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【海外ハイク5】「屈強で荒々しい男たちとあれこれ」 ジョージア国境で木漏れ日を楽しむ マチ要塞トレイルの行き方/歩き方

イントロ

食、歴史、アート、文化、かわいい表記文字、
そして息を飲む山岳地帯を有するジョージアに、
魅せられてしまったのは私だけではないはずです。

しばらくは、このジョージアのハイキングや登山についての記事を書いていこうと思います。

今回の記事はジョージアとアゼルバイジャンが接する国境沿いの町、
ラゴデヒ(Lagodekhi / ლაგოდეხი)のハイキングです。
様々なハイキングコースや登山を有するジョージアでも、
このラゴデヒは観光客の少ない穴場です!!
本記事では、ラゴデヒが起点となる、マチ要塞トレイルを紹介します。

マチ要塞トレイルの見どころはズバリ、
木漏れ日の美しさ、
静けさの中で満喫できる森林浴(穴場なので)、
ジョージアの歴史が感じられること、
田舎の男たちが熱いこと(運が良ければ巡り会えるかも)、
です。

本記事では、
マチ要塞トレイルとラゴデヒの見どころ
ハイキングの概要や難易度、
装備や注意点、
実際の行程(体験記)やアクセスについて
シェアしていきます。
今回は、様々な偶然で、田舎の「屈強で荒らしい男性たちの集い」に参加して、
ジョージアの田舎の価値観などを聞く機会がありました。
そこで聞いた話なども、シェアしていきます。

本記事では
①ここに挑戦したい方が
 無事に帰って来れるような役立つ情報を提供する
②ジョージアの魅力が伝わる
③これから旅をしたいな思っている人にも少しでも参考になる
ことが目標です。
最後まで読んでいただければ幸いです!!



マチ要塞とラゴデヒの見どころ

[マチ要塞 (Machi Fortress)]

15〜18世紀に栄えたカヘティ王国(The Kingdom of Kakheti)の国王が使用していたとされる避暑地です。当時実際に建設された教会、堀、壁、見張り台などが今でも保存されています。森林の中にひっそりと佇みながら、谷を見下ろせば、ジョージアとアゼルバイジャンの国境をなぞるマスミスツカリ川が流れています。

[森林浴]

木漏れ日がほのかに差し込む森の中を散策することができるのが、マチ要塞トレイルの見どころ。加えて、珍しい動植物が見られるのも非常に興味深いです。

[ラゴデヒ(Lagodeki)]

アゼルバイジャン国境近くにある町。その自然の美しさからジョージアの歴史で最初に国家自然公園に認定された場所です。非常に静かで観光客が少ないことから、穴場スポットでありながら、一度行くとその魅力に取り憑かれ何回も足を運んでしまう、ということを言っているリピーターに会いました。本記事で紹介するハイキングコース以外にも、ロシア国境をギリギリをかすめる高難度ののBlack Rock Lakeハイキングや、気軽に自然公園や町の散策など、歩くのが好きな人にはうってつけな場所です。

ラゴデヒにて、人生で初めて食べたハチャプリの美味しさ、今でも忘れられない!!

[Cafe Aisi]

ジョージアといったら、なんといっても「食」。ジョージアのどこにいっても、舌を唸らせる、ヒンカリ、ハチャプリ、ロビヤニ、ワイン、バックパッカーや地元の人にも愛される、ゲストハウス兼カフェがCafe Aisiです。モチモチのハチャプリから、ロース豚肉を使った炒め物から濃いワインまで、様々なジョージアの食が堪能できます。

このカフェで出会った可愛いワンちゃんが忘れられない!!

登山の行程と注意点

これ先から下線が引かれている地名は、
クリックするとGoogle Mapに飛ぶようになっています。
是非、参考にしてみてください。
また地名の()内にMapsMe内の名称も記載しておきます。

概要

ハイキング日:2023/8/28
合計所要時間:6時間
トレイルスタイル:アウトアンドバック
歩行距離: 19km
歩行時間: 約6時間
獲得標高: 308M
出発時の宿泊地:At Nana’s 
歩行開始地点: At Nana’s
往路終点:マチ要塞
歩行終点:At Nana’s

8:45:At Nana’s 出発 
↓1.8KM
9:10:橋
↓280M
9:15:公道から逸れた農道
↓1.9KM
9:30:十字路
↓750M
9:50:レーンジャーハット
↓3KM以内
10:50:国境警察(20分ほど書類記入)
↓2.8KM
11:50:マチ要塞(30分ほど散策)
↓9.5KM
17:50:At Nana’s 出発 

難易度

体力  :★★☆☆☆
技術  :★☆☆☆☆
アクスセス:★★☆☆☆
(★が多ければ多いほど難易度が高くなると考えてください。)
体力/技術はYAMA HACKの基準を参考にしています。)

・体力面
獲得標高数が短く、序盤から中盤にかけて平坦な道が続きます。
ただし、距離が長いので、水や軽食をお忘れなく。
加えて、後半はある程度の傾斜を登っていくので、安全上山ぐつが必要です。

・技術面
山道は整えられており、迷いづらいです。念の為、MapsMeのようなオフラインマップを持っておいた方がいいです。

・アクセス
アゼルバイジャンから国境を抜けた際には、最初に立ち寄る町です。
ジョージアからであれば、マシューカ(ミニバス)で乗り継ぎなし3時間で来れます。

・シーズン
そこまで高山ではないため、天気が良ければどのシーズンでも行けます。
緑が深い7月から9月が特におすすめです。

注意点

[国境警察に申請をする]
マチ要塞には、ハイキングで行くことができます。国境沿いであることから、国境警察から許可を得て入山することになります。マチ要塞トレイルを歩いていけば、必ず国境警察の拠点があります。基本的には常駐しているので、パスポートと記入書類(英文、その場でもらえます)に必要事項を記載して提出します。パスポートはその場で返却されるので、ご安心ください。受け答えは、ジョージア語/ロシア語/英語になるので、自信がない場合は、Google Translatorを使える準備をしておきましょう。

こんな書類がもらえます。亡くさないように。

装備

1. オフラインマップ
特にMapsMeがオススメです。
道の大枠をとらえるために、マップを持っておくべきです。

2. 雨具
山沿いであることから、急な雨に備えておきましょう。

3. Windy
1週間の天気を無料で確認できるアプリです。
かなり正確な情報なだけではなく、
ピンポイントで一箇所の天気情報が見れます。

4. 現金
現金は本当に大切です!!!
ケガをしてタクシーで帰ったり、いい匂いにつられてレストランへ行ったりした時に、役に立つはずです。


写真で眺める実際の行程

ハイキング開始

ジョージア語を少し勉強してみました。数字や挨拶を覚えるので手一杯でした。

ジョージアで出会ったほとんどの人が、最初は少し近寄りづらい印象を受けました。しかし、ジョージア語で挨拶してみる、笑顔を返してくれる方もいました。少し、言語をかじっておくのも悪くないですね(結局そのあとは、会話が続かず30歳以上の方とはロシア語、若い方とは英語で話すことになるのですが)。

8月とはいえ、夏の終わりの涼しさを感じる朝でした。公道を通りながら、マツィミ(Matsimi)へ歩いていきました。ラゴデヒ川を越えて、の後に左に曲がり、田舎道を歩いていきます。

橋を渡ったら右!!
田舎が道が続いていきます。

トウモロコシもほとんどが収穫されて、夏の終わりが目に見えるようでした。十字路に行き着くので、左に曲がっていきます。あとは山を正面に歩いていけば、自然に森の中に入っていくことができます。途中に、レンジャーハットがあり、そこで、バカ元気な犬(下腹部の匂いを嗅ぎがち笑)とお話好きなレンジャーと会いました。ハイキングの注意事項として、パスポートと水の携帯が必須であることを教えてくれました。また、(不可能ではあるが)間違っても国境を越えてアゼルバイジャン側に入るな、と冗談混じりに言っていました。コロナ蔓延から、空路でしかアゼルバイジャンに入れなくなり、船や陸路でのアゼルバイジャンの入国ができない状態が続いていました(2023年8月時点)。陸路でアゼルバイジャンを出ることができますが、入ることは不可。100%逮捕されるとのことでした。

そこからは先は、木漏れ日が漏れる森が続いています。

細い川のせせらぎとそよ風が森を通り抜け、より静けさが際立つ空間でした。夏の終わりに合わせて、森が持つ湿潤さを活かして、菌類はすでに子孫を残す準備を終えていました。

国境警察

しばらく歩くと、国境警察の拠点とそこに兵隊のようにマシンガンを持った兵士のような人々が会いました。しっかり挨拶をして、ハイキングが目的であるという旨を伝えました。椅子にエスコートされ、そこで、パスポートを手渡し、記入用紙が渡されました。

ここで用紙に記入しました。

パスポートの内容と記入内容があっているかを国境警察が確認し、パスポートと証明書が返ってきました。

国境警察から1時間ほど歩くといよいよ本ハイキングのゴールであるマチ要塞のお出ましです。荒廃した要塞が蔦に覆われて残っていました。栄華をほこった王国も松尾芭蕉が読んだように、草に埋もれた夢の跡となっていました。イラン、ロシア、トルコのような大国がせめぎ合う中地点に位置するジョージア。今も昔も、大国の血生臭い外交政策の緩衝地帯として侵略の対象になりかねない状態です。そんなジョージアの苛烈な国際政治状況と静寂の中にある遺跡に大きなギャップを感じました。

屈強で荒々しい男たちとの出会い

帰りの道すがら、奇妙な出会いがありました。3人のローカルのダチムチの40代の男性たちが森の中で、お酒を飲みながら大麻をふかしていました。ご機嫌な彼らに誘われて、会話がスタートしました。本当にガチムチで、みんな運送や屠殺屋、軍隊といった、腕っぷしが必要な仕事についていました。彼らのテーブルには、ワインと大麻とつまみ。お酒は現地で取れた葡萄でワイン。大麻も乾燥した気候でよく育つオーガニックな大麻で、ボング式の吸引方法。

大量に所持していない限りは、警察にお世話になることはないとのことです。そして、その3人の男性曰く、すぐ後に、地元の男性が集まるそうです。

ラゴデヒ周辺の村では、地元の男性が集まる会合があるそうです。予告通り、その後ローカルの様々な年齢(下は15歳上は60歳ぐらい)の屈強な男性たちが、次々と車から降りてきて、あっという間に男性たちで埋め尽くされました。「どうして男だちだけなのか?」と尋ねたところ、「男性が男性らしく振る舞えないから」と言っていました。ジョージアでは、”男性らしさ”や”男性同士のつながり”が大事なのだそうです。男性の間で、自然の中でワインや食事を酌み交わし、ジョージアの田舎の男性の“兄弟愛”や習わし(ハンティング、屠殺、お酒、ジョーク)を確認しあうのだそうです。女性がいると、男らしい振る舞いができないから、女性は基本的には誘わないとのことでした。その言葉の端々から、この地域に住む人々にとって、「屈強で荒々しい男性らしさ」が理想化されているように感じました。

実際に見せてくれたライフル。

最初の3人と仲良くなれた私は、その会に参加しました。基本的には、ジョージア語とロシア語で話していましたが、一人英語を話せる青年がいたので、その青年がつきっきりで通訳をしてくれました(上記の内容も、彼から教えてもらいました)。

買ってきたばかりの羊の屠殺が始まりました。羊とセックスしたことがあるという評判がある男性が、見事に締め殺し、解体をしていました。

私たち若い衆は火をおこしたり、調理をしたりしていました。

実際の調理現場。

羊肉のシチューとシャシュリク、パンがテーブルに並び、いよいよ食事の席にみんなで座りました。年齢の高い人から、みんなに向けてスピーチをして、そのスピーチの終わり毎に、「勝利」を意味する「Gaumarjos 」と叫び、ワインを一口飲むのが習わしです。古代からワインが作られて、嗜まれたきたジョージアの伝統の中で、ワインは特別な意味があります。この地域でも、ほとんどのお家でワイン葡萄を育て、自家製でワインを作ったいりもしています。加えて、キリスト教徒が多数派であるという意味でも、ワインの宗教的意味合いが強いです。また、「男はお酒を嗜むのが当たり前」という常識が(少なくともこの地域では)あるため、ワインが注がれたら断らずに飲みきるといった常識があるそうです。私もあまりお酒は飲みませんが、その日だけでは、ベロベロになるまでワインを体に流し込みました。

そのあとは、腕相撲で強さを競ったり、ハンティングライフルの使い方を若手に教えたり、ロシア-ジョージアの戦争の歴史を話し合う時間に使われました。この男性たちの中にも、昨今のウクライナ-ロシア戦争にて、ウクライナ側に従軍した人たちがいました。様々な理由でウクライナと共に戦うことを選んだ戦士たちの話を聞きました。

ジョージアは大国に挟まれたコーカサス地方に属する国です。常に、大国の緩衝地帯として、昔から略奪や侵略の対象になる地域でした。現在でも20%の地域が実質的にロシアに占領されているジョージアにとって、ロシアは敵国として認識する人も少なくないそうです。実際にウクライナに従軍した人の一人は、ジョージア-ロシア戦争で失った戦友のために、従軍を決意しました。

おそらく、戦争や征服、占領を経験しているからこそ、ジョージアを守り大国をも退ける「屈強な男性像」を理想とされているのかもしれません。

屈強な男たち。

ジョージアの周辺に住む、この「屈強な男たち」から様々なことを聞かせてもらいました。過剰な男らしさ、ジョージアとロシアの関係、ワイルドなライフスタイル、大量に飲んだワイン、その全てを一日で消化するのは不可能でした。帰路で何回かゲロを吐きながら、ジョージアの人々の言語、政治、理念、食、自然について、もっと学ぶを深めたいと思いました。

こんな不思議な「屈強で荒々しい男たちの会」に出会えた、幸運なハイキングでした。



アクセス(行き方)

[トゥビリシ(Tbilisi)→ラゴデヒ(Lagodekhi)]

手段:マシューカ(ミニバス)
価格:7-10GEL (400〜580円程度)
所要時間:最長で3時間
出発時間:朝8時から1時間おき
出発場所:Isani Metro Station付近のミニバス乗り場
到着場所:ラゴデヒバスステーション

トゥビリシ中心部では、地下鉄が発達しているので、どこにいても、Isani Metro Stationへの接続は簡単です。駅から出て、正面の道路を渡り右側にマシューカが停まっている乗り場が見えてくるはずです。
ちなみに、価格や頻度は不明ですが、空港からもラゴデヒ行きが出ているそうです。

[アゼルバイジャン→ラゴデヒ(Lagodekhi)]

手段:タクシー、またはヒッチハイク
価格:6-9Manat(500〜750円) +5-8GEL(290〜460円
所要時間:合計2〜3時間
出発時間:朝8時から1時間おき
出発場所:バラカン(Balakan)
到着場所:ラゴデヒバスステーション

国境沿いの町バラカン(Balakan)からアゼルバイジャン-ジョージア国境まで、タクシーで約20〜30分かかります。そこから、国境を越えるのに30分から1時間かかります。国境は驚くほど静かで閑散としていますが、私が通った時(2023年8月)は、しっかり営業していました。アゼルバイジャンの国境状況は事前にチェックしておいた方がいいです。コロナ以降、飛行機のみの入国が可能であり、陸路/海路の入国が禁止されています。ただし、アゼルバイジャンからの出国は陸路でも可能でした。
国境を越えたら、タクシーが待っています。また、一緒に地元の人と国境を越えた場合、ほとんどお迎えの車が来ています。その車は100%ラゴデヒを通るので、それに同乗するのも有効です。


アクセス(帰り方)

[ラゴデヒ(Lagodekhi)→トゥビリシ(Tbilisi)]

手段:マシューカ(ミニバス)
価格:7-10GEL (400〜580円程度)
所要時間:最長で3時間
出発時間:朝8時から
出発場所:ラゴデヒバスステーション
到着場所:Isani Metro Station付近のミニバス乗り場

行きの逆の経路で帰ります。オフィスでお金を払って、マシューカの中で待っていれば大丈夫です。


この度も本記事を読んでいただきありがとうございました。
しばらくの間は、ジョージアの記事を書いていきますね。
皆さんも、ジョージアで登山やハイキングを楽しんでみてください!!


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