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本ができるまで2:構成をデザインする(行動経済学とデザイン)

1回目は、本の企画が通るまでのお話をしました。今回の2回目は、本文を執筆する前の、構成を考える過程について紹介します。

1回目のお話はこちら

1.ページ数を考える

まず最初に、企画の段階で編集者と相談して、本のおおまかな章の構成やページ数を一度きめます。ページ数は編集者の豊富な経験に基づいた「このくらい」をもとに考え、現に最終的におさまったページ数は、ほぼ想定通りとなりました。

僕も多読の人間なので、目安としては200P以下だと割とサッと読みやすく、300Pを超えると結構重厚な内容、という印象を持っています。今回はちょうど200-300の間を取る数で、ほどよい量かと思っています。

ちなみに印刷関係者には基本的な知識ですが、ページ数は16が基準単位となります。大きな紙を3回折って裁断して製本するからです。


2.目次を考える

次に目次です。本の企画を要素分解して「読者に何を持ち帰ってもらうか」から、章の構成を考えました。この本は、ビジネス x デザインの両者をつなぐことをテーマにしているので、概念や理論だけではなく、ビジネスの実践まで踏み込んだ内容にする必要がありました。はじめは4章でしたが、最終的にはこのようにシンプルな構成に落ち着きました。

・1章:行動経済学の概念を理解する
・2章:行動経済学の理論を学ぶ
・3章:行動経済学を実務で使う

各章でメッセージは分かれていますが、3章までたどり着かないと実践の話にならないのでは飽きてしまうので、それぞれの章に、学ぶインプット要素だけでなく、実践のアウトプット要素を盛り込みました。メッセージを言い換えるとこのようになります。

→1章:行動経済学はユーザーとビジネスを橋渡しする機能がある
→2章:行動経済学でユーザーが影響を受けているビジネスの実例も知る
→3章:行動を後押しする方法を、デザインの実務領域で具体化する


3. 分類を考える

目次の構成は「章・節・項」の階層で分かれます。(細かいのになると4-5階層もある)このあたりを曖昧にして書き進めると、統一感が取れなくなるし、本のデザインにも問題が出ます。実は、僕はここが割といい加減で、指摘されたりもしました。

noteでは、週に1回新しく知った理論を1つずつ紹介していました。この、計44の記事を章・節・項でどう構成するか、ここが本をつくるときに今回一番考えて工夫した点です。

ただ記事を並べた構成ではなく、1年間書きためた過程で、自分自身が学んだことがもっとあるはずです。何かそれぞれに、ユーザーの観点から見た法則性や前後関係はないかを探るため、カードに項目を書き出してみました。2週間くらい試行錯誤してみて、いくつかの共通点が見つかりました。

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例えば、ピア効果は人がいるかいないかで影響しているけど、返報性も同じことがいえる、とか、この4点は共通して時間に関係することだな、といったことです。それらをまとめたものが次の整理です。

・相手(目の前の人)
・周囲(多数の人や環境)
・時間(現在を起点とした過去や未来の考え方)
・距離(物理的・社会的・心理的な距離)
・条件(その人の置かれた立場)
・枠組み(前提要件・作法・偏見や決めつけ)
・気分(感情・性格)
・決断(変えられない過去)

このような切り口の説明は他に見たことがないので、これは自分にとって胸踊る発見でした。個々の理論の説明だけではなく、これらの分類との関係で読むと、内容に対する理解度はぐんと高まるはずです。

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その中で、この分類に沿って修正したものもあれば、新たに加えたり無理があるものは本からは外しました。また、これだけでは伝えられない要素は、1章と3章で構成から見直して書き加えました。

8分類に至るまでは、ポストイットを使ったり手で描いて整理したり、過程はかなりカオスでしたが(途中のメモや不採用案はたくさんあります)、メソッドやステップ通りにやれば見つかるものでもないので、そういうものだと思います。


4. 全体図を考える(notionの活用)

章・節・項の関係性が見えてきたので、全体像を意識しながら本のながれを考えていきます。執筆(タイピングだけど)は最終的にはgoogle docsやpdfを使いましたが、その前まではnotionを使いました。(notionは平野さんの記事を読んで勉強しました。ありがとうございます!)

notionを用いた理由は、構造を理解するためです。

書きながら前後の順番を入れ替えたり、階層構造の関係を理解するのに、notionのようなアプリはとても適しています。文章だけでなく、タスク管理や、本文とは違う内容を書き溜めておけるもの便利です。あと、中身が埋まっていなくても、とりあえずフォルダがあるだけでできた気になる、というのも嬉しい点です。

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ただし一方で短所もあります。編集者の立場からは、ページの関係性がわからない(ページ内で収まるかとか、章のはじめは右ページになるようにしないといけないなど)という点で、立場によっては適したツールではないのかもしれません。

僕自身あまりうまく使いこなせていなかったのですが、執筆をするためのツールとして、専用のアドオン機能が加わると、もっと需要がありそうな気がしました。notionの方、いかがでしょうか?


5. 細かなこだわり

章・節・項を階層で整理すると、一般的には「3-1-4」のような通し番号がつきます。ですが、前に書いた記事で、数に複雑な意味を持たせるべきではないと主張したので、本書でもこの考えを用いています。

章は3章ですが、節はフレーム1. フレーム2のように章の番号は使わず、項は01-60の通し番号で統一しています。

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読み返すときに「あれ、どこに書いてあったっけ?」ですぐに探しやすくなることを狙っています。このあたり、実際に読んでみて、感想をぜひ教えていただきたいなと思います。

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以上、構成に関しての検討した内容でした。

僕はデザイナーなので、文章を使うよりも、図や構造で構成を考える方が得意です。なので、多くの本を書いている人とは思考回路が違うかもしれませんが、参考にしていただければと思います。

次回は「図を描く」についてです。手書きがたくさん出てきます。

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。