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「パミール登山」【2023年度版】 秘境 ワハーン回廊 自力での行き方/楽しみ方+旅行記#5 ビビファティマ→エンゲレス・ピーク高原編

パミール山脈。

プロ登山家でも登山初心者でも通りすがりの観光客でも、
平等に訪れた人を魅了します。

5000〜6000M級の山が軒を連ねるパミール山脈でも、
「1日で楽しめる」「絶景が見られる」、
そんなハイキングコースがあります。
それが、ワハーン回廊最奥が起点となる
エンゲレス・ピーク高原(Pik Engels Meadow / Пик Э́нгельса)です。

今回は、
秘境ワハーン回廊内のエンゲレス・ピーク(起点のランガール)のアクセス、
・私の旅の記録
を書いて行きます。

登山、一人旅、ワハーン回廊やに興味がある方
ワハーン回廊を忘れた方、
温泉や冒険が好きな方
本編までのアクセスが知りたい方は、

タジキスタンの魅力
秘境 ワハーン回廊 自力での行き方/楽しみ方#1 準備編
秘境 ワハーン回廊 自力での行き方/楽しみ方#2 ドゥシャンベ編
秘境 ワハーン回廊 自力での行き方/楽しみ方+旅行記#3 ドゥシャンベ→ホログ編
秘境 ワハーン回廊 自力での行き方/楽しみ方+旅行記#4 ホログ→ビビファティマ/ヤムチャン要塞編

をご一読ください!!

本記事の構成は、
①ビビファティマ→エンゲレス・ピーク(起点のランガール)の注意点/アクセス/宿泊
②私の旅の記録
です。


①、②は両方ともワハーン回廊を自力で進んでいく上で、
参考になる情報かと思います(インターネットでもあまり情報がないので・・)。
もしも、自身で冒険したい方、石橋は叩かずに渡りたい方は、
①だけ読んでいただければ大丈夫かと思います。
②では、私の旅の様子を写真と共に紹介しながら、
宿や食べ物、出会った人などをシェアしていきます!!
今回は興味深い2人のロシア人と出会いました。
その内の一人から、大きな学びを得ました。

本記事を通して、
・読者さんがワハーン回廊/エンゲレス・ピーク高原へ辿り着けたら
・旅してみたいな〜と思ってもらえたら
・タジキスタンに興味を持ってもらえたら
幸いです!!



①ホログ(Khorog)→ランガール(Langar)までの注意点

これ以降、下線が引かれた地名をクリックすると、
Google Mapの実際の場所に飛ぶことができます。

実際の場所が気になる方は是非確認してみてください。

【ホログ→ランガールの行き方の概要】

私の場合は、ホログ→トゥゴズ(ビビファティマ)→ランガールの順番で周りました。

ランガールとそこから登山できるエンゲレス・ピークを目指す場合は、
ホログ(Khorog)→イシュカシム(Eshkashem)
トゥゴズ(ビビファティマの起点)→ランガール(Langar)
という順番で進んでいくことになります。

[A]ホログ(Khorog)→ランガール(Langar)
[B]イシュカシム(Eshkashem)→ランガール
[C]トゥゴズ(ビビファティマの起点)→ランガール
をそれぞれを紹介していきます。

なお、[B/C]のイシュカシム、トゥゴズまでの行き方は、
秘境 ワハーン回廊 自力での行き方/楽しみ方+旅行記#4
ホログ→ビビファティマ/ヤムチャン要塞編

の「①ホログ(Khorog)→ビビファティマまでのアクセス」
で紹介してあります。

【ランガール(Langar)からエンゲレス・ピーク高原まで】

ランガールという村から片道7〜8KM/標高差1060Mを駆け上がり、
エンゲレス・ピーク高原に到着できます。
ランガールで二泊三日して、体力を回復させてから挑戦すると安全です。
Maps.Meなどのオフラインマップをダウンロードしておくといいです!!

【万が一、見知らぬ場所で、降ろされたら】

これは万が一です。
「ランガールまで行く」と約束したのに、
ランガールよりも手前で降ろされたりしたら・・・。
長い運転で夜遅くに降ろされる可能性も0じゃないです。
本当に何が起きるから分かりません。
その時には、「グジュ ガスティニッツァ(ホテルはどこ?」
と運転手にゲストハウスやホームステイがあるか
聞いておきましょう。基本、運転手の知り合いに、宿泊関連の人がいます。

【価格交渉と燃料の高騰】

ホログ以降、移動代の交渉は非常に難しいです。
そもそも、交通量が少ないこの地では、
タクシー運転手さんが価格交渉において圧倒的に有利です。
必ずシェアードタクシーやヒッチハイクで価格交渉になった際には、
大体の価格帯を事前に理解しておきましょう。
また、世界的な原油価格により、
年々価格が高騰していく可能性があり、
下記で私が示した価格よりも、
移動代がかかってしまう可能性もあります。

大体の価格を確認するコツは
運転手がいないところで、一緒に乗車する地元の人に
大体の価格を確認することです。
運転手を前にすると地元の人も本音で話せないというケースが
あるので、静かにタクシーの価格を確認しましょう。

【ポータブルフィルター】

広大な高原が続くワハーン回廊。
水を買う場所がなかったり、
水道水が飲めないことがあるので、
念の為、ポータブルフィルターを持ち歩くことをお勧めします。
ランガールでも地元の水道から流れ出る茶色水をフィルターして飲みました
(ローカルの人はフィルターなしで飲んでいました)。
私はKatadyn Water Filterの1Lを愛用しています。
水道水を飲む前に、このフィルターを通して飲みましたが、
問題ありませんでした。

こんな感じで、各地から水が湧き出ているランガール。少し茶色いので、念のためフィルターしておくのが安全です。

【防寒着】

起点となるランガール村自体、真夏でも夜は15度まで冷え込むことがあります。
登山時にも早朝スタートなので、寒いです。
折りたたみのダウン+フリースで体温管理をしましょう。

【宿泊の仕方】

基本的には予約なしで行って、
泊まるのがワハーン回廊の旅の鉄則です。

なぜなら、そもそも予約できる場所が少ないからです。
基本的には民泊/ゲストハウスです
人のお家の部屋を貸してもらう場合がほとんだと思ってください。
朝食/夕食込みがほとんどです。

ゲストハウスの看板を見つけたら、
入っていって、泊まれるようにお願いする、
または、向こうから話しかけてくることもあります。

支払いは現金のみです。

①ランガールまでのアクセス

[A]ホログ(Khorog)→ランガールのアクセス

手段:シェアードタクシー(Shared Taxi)/ ヒッチハイク
価格:150〜250somoni(2000〜3500円程度)/ 0円?
乗車時間:8~12時間
出発時間:朝5時から8時
出発場所:ミニバスターミナル ルーシャン(Mini Bus Terminal Rushan)
     シェアードタクシー乗り場
到着場所:ランガール中央

ランガール(Langar)行きのシェアードタクシーは朝が勝負です。
朝5〜6時くらいからタクシーを待つと安全だそうです。
決まった価格はなく、交渉ベースで価格が決まります。
一番は、一緒に乗る地元の人に(ロシア語/タジク語)で、
価格を聞いておいて、そこから、同じ運転手と価格交渉に臨むのが一番です。
現地の方とのコミュニケーションが困難な場合は、
大体の価格を覚えておいて、(例えば、250Sononiがマックス)
それ以上の価格をふっかけてきたら、別の車を探す仕草を見せれば、
向こうから安い価格を提示してくれます。
とにかく早い時間にミニバスターミナル ルーシャンへ行くのがベスト。
昼を過ぎると本数が減り、本数が少ない中での価格交渉は不利です。

ぎゅうぎゅう詰めにされるので、覚悟しておいた方がいいです。
また、悪路なので、車酔いにも注意が必要です。

それだけではなく、軍のチェックポイントでは例外なく
GBAO Permitを見せる必要があるので、
まだ失くさないでくださいね!

ヒッチハイクを狙う方は、
ホログの南側で張るのがおすすめです。
地元の観光客を乗せたシェードタクシー(この場合は有料)と
レンタカーや自身の国から車で旅をする観光客(この場合は無料?)
が拾ってくれます。また、もしも運が良ければ、
トラックの運ちゃんが無料で拾ってくれる可能性もあります。

[B]イシュカシム→ランガールのアクセス

手段:シェアードタクシー(Shared Taxi)/ヒッチハイク
価格:80〜150somoni(1100〜2100円程度)/ 0円?
乗車時間:5〜7時間
出発時間:朝9時から15時
出発場所:イシュカシム シェアードタクシーステーション
到着場所:ランガール中央

イシュカシム シェアードタクシーステーション内、
または、その道路沿いに午前中にいれば、
東側(トゥゴズを経由してランガール/Langarへ行く)に
向かう車が必ず来ます。
満員の車でも声をかければ、更にスペースを作ってくれる可能性があります。
ただし、日によって、シェアタクが運行していない可能性があるようです。
運に身を任せるしかない!!

[C]トゥゴズ→ランガールのアクセス

手段:シェアードタクシー(Shared Taxi)/ヒッチハイク
価格:50〜100somoni(690〜1380円程度)/ 0円?
乗車時間:3~4時間
出発時間:朝9時から16時
出発場所:トゥゴズ(ビビファティマ最寄り道路
到着場所:ランガール中央

ホログかイシュカシムからランガールへ向かう
シェアタクが来るケースが多いです。
トゥゴズ付近で、倍以上の価格を提示してくる運転手がいますが、
それは最終手段です。気長に待ちましょう。


②私の旅の記録

[7日目] トゥゴズ→ランガール 「コカコーラあらわる」

次の目標はエンゲレス・ピーク高原。その頂は6510Mですが、ベースキャンプであるこの高原であれば、デイハイクで狙うことができるという噂を聞きました。その登山の起点となる町がランガールです。ワハーン回廊で最奥と呼ばれ、ランガールを超えて北へ向かうと人の定住が困難な高原が続きます。

ビビファティマを終えてから、2時間ほどランガール行きのシェアタクや乗用車を待っていましたが、何も進展がなく、テントを張るかどうか迷う時間になってきました。その時、ある一台のランガール方面に向かう車が通りました。急いで、その車を追いかけると、その車が20M先でようやく止まってくれました。その中から、ある二人が旅の友であるManiへ駆け寄って行きました。なんとその二人は、Maniの知り合いでした。Green Hostel で知り合ったとのこと。両方ともロシア人出身。

左がポリアナ、右がコカコーラ

ポリーナはロシアで馬の調教などをしながら、お金が貯まったら登山を絡めた旅にでる、山旅人。”You are too young to be employed full-timer”という旅をしたい人の背中を押すようなことを言っていました。特に私に影響を与えた1か月に渡ってヒッチハイクでモンゴルを旅したとのこと。私も是非やってみたいと思いました。

次にコカコーラと名乗る2M超えの男性。この人から、私は多大な影響を受けました。彼はロシアの大学で地理学者と教鞭ととりつつ、ロシアの山岳ガイドを務めるという異色のキャリアの持ち主。彼のすごいところは、一切自身の経歴や経験などを自慢しないとことです。それでいて「ただものではない感」」が滲み出ているのです。普通、旅で出会ったら、「どんなことをしていたのか?」「(山好きの間では)どんな山を登ってきたのか?」といったところでちょっとしたアピール合戦が起きます。対照的にコカコーラの場合、そんな質問が投げられると、半笑いと空を見上げて、質問に答えないというスタンスを貫きます。そして、別れの最後の最後で、面白い経験や経歴の話をぶっ込んできます。自慢なんかしないで、静かに笑っている彼。そこに不思議な魅力を感じました。
また、身体面でも強靭で、これから一緒に登ることになるエンゲレス・ピーク高原をなんとサンダルで臨みました。Crazy。

この二人はロシア語が話せるので、どうにか私を含めた3人のスペースを確保できないか、運転手に交渉してくれました。その結果、途中で下車する人がいるので、それを降ろしてから戻ってくる、という合意に至れました。彼/女らのロシア語に感謝。お気づきかもしれないが、タジキスタンを含む中央アジアでは、まだまだロシア語の影響力は強いです。特に価格交渉の場では、リンガフランカであるロシア語が現地語と同じくらい便利になることがあります。その一例を見せつけられた気がしました。ランガールまでの移動は50Somoni。

ランガールに到着したのは、19時40分前後。散策していると、「ゲストハウスがあるよ」と笑顔で駆け寄ってくる中年男性。ポリーナとその男性の交渉の結果、一泊30Somoniという安い価格に決まりました。+20Somoniで夕食が出るのもありがたい!!宿の名前は、“Homestay Mulloniyoz”です。ランガールの町で一番大きい宿泊施設のHostel BEHRUZ Minimarket-Cafe-Taxiが正面にあるとしたら、その反対側の道を道なりに歩いていくと3分ほど見つかります。ポリーナとコカコーラは、一人15Somoniで、敷地の中でテント泊していました。ちなみに、Homestay Mulloniyozのオーナーの子供たちは天使のように可愛いです。

杏子広いを手伝うオーナーの娘さん

その夜、私たちはキルギスからずっと一緒に旅してきた缶詰を開けてダイニングルームで食事をしました。ホームステイのオーナーさんとワハーン回廊の歴史について話を聞かせてくれました。例えば、このワハーン回廊では、イラン方面から来たゾロアスター教の信仰も受け継がれています。最たる例、一般のお家などにお邪魔すると、四角を重ね合わせたように天井の様式を見ると思います。ゾロアスター教において、太陽とその光は信仰の重要な要素です。最初の四角形が神アフラ=マズダ、次の四角が火、その次のには地球、などなどの意味が込められているそうです。

ところで、この宿で一人旅をする日本出身のバックパッカーにも出会いました。23歳で、正社員採用が決まっている旅行好きの大学生です。彼の印象深い点として、若い時の桑田佳祐に非常に似ている点です。サザンオールスターズや桑田佳祐が好きな私にとって、なんだか得した気分になりました。

[8日目]  「エンゲレス・ピーク高原への挑戦」

朝7時半に登山開始。メンバーは昨日であったポリーナ/コカコーラ+私たち3人。とにかく登りが続く急勾配を上がっていきます。体力的に厳しい日程の私たちにとって、「コカコーラの謎感」が疲れを紛らわせてくれました。例えば、重要な質問をすると上を見上げてニヤニヤしたり、謎の人形を持ち歩いていたり。

登山の時にはこの人形を必ず携帯するそうです。

極め付けはサンダルで3800M級を登り始めるという強者っぷり。上には上がいるものです。

登りが激しい一方で、天高く突き抜ける山々は圧巻です。2時間ほどの登りを終えると風と水が通りぬける一本道とその先には雪を被った峰々が現れます。

途中で疲れたら、みんなで昼寝。登山の醍醐味は五感を楽しむこと!!視覚的な情報以外にも風戦ぐ音、家畜の匂い、土や草の手触りといったいろいろなものを登山昼寝は与えてくれます。

Mani、膝の調子が悪いようです。

1060Mも登っていることもあり、疲労困憊でしたが、ようやくエンゲレス・ピーク高原に到着しました。時間は14時でした。楽しいメンバーだったからか、あまり疲れることなく登れました。このメンバーで登れた本当に良かったと思います。

宿に戻れたのは18時ごろ。夕食を自身で調理する気にもならず、Homestayのオーナーにお願いして、オシュ(ポロフ)を作ってもらいました。なんとチキンプロフ!!最果ての地で食べるお肉は、フレッシュじゃない可能性があるので、食中毒になる可能性があり、ギャンブル要素があります。それでも空腹過ぎて食べちゃいました。一切問題がありませんでした。

中央アジア名物のオシュ(プロフ)

その夜、一人でランガールの村を散策してみました。石が崩れ落ちた荒れ屋が多く、ガラんとした様子でした。もの寂しげに寒さが通る村。オーナー曰く、年々快適な暮らしや高賃金を求めて都市部やロシアへ出稼ぎに行き、そのまま住み着いてしまうケースも多いようです。ワハーン回廊の夏は短い。そして、長く極寒な冬が訪れる。そんな険しい環境でも、そこに残り生きていく人々がいます。ワハーン回廊で一生を生きていくって、どういうことだろうか。短い夏に家畜を太らせ、麦や芋を育て、秋には薪や藁をかき集め人と動物が生きるための準備をし、極寒の冬を生き延びて、また春を迎える。この生きるために必要なサイクルに加えて、お金を生み出すために働かなくてはならい。非常にたくましい行き方だと思います。オーナーは、「お金はいらないから冬に泊まるに来たらいい」と言っていました。冬の暮らしにこそ、家族やコミュニティと協力して生き抜く強さがみられるそうです。それと同時に、冬に感じられない、薪ストーブと居間で家族と一日中団欒する温もりがあるそうです。冬にここに来てみるのもいいかな、と少しだけここに戻ってくるという選択肢が気持ちが傾きました。


次回はいよいよ「帰還編」です。いよいよヒッチハイクの出番ですよ!!
ハプニング続出のランガール→ホログ→ ドゥシャンベについて、次回書いていきます!!

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