われています。

Spaceship Earth


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長府庭園
長府毛利藩家老格西運長にしゆきながの屋敷跡




























































横枕小路
忌宮神社の西側から乃木神社の横を東西に抜ける細い通り。練塀の路地のなかでも代表的なもので、市の文化財にも指定されている。















忌宮神社





古江小路
長府毛利藩は天保年間に「達豊浦家中一統家作定書」を発令し、藩士の身分により家屋造作の制限を行った。城下町長府の特色は、門や長屋それに続く練塀と石垣、その内側の植裁など、街路に面した構えにある。形態としては、切り盛りした土地に石垣を築き、その上に粘土を練り混ぜた土塀を築く方法で、中塗りを施しただけのものが多く、漆喰で上塗りしたものは見られない。



























功山寺
二重門の山門や、 わが国最古の禅宗様建築の仏殿(国宝)が、嘉層曆2年(1327)創建の由緒を語る。桜と紅葉の名所、高杉晋作が挙兵した寺としても知られ、境内には馬上姿の晋作の銅像も置かれている。
















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茶屋 祥
下関市長府に流れる檀具川近くに建つ桂与一旧宅。店内にさりげなく飾られた書や掛け軸は、見る人が見れば相当貴重なお宝ばかり。史跡でありながら、古民家カフェとしてくつろげる個性あふれるお店。


喫茶 四季庭
四季折々に移り変わる庭園を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごすことができる。


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長府毛利邸
長府毛利家14代元敏公によって明治36年(1903)に建てられた邸宅。完成に先立ち明治天皇の行在所(仮の御所)としても使われた。池泉回遊式の庭園が往時をしのばせ、母屋の各所に生けられた野の草花が風情のある庭を彩る。











































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いつか・きっと
西村由紀江 



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