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現在バイアス(いまが大事思考):行動経済学とデザイン23

時間という概念が入ってくると「今が大事か、それとも将来が大事か」といった判断軸がうまれます。今回はこの時間にともなう人の行動に着目してみたいと思います。

エッセンシャル版行動経済学

[エッセンシャル版]行動経済学
ミシェル・バデリー(著)、土方奈美(訳)、依田高典(解説)
早川書房 2018.08

この本の『時間のバイアス』という章で書かれている、いくつかの研究をもとに、今と将来に対する考え方を理解してみたいと思います。

研究1. マシュマロテスト

有名なマシュマロ・テストという実験があります。これは、子どもがマシュマロを食べるのを我慢できるか(我慢できたら後でもう1つもらえる)を観察したものです。

この結果からわかったことは、

1.気を紛らわすことができれば我慢できた
2.誘惑に抗うために自分で気を紛らわす方法を考えた子どももいた
3.我慢できた子は成人してから社会的・学業的に有能だった

です。テストについて詳しく書かれている本はこちら。「今この選択をしたらその先に何が起こるか?」という先の予測を立てられる力が大事なようです。

マシュマロテスト

研究2. お金と時間テスト

もう1つ、巻末の解説に書かれていた内容です。京大の学生を対象とした実験では、現在をどのくらい重視するか(目先に囚われるか)を調べました。アンケート結果によると、

A. 今すぐ10万円を受け取る(80%)
B. 1年後に11万円を受け取る(20%)

ところが期間を1年後と2年後に変えると

C. 1年後に10万円を受け取る(20%)
D. 2年後に11万円を受け取る(80%)

と結果が逆転しました。このことから、今か将来かでは大きな差がある一方で将来の時間軸に対してはあまり差を感じないということがいえます。

なので「今かどうかが問題だ」ということがわかります。

研究3. 動物モデル

現在と将来はそれぞれ異なる考え方をする研究もあります。

鳩を対象に、すぐに餌が出るボタンと、ちょっと待つけどたくさん餌がでるボタンの2つを用意すると、鳩はすぐ出るボタンの方を学習して押すようになりました。

一方、ボノボやオラウータンには、後で使うための道具を選び保管する習慣があり、他の動物も食料を備蓄する行為が見られます。これは今に囚われず将来性を計画しての行動です。

この観察からは、すぐ確実に得られる誘惑に対しては短期的な報酬を優先するけど、将来に関することは長期的な報酬を優先する、ということがわかります。

後回しにしがちな思考

人は大事なことがあっても目先の状況を優先してしい、本来やるべきことができてない状況に陥りがちです。夏休みの宿題しかり、仕事でも雑務をこなすうちに四半期の目標に何も着手できてないという人は多いと思います。

このことを "現在バイアス" といいます。将来性が不明確だと、すぐ確実に得られる目先のことを優先してしまう現象です

・・・・・

では、ここからはデザインの領域でも特にユーザー体験に焦点を当てて、現在バイアスの影響を考えてみたいと思います。

応用1. 今だけのキャンペーン商品

行動経済学者のリチャード・セイラーは、スキーリゾートの経営立て直しでアドバイザリーとして参画していました。その時に彼が打ち出した施策はこんな内容でした。

1. オープン前に回数券を買うと割引価格でお得
2. 翌年の券も買ってくれたら前年分の回数券も利用できる

これは現在バイアスを利用しています。1は今買って得しようという心理を利用したサービス。逆に2は後回しの心理で、使いきれない分は延命させられるを仕様したサービス。さすが第一線の行動経済学者です。

書かれている本はこちら。(写真が見当たらなかったのでリンクを)

応用2. 数年後の未来より1ヶ月後の未来を

RIZAPは2ヶ月や3ヶ月で結果にコミットする、といった広告で注目を集めました。これがもし1年だったら違っていたと思います。

京大のテストでは1年後と2年後に時間の優位性は見られなかったけど、これがもし1ヶ月後と2年後だったら多少結果は変わったはずです。

サービスの内容によっていつまでだったら先の話に見えないか、は異なると思いますが、なるべく短い期間でリアリティのある結果を示すことができると、現在バイアスの心理を働きかけられると思います。

応用3. 自分にプレッシャーをかける

デレク・シヴァーズ の「目標は人に言わずにおこう」というTED Talkのプレゼンがあります。4分弱なのでさっとみれます。

このプレゼンでの教訓は2つ

1. 目標を達成したいなら人に言わないでおこう
2. 言いたいなら自分にプレッシャーを与える状況をつくろう

です。1で達成できる人もいれば、2のように話さずにはいられなかったり、プレッシャーがないと忘れてしまう人もいると思います。

僕は明らかに2のタイプですが、この場合、具体的な目標達成の指標を示して、かつ1週間単位くらいで測定できることが大事だと思います。将来のことであっても今やるべきことを示すことが、現在バイアスを回避する方法になり得ると思います。

まとめ

どんな人でも、すぐに報酬を求めたいものです。目の前にアイスクリームがあったら食べたいし、ビールがあったらすぐに飲みたくなる。そのときの判断基準として

・今でも後でも変わらない → 今を生きよう
・後々に影響する → 目標に基づいて将来のために控えておこう

という2つの考えをもてば「今が大事か、それとも将来が大事か」に迷うことが少なくなるかと思います。

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デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。

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デザイン・ストラテジーについて日々かんがえています。本・イベント・体験したことなどから気づいたことをグラレコメモを交えて感想を書きます。2018年までのアーカイブはこちら( https://designstrategy-studyroom.blogspot.com/

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コメント (2)
ジマタロさん、はじめまして、マツカンと申します。おすすめでこの記事を知りました。漠然と感じてた「目先の欲求」を"現在バイアス"という言葉を通して、"現在"、"近い将来"、"遠い将来"という時間軸で目標を考えられるようになりました。ありがとうございます。
ジマタロさん
はじめまして、2年後に独立を目指すマオと申します。マショマロテストは存じ上げておりましたが、京大の人を対象にした研究は初耳でした!文章もわかりやすくて本のイメージもわいてくるような感じがしました!購入してみます!
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